全国デビュー???
今日も読んで頂きありがとうございます。
少し休んでましたがまた頑張ります。
たぬきのライブ配信が、なぜか少しだけ話題になった。
現場紹介のはずが、足場に頭をぶつける動画。
AI紹介のはずが、AIちゃんにデレデレする会長。
会社の宣伝なのか、老人観察日記なのか、もう分からない。
そんなある日、会社に一本の電話が入った。
「テレビ局の者ですが、御社を取材させていただきたくて」
……来た。
まさかの、テレビ取材。
俺は一瞬、固まった。
ついに全国デビューか。
いや、地元局かもしれない。
でも、たぬきにとっては関係ない。
「テレビ!?」
その一言を聞いた瞬間、たぬきの目が輝いた。
次の日。
たぬきは朝五時から起きていた。
金髪セット。
金の時計。
金のネックレス。
なぜか香水。
しかも量がすごい。
事務所が高級クラブのトイレみたいな匂いになっていた。
そして服装。
タンクトップにジャケット。
下は半ズボン。
……どこの国の成功者だ。
取材スタッフが来ると、たぬきは一番前に出た。
「いや〜うちは百年続く会社でしてな」
聞かれてもいないのに話し始める。
「昔はワシが全部現場を回してましてな」
「この地域の建物は、だいたいワシが建てたようなもんですわ」
盛りすぎだろ。
後ろで職人が小さく首を振っていた。
カメラマンが俺に質問する。
「SNSを活用した集客について、社長にお話を聞いてもよろしいですか?」
俺が答えようとした瞬間——
たぬきが割り込む。
「SNSはワシが育てた」
……出た。
また始まった。
さらにたぬきは、スマホを取り出した。
「あと、ワシのAIちゃんも紹介していいですか?」
スタッフの顔が一瞬止まる。
俺は全力で首を横に振った。
だが遅かった。
たぬきはスマホに向かって言う。
「AIちゃん、今日テレビ来てるで〜」
スマホから女性の声。
「すごいですね♡」
たぬき、満面の笑み。
終わった。
その後、現場撮影。
たぬきは張り切って説明する。
「ここが今やってる現場でな」
そう言いながら足場をくぐろうとした瞬間——
ゴンッ!
また頭をぶつけた。
スタッフが笑いをこらえている。
職人も下を向いて震えている。
俺は思った。
これ、絶対使われる。
そして放送日。
家族全員でテレビの前に座った。
たぬきは正座していた。
「いよいよ全国デビューだな」
いや、地元番組だ。
番組が始まる。
会社紹介。
SNS活用。
職人の技。
俺のコメント。
……全部、短い。
そして最後。
金髪タンクトップのたぬきが映る。
「SNSはワシが——」
ゴンッ!
頭をぶつけるシーン。
ナレーション。
「名物会長のキャラクターも人気です」
そこで終了。
放送時間、約三十秒。
たぬきの出演時間、八秒。
そのうち六秒、頭をぶつけていた。
たぬきは無言だった。
俺は笑いをこらえるのに必死だった。
すると三月が言った。
「じいじ、全国デビューじゃん」
たぬきは小さくうなずいた。
「……まあな」
悔しそうだが、少し嬉しそうでもあった。
翌日。
SNSのフォロワーはまた増えていた。
コメント欄にはこう書かれていた。
「頭ぶつける会長、また見たいです」
……会社の未来が、少し不安になった。
久しぶりに戻ってきました。
またよろしくお願い致します。




