外伝 ヒーローの国の学園生活
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ヴォルフラム王国が誕生して数ヶ月。この国に足りないもの……それは、次世代を担う子供たちが学ぶための「学校」だった。
建設途中だった校舎が、ついに完成の日を迎えた。
現代知識をこれでもかと注ぎ込んだその学び舎は、幼等部から小等部、中等部、高等部、さらには専門的な知識を学ぶ大学までを網羅した、まさに理想の教育機関。
アルス、エルナ、そして新しく家族になったエディは小等部へ。
セレスティア、マリーナ、アレン、リオンの四人は、舞台俳優としての活動を続けながら中等部から通うことになった。
そして、学校といえば欠かせないのが……「制服」である!
ルーナは、戦隊ヒーローの隊員服の機能美と、現代のスタイリッシュなデザインを融合させ、ものすごい熱量でデザインを書き上げた。
そしてついに試着の日。
広い衣装部屋に集まった子供たちの姿を見た瞬間、ルーナの頭の中のミニルーナが、久しぶりに花咲かじいさんのように桜の木に満開の花を咲かせていた。
「か、かわいいいいいぃぃしカッコイイィィィ!!!! ねぇ、くるっとまわってみて! くるっと!」
金ボタンが輝く濃紺のブレザーに、各高等部ごとのイメージカラーが差し色で入ったネクタイとリボン。動きやすさを重視しつつも、魔法騎士の礼装のような気品が漂っている。
衣装部屋で七人は、興奮しきった王妃の言いなりになって、言われるがままにポーズを取らされていた。
「もう、目がまわるよおかあさま!」
エルナが目を回してふらつくと、ルーナは「ごめんごめん!」と笑いながらも、手元の最新式カメラ機能付き魔道具でシャッターを切り続けた。
「そういえば、セレスティアは王族の教育でもう学ぶことなさそうだけど、なんで通うの?」
ルーナがふと疑問を口にすると、セレスティアは「えっ」と声を漏らし、隣に立つアレンをほんの一瞬だけチラリと盗み見た。
「え、あぁ、ふーん、ほーーーーん」
ニヤニヤが止まらないルーナの視線に耐えかねて、セレスティアが顔を真っ赤にする。
「こ、皇后陛下!!!!」
「(真っ赤になっちゃってセレスってば、普段クール系なのにかんわいぃぃ……!)」
冷やかしを一旦止めて、ルーナは少し不安げに正装を整えているエディに声をかけた。
「エディは学校っていうのは分かる? お友達といっぱいお勉強したり遊んだりするところだよ」
「はい。……『脚本』がない世界で、僕たちが次の『物語』を紡ぐための、訓練施設……ですよね?」
「(な、なんかちょっと表現が重い気もするけど、まぁいっか!)そうそう! 間違ってないよ!」
エディの真剣な瞳に、ルーナは親指を立ててグッドポーズを送った。
新しい制服に身を包んだ子供たちの未来を想像し、ルーナの胸は期待で膨らむ。
その日の夜、寄宿舎の薄明かりの中で、パジャマ姿のセレスティアとマリーナはベッドの上で膝を突き合わせていた。
「ねぇマリーナ。あの二人……絶対モテますわよね」
セレスティアは膝に置いた拳をぎゅっと握りしめ、深刻な面持ちで呟いた。王女としての余裕はどこへやら、その瞳には焦燥の色が滲んでいる。
「アタシもそう思う……! わーん、どうしようどうしよう、リオンくんが誰かにとられちゃったら、アタシ本当に泡になって消えちゃうかも!?」
マリーナは枕を抱きしめてベッドをゴロゴロとのたうち回る。父が言っていた悲劇の話を思い出したのか、その想像だけで半べそ状態だ。
「脚本の力はもうなくなったと聞いてますから、それは大丈夫だと思いますけれど……」
セレスティアは少し呆れたようにマリーナを宥めつつも、すぐに自分の胸に手を当てて視線を落とした。
「……でも、わたくしも同じですわ。アレンが他の誰かと笑い合っているなんて、考えたくもありませんもの」
二人は揃って深いため息をつき、明日の朝はいつもより一時間早く起きて髪を整えることを誓い合うのだった。
そして迎えた、記念すべき入学式当日。
校門をくぐる一行を待っていたのは、ヴォルフラム王国の期待に胸を膨らませた新入生と保護者たちの、地響きのような歓声だった。
「お、おい! アルス様とエルナ様だぞ!」
「王族と一緒に学べるなんて、この国に生まれてよかった……!」
「あの、隣にいる白い髪に金目の子もカッコいい……ミステリアスな雰囲気だわ」
注目の的となったエディは、慣れない視線の数々に「……これが、学校の洗礼?」と少しだけ身を固くしている。
そして、一際大きな「きゃぁああああ!」という悲鳴のような黄色い声が響き渡った。
「あっちは有名な舞台俳優のアレン様とリオン様よ!!! カッコいい~! 足長っ……!」
「アレン様の元気爽やか系と、リオン様のクール天然系が並ぶなんて……眼福すぎて死ぬ……!」
「私なんて二人の舞台十回は見に行ってるんだから!」
「私なんて五十回は見てるわよ!」
さらに、男子生徒たちからも「うぉぉおおおお!」という熱狂的な歓声が上がる。
「セレスティア様とマリーナ様だぞ!」
「か、可愛すぎないか……やばい、俺もう一目惚れした……!」
「女神じゃん……ヴォルフラムの女神降臨だ……! 舞台で見せる『ミラクルステラ』や『ミラクルマリン』とは違う、清楚な制服姿……これこそ究極の『ギャップ萌え』ってやつだろ!」
「俺、限定のミラクルステラのゴールドカード持ってんだぜ」
「俺も、ミラクルマリンのプラチナカード持ってる」
まさに「ヴォルフラム・セブン」とでも呼ぶべき豪華な顔ぶれ。
だが、当の本人たちは周囲の喧騒など耳に入らないほど、昨夜からの不安でそれどころではなかった。
セレスティアとマリーナは、横を歩くアレンとリオンに他の女子が近づかないか、まるで「守護獣」のような鋭い視線で周囲を牽制している。
一方でアレンとリオンも、男子たちの熱視線にさらされる二人を守るように、さりげなく、しかししっかりと肩を並べて歩いていた。
校舎のバルコニーから、その様子を特撮用双眼鏡で眺めていたルーナは、ニヤニヤが止まらない。
「いいじゃん、いいじゃん、これぞ青春! いいなぁ、私も通いたかった~!」
「……皇后陛下。喜びのところ恐縮ですが、もうすぐ開式のスピーチです。王妃としての威厳をお忘れなきよう」
背後から忍び寄ったカイルの冷静な声に、ルーナは「ひゃい!」と飛び上がった。
――こうして、ヒーローの国の未来を担う新しい物語が始まった。
外伝開始はルーナが辺境領に来てから2年ほど経ってます。




