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転職
読んで頂きありがとうございます。
気づけば俺は、ディーラーを辞めていた。
そして——
たぬきが経営する、建設会社で働いていた。
たぬき建設。
名前からして、逃げ場はなかった。
最初に任された仕事は——
モルタル運び。
一階で練ったモルタルを、
バケツに入れて、四階まで運ぶ。
ただ、それだけ。
……それだけのはずだった。
だが、これが地獄だった。
重い。
とにかく、重い。
何度も、何度も、階段を往復する。
腕がちぎれそうになる。
足が震える。
呼吸が荒くなる。
それでも、止まれない。
「遅いぞ」
その一言で、また動く。
これが、一日。
そして、毎日。
気づけば、一か月が経っていた。
そして——
鳶が入った。
何をするのかと思えば、
ウィンチで、モルタルを上げている。
……は?
一瞬で理解した。
あの一か月は、
ただの——
嫌がらせだった。
体重は、十五キロ落ちた。
頬はこけ、
服はぶかぶかになった。
だが——
腕だけは、逆に太くなっていた。
笑えない話だ。
そんなこんなで、俺はたぬき建設で働き始めていた。
いや——働かされていた、が正しい。
みゆきといる限り、
俺に逃げ道はない。
モルタル運びはノンフィクションです。




