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「“跡取り”のはずが、ただの使用人だった」  作者: 株で得た利益を競馬でとかす人


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接待ゴルフ

今日も読んで頂きありがとうございます

ついに、その日が来た。


たぬきとの——


接待ゴルフ。


相手は、取引先の社長。


地元では顔の広い人物らしい。


「今日は頼むぞ」


たぬきは朝から上機嫌だった。


俺は、不安しかない。


なぜなら俺のベストスコアは——


215。


しかも、最近のドライバーは


右にも左にも飛べる万能仕様だ。


ゴルフ場に着くなり、たぬきが言う。


「お前は空気読めよ」


……難易度が高すぎる。


スタートホール。


まずは、たぬきのティーショット。


「見とけや」


豪快に振り抜いた打球は——


五十ヤード先の池へ。


チャポン。


たぬき、無言。


取引先社長、苦笑い。


俺の番が来た。


せめて真っすぐ。


そう願って振り抜く。


球は真横へ飛び、


カート道をバウンドしながら逆走した。


後ろの組から拍手が起きた。


たぬき、怒鳴る。


「何しとんじゃボケ!」


いや、俺も知りたい。


二打目。


林の中。


枝が邪魔だ。


俺は低い球で出そうとした。


結果、木に当たって自分の足元へ戻ってきた。


……忠犬みたいだった。


その頃たぬきは、


バンカーで五打目を打っていた。


「砂が悪い!」


自然にキレるな。


昼食。


たぬきは取引先社長に言った。


「こいつ、社長なんですよ」


俺は味噌汁を吹きそうになった。


肩書きだけだ。


席すらない社長だ。


取引先社長は笑顔で言う。


「しっかりしてそうですね」


……見る目がない。


後半戦。


たぬきはOB三連発。


俺は池ポチャ二連発。


取引先社長だけが淡々と90台で回っていた。


そして最終ホール。


たぬきが突然叫ぶ。


「ここ決めたら仕事もらえるぞ!」


プレッシャーのかけ方が昭和すぎる。


俺は震えながらパターを打った。


球はカップを避けるように曲がり、


なぜかたぬきの靴に当たって止まった。


沈黙。


取引先社長が、ひと言。


「今日は楽しかったです」


その日、仕事は決まらなかった。


帰りの車で、たぬきが言う。


「お前、接待向いてないな」


……連れてきたのお前だろ。


そして俺は悟った。


俺はプレイヤーでも社長でもない。


たぬきの失敗を薄めるための——


人数合わせだった。

ゴルフ引退ですかね。

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