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辺境に追放された悪役令嬢、特撮オタク保育士の知識で領地を聖地化したら死神公爵に溺愛されました  作者: 栗原りんご
第1章 ヴォルフラム編

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7. 土の中の宝探し

呼び出された料理長は、腕組みをして鼻で笑った。


「お嬢様、この辺境の痩せた土地じゃ野菜なんてまともに育ちゃしねえんですよ。何人もの領民が試して、全部枯らした土地だ。あんたみたいな箱入りがどうにかできる話じゃねえ旦那様も騎士様たちも、パンと肉さえあれば満足なんだ。野菜を輸入するにしても、金がかかってしょうがねえ」


「これは由々しき事態だわ…!」


私は拳を握りしめた。特撮の前にやることが山積みだ。でも、これもきっと神様が私に与えた試練に違いない!


「カイルさん! あなたの午後の予定は!?」


「……いまのところ、特にありませんが」


「よし、外に行きましょう!」


昼食後、私は自室で一通の手紙を書き上げた。そこへノックの音が響く。


「あ、カイルさん、ちょうどいいところに。これをお願いします」


「これは……?」


「まだ秘密です!」


「はぁ。分かりました」


カイルは困惑しながらも、私の勢いに押されるように手紙を預かってくれた。

外に出ると、城の庭は手入れもされず雑草がぼうぼうに生い茂っていた。私はカイルを引き連れ、草むらの中を歩き回る。


「えーっと。生えてるかな~生えてたらいいな~……。そんな都合よく生えてないか~?」


ブツブツ言いながら地面を凝視する。


数分の沈黙。

土の匂いと、風の音だけが流れる。


(……ない? やっぱり都合よすぎた?)


その時――

私の目に「あの形」の葉っぱが飛び込んできた。視線の先、物陰にはこちらを伺う双子の姿もある。


「あ、アルス君! エルナちゃん! こっちに来てみて! 宝物を見せてあげる!」


「宝物??? こんなところにそんなものあるわけ……」


「あるんだな、それが。楽しいよ~見ないと絶対後悔するぞ~」


私はそう言うと、口角をニヤリと上げて、少しだけ「悪い顔」をしてみせた。


(ふふふ、子供っていうのは『秘密』とか『限定』とか、大人が企んでる『怪しい楽しさ』に弱いからね……!)


保育士時代、なかなか遊びの輪に入らない子を誘う時に使った「とっておきのイタズラな表情」。案の定、二人は毒気を抜かれたように顔を見合わせた。


「……そ、そこまで言うなら見せてみろよ」


「わたしも見たい!」


おいでおいで、と手招きして二人を呼び寄せる。


「いくよ~、それ!!!!」


私が勢いよく土を掘り起こすと、泥の中から鮮やかな色が飛び出した。


「な! なんだこれ!」


「サツマムっていうの! こっちは~……ジャガム! あ、カボチャコも転がってる!」


泥だらけの「お宝」を次々に並べる私に、カイルが不思議そうに声をかけてきた。


「奥様、それらは一体……?」


「カイルさん、これを見たことはない?」


「……ないですね。繁殖力が異様に強い雑草として認識しています。今まで風魔法で邪魔な上の葉だけを刈り取って処分していました」


「なんて! もったいないことを!!!!」


私が絶叫すると、カイルは少し困ったように肩をすくめた。


「土の下にこんな実があるとは、誰も思いもしませんでしたからね」


(そっか、この世界では土の中のものを食べる習慣がないのね。記憶が戻る前の王都でも、確かに食卓に根菜なんて並んでなかったわ……。あっちの人たちも肉好きだったし)


見た目は完全に日本で言うところのサツマイモとジャガイモとカボチャそのもの。

私はニヤリと笑った。


「ふふん、これね、野菜なんだ」


アルスはつまらなそうに口を挟む。


「野菜なんて苦いだけだろ。なくても困らないし」

「……私も、おやさいきらい……」


エルナまで弱々しく、しょんぼりと俯いてしまった。


「でもお菓子にもなるんだよ」

「お菓子!?」


双子が同時に声を上げ、目を輝かせた。


「私がとびっきり美味しいお菓子を作ってあげるから、宝探し手伝ってくれない?」


「そんな嘘……」


「私やりたい!!!」


「エルナ!?」


驚くアルスをよそに、エルナちゃんが私の服の裾をぎゅっと掴んだ。


「ふふ、エルナちゃんの体の負担にならないように、座りながら一緒にやろう!」


「ぐっ……俺もやる!」


(……あぁ、懐かしい。園児たちとワイワイ言いながら芋掘りをしたのを思い出すわ)


泥だらけになって笑う私たちを、カイルが少し離れた場所から見守っていた。かつてこれほどまでに、この庭が賑やかだったことがあっただろうか。


「見てエルナ、こんなに取れた!」


「……うん、すごい……!」


他にも、日本で言う大根やカブに似た白い根菜、さらにはニラや三つ葉のような香りの良い葉物まで次々と見つかる。


「よし! 大収穫! とりあえずこれで何品か作ろうかな。料理長に場所を貸してもらお〜っと!」


私は泥だらけの「お宝」を抱え直し、ルンルンと軽い足取りで城へと向かい始めた。

この土地は、宝の山だ!


「貴重な食料を、こんな形で見逃していたなんて……」


カイルの声が、わずかに揺れた。


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