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辺境に追放された悪役令嬢、特撮オタク保育士の知識で領地を聖地化したら死神公爵に溺愛されました  作者: 栗原りんご
第1章 ヴォルフラム編

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64. 最高の幕引き、次なる舞台へ

前話で戦闘シーンを少し追加しています。

評価、ブクマ、リアクションありがとうございます!

感想などもお待ちしておりま~す!



「うぉぉおおおおお!!!」




静まり返っていた戦場に、地を揺らすような歓声が沸き起こった。


「ヴォルフラム万歳!」「ギルバート様! ルーナマリア様万歳!!」

それは、名実ともに辺境領が「国」としてその力を世界に知らしめた瞬間だった。



一方で、エルバイン王国の玉座の間。


「ご、ご報告致します! 連合軍、壊滅! リュシアン殿下は行方不明、我が軍は降伏いたしました!」


「なっ……馬鹿な! あのような野蛮な地に後れを取るはずが……!」


驚愕に震える王と王妃の前に、重厚な足音が響く。

扉を蹴破るようにして現れたのは、返り血を拭いもせず、冷徹な瞳をしたギルバート。そして、ボロボロになった装甲を纏ったゼクスだった。


「さて、無能な王よ。お前たちはもう、王でも王妃でもない」


ギルバートの低く冷たい声が響く。


「ゼクス!!! お前というやつは……我が息子でありながら、国を裏切ったのか!」

「裏切っていたのは、あなた方の方だ」


王の怒号を、ゼクスは静かに、だが鋼のような意志で遮った。


「わ、私たちはあなたのためを思って……!」

「私のため……?」


縋り付こうとする王妃を、ゼクスは鋭い眼光で射抜く。


「聖女の失態を隠し、散々ルディウスを甘やかした挙句に廃嫡! 偽物の武器にも気付かず、自国の兵士を使い捨てにした! この国の惨状が、私のためだとでも言うのか!!!」


「ヒィッ!!!!」


ゼクスが突きつけた剣先が、王の喉元で止まる。その瞳には、もはや未練など一欠片も残っていなかった。


「あなた達はもう、私の親ではない。――連れて行け」


ゼクスの宣告とともに、近衛騎士たちが王と王妃の左右に立った。


「放せ! 私はこの国の王だぞ! 離さぬか!」


醜く喚き、地べたを這いずるようにして引き立てられていく父の背中を、ゼクスはただ静かに見つめていた。


「この国には優秀な王太子がいたんだ。父の兄……伯父は若くして病でこの世を去り、棚ぼた式に王位が回ってきたのが、次男であった父だった」


ポツリと漏らしたその言葉には、怒りよりも深い虚無感が混じっていた。


(ただ甘やかされて育った結果がこれだ。……己の保身のために、国も、息子も、聖女すらも使い潰す。そんな男に、私は『父』を求めていたのか)


ゼクスは剣を鞘に納めた。その音は、彼の中で長く続いていた「甘え」を断ち切る音だった。


「……ゼクス」


隣に立つギルバートが、短く声をかける。


「ああ、分かっている。……私は彼らとは違う道を行く。この国を、今度こそ民が誇れる場所に変えてみせる」


その後、ゼクスを新たな王に据えることが宣言される。同時に、新たに建国される『ヴォルフラム王国』との永久同盟が約束された。


そして――

一行は、すべての元凶を断つべく、アステリア王国へ旅立つ準備を始めるのだった。


ヴォルフラム領へ凱旋すると、領民たちの地鳴りのような歓声がルーナたちを迎えた。アレンやリオンたちが駆け寄り、勝利の喜びを分かち合う。そこへ、マーサに連れられて双子のエルナとアルスが走ってきた。


