9. 辺境の家庭菜園と魔道具計画始動!
ブクマありがとうございます!
夕食は私が渡したレシピを見ながら、料理長と二人であれこれ相談した。子どもたちの胃に負担がかからないよう、ジャガムをマッシュしてスープにしたり、カボチャコを柔らかく煮たり。
「これ、本当に野菜なのか!? めちゃくちゃ旨いぞ!」
「……とっても美味しい。それに、なんだか優しい味がする……」
アルスもエルナも、これまでにない勢いでパクパクと食べてくれた。その姿を見ているだけでも嬉しいのに、真打ちのデザートが登場すると、さらに食卓が華やいだ。
カボチャコの優しい甘みがぎゅっと詰まったパウンドケーキに、サツマムのしっとり濃厚なスイートポテト。一口食べるごとに、二人の目がキラキラと輝きだす。
「……あまくて、おいしい……! わたし、これだいすき!」
「ふん、まあ、その……悪くない。……おかわり、あるのか?」
頬を膨らませて食べる二人は、さっきまでのトゲトゲしさが嘘のように可愛らしい。そんな二人を見ていたら、つい欲が出てしまった。
「カイルさん、これ。執務室にいるギルバート様にも持っていってあげて。食べてくれるといいな」
「旦那様に、ですか……? 承知いたしました、必ずお届けします」
少し驚いた顔のカイルに、丁寧に包んだパウンドケーキを託す。
それから、私はわざとらしく二人の顔を覗き込んだ。
「あーあ。明日からはまた、私は一人でご飯かぁ。寂しいなぁ〜。チラッ、チラッ」
「おにぃちゃ……」
エルナが不安げにアルスの袖を引くと、彼は観念したように「うっ……」と呻いて顔を赤くした。
「……またお菓子を作ってくれるなら、一緒に食べてあげないこともないぞ!」
「やった! お任せあれだよ!」
ほんの少しだけ仲良くなれたかなと手応えを感じながら、翌朝も私は早朝トレーニングに励むのだった。
一週間後。
実家から手紙と封筒が届いた。
辺境の地ゆえ、魔物や盗賊に狙われやすく金品や荷物はほとんど届けられない。その代わり、一週間に一度、伝書鳩のような鳥が手紙や少量の荷物を届けてくれるのだ。
封筒の中に入っていたのは、父からの手紙とたくさんの「種」だった。不毛な土地でも育てやすいラズベリーやブルーベリーなどの種を、王都にいる父に取り寄せてもらったのだ。
手紙にはこう綴られていた。
『種なんて何に使うか分からんが、お前が辺境の地でも楽しくやっているようで何よりだ。無理はするなよ。愛しているよ』
「……ふふっ、お父様ったら。ありがとう」
思わず、少しだけ目頭が熱くなった。
今は『花』の人格が強いけれど、ルーナマリアの両親は暖かくて大好きだった。
いつもつまらなさそうな顔をして、周囲を寄せ付けなかった『私』を、彼らは心の底から心配してくれていたのだ。その無償の愛が、今この不毛な地に届いた種のように、私の胸にじわりと染み込んでいく。
こっちの世界では、ラズベリーは「ラズリ」、ブルーベリーは「ブルリ」と呼ぶらしい。私の脳内で勝手にそう変換される。便利だわ〜。
プランターで栽培できそうな種もいくつか。
(もっと探索すれば、他にも食べられるものがあるかもしれないな~)
やることを紙に書き記していく。
そして、私のペンは自然と「魔道具」のページへと移った。
(魔道具のこと、実家にいた時に本で読んだけど、理論はちんぷんかんぷんだった。でも……)
私は紙の余白に、ハート型のステッキや、格好いい剣の形をした「おもちゃ」のデザインを書き殴り始めた。
「核を入れるとしたらここかなぁ。声は無理だとしても、音は鳴るようにしたい……。魔法はやっぱり光魔法? でも光魔法って確か聖女様だけしか使えないし……」
一度描き始めると止まらない。
いやでも、我ながらこのデッサン力だけは褒めてやりたいわ。小さい頃から魔法少女や特撮シリーズだけで50作品以上は見続けてきたからな。脳内には完璧な資料が詰まっているのだ。
「これ、アルスくんとエルナちゃんに持ってもらえたら……超超超可愛いし、格好いいだろうなぁ〜ぐふふ」
俄然やる気が出てきた。
怪しい笑い声を上げながら没頭していた、その時だった。
バァァァーーン!!
自室のドアが、ノックもなしに勢いよく開け放たれた。
「面白い子が来たってホントかい!?」
現れた人物の放つ圧倒的な熱量に、私は呆然と固まるしかなかった。