「あら、泣いているかと思ったのに。二人とも強くなったね!」


ルーナがしゃがみ込んで二人を抱きしめると、エルナが胸を張った。


「も、もうお姉さんですもん! 泣きません!」

「父上と母上を信じていましたから。当然の結果です」

アルスも大人びた口調で頷くが、尻尾があったらはちぎれんばかりに振られているのが目に見えるようだった。


「何かあったらすぐにシェロンと駆けつけようと思いましたのに、拍子抜けですわ」


セレスティアが優雅に扇子を広げれば、隣でもちもちのシェロンが肩をすくめる。


「ボクを戦力として使わないで勝つなんて、ビックリだよー! ルーナ、ボクの出番も残しておいてよね」


「ネレイス様ぁ~!!!! おかえりぃ~!」

「ええい! カイエン、くっつくんじゃないよ!」


そんなやり取りの端で、マリーナが俯きながらネレイスに歩み寄った。


「ネレイス……薬……盗んじゃって……ごめんなさい」

「……ふん。反省してるならいいさ。だが、もう二度と盗みなんてするんじゃないよ。次は海苔巻きにして海に放り込んでやるからね」


そこへ、後ろからマキナがやってきた。


「マキナ」

「その調子だと、アイツ、ボクのこと話したみたいだね」

「うん……マキナの作ったおもちゃで、ボッコボコにしてやったから」

「あっはっはっはっは! 見たかったなー!」

「それで……その……」


言い淀むルーナの代わりに、ギルバートが静かに口を開いた。


「あいつは、自ら魔獣となって暴走した。……故に、我々の手で討伐した」


「……そうか。うん、そうか」


マキナは空を見上げ、その言葉を噛みしめるように目を閉じた。


「ギル、ありがとう」


「さて! 感傷に浸る時間は終わりです。やる事が山積みですよ!」


カイルが眼鏡を光らせて割り込むと、その夜は領地を挙げての盛大な祝宴が催された。


数日後。ようやく落ち着きを取り戻した領地で、ルーナはマキナとネレイスに挟まれ、洋服屋に来ていた。数日後にゼクスと合流し、アステリア王国へ出立するための準備だ。

あの激戦を共に潜り抜けたことで、ネレイスとの仲は随分と砕けたものになっていた。今の彼女は、ルーナにとって頼もしくも少し手の焼ける、年の離れた友人のような存在だ。


「ドレス着なきゃだめかなぁ……」


「だめでしょ。あっちの本拠地に行くんだから、舐められたら終わりだよ。……ほら、これなんてどう? シルクの質はいいけど、もう少し腰回りの裁断を絞ったほうがルーナのラインが綺麗に出るかな……」


マキナは職人特有の鋭い目つきで、陳列されたドレスの隙間に指を滑らせながら次々と品定めをしていく。レースの繊細さや縫製の強度を厳しくチェックし、まるで精密機器を選別するかのような手際の良さで、ルーナに似合いそうな一着を引き抜いた。


「ドレスなら、前にギルが買ってくれたのがあるし……」


「全然足りないからね!? 王妃になるのにあんな一着二着で足りるわけないでしょ。今は既製品で我慢してあげるけど、そのうち国宝級の素材でフルオーダーのドレスを何十着も作ることになるんだから!」


マキナの熱量に押され、ルーナは苦笑いするしかない。


「たまにはオシャレして、あの男の独占欲を煽ってやりな。私達と買い物に行くって言った時のあの男の顔を見たかい? 嫉妬心むき出しで、今にもついて来そうな勢いだったじゃないか」


ネレイスに言われ、ルーナは今朝の光景を思い出した。

出発の際、なぜか玄関先でネレイスに「さて行こうか」と思いっきり抱きしめられたのだ。


(……あの時の谷間! 谷間が凄かったんだから……! それを横で見てたギルの目が、もう凍てつくような零下だったんだからね!?)


感触と視線のダブルパンチを思い出し、ルーナは頬を赤くしてネレイスを嗜めた。


「ネレイス、あんまりギルを揶揄うのやめてよね……後が怖いんだから。本当に。」

「ははは!ついつい面白くてね 」


一通り買い物を終え、三人はテラスでお茶をすることになった。

運ばれてきた華やかなケーキを前に、ルーナはふっと表情を和らげる。


「私、お兄様はいるんだけど……ずっと留学に行ってて疎遠だったから。なんだか、お姉様ができたみたいで嬉しいな」


ポツリと言ったルーナの本音に、二人は一瞬だけ顔を見合わせ、それから蕩けるような笑顔を向けた。


「ふん、可愛いこと言うじゃないか。お前さんみたいな妹なら、いくらでも可愛がってやるよ」


ネレイスが満足げに目を細めれば、マキナも身を乗り出して賛成する。


「ルーナが妹! いいねぇ! ボクも大賛成だよ。じゃあ今日からボクのことも『マキナ姉様』って呼んでくれてもいいんだよ!」


(美の暴力……! そして尊いお姉様たちの笑顔…は、鼻血がでそう…)


絶世の美女二人と、今や勝利の女神として崇められる無自覚美女のルーナ。その華やかさに周囲の視線が集中する。


「お、お姉さんたち……もし良かったら、あちらでお茶でも……」


勇気ある(あるいは無謀な)ナンパたちが声をかけようとした、その時。彼女たちの背後に、太陽を遮るほどの「巨大な壁」が現れた。

ギルバート、カイル、そしてカイエン。


「買い物は終わったのか」

「なんでここに」

「おもちゃ屋の視察から帰ってきたところだ」


ギルバートが当然のような顔でルーナの肩を抱き寄せ、周囲を威圧するように冷徹な視線を配る。カイルは柔和な、しかし一切の隙がない笑顔で背後に立ち、カイエンはカイエンで「ウチのネレイス様になんかようか?」と言わんばかりの形相で不届き者を睨みつけている。


(ギ、ギル……! 顔が怖い! 圧がすごい!!)

(カイルさんも笑顔が逆に怖いし、カイエンも威嚇しすぎ!)


キラキラした美女軍団と、威圧感の塊のような最高峰のイケメン騎士(と店長)たち。

「キャー!」「カッコイイ!」という黄色い歓声が上がり、周囲の住民たちが「目が潰れる!」「役者か?」と遠巻きに拝み始めている。


「あれ…りょ、領主様……?」

「っということは、この人達……???」


正体に気づいたナンパたちは、みるみるうちに青ざめていった。


「し、失礼しましたー!!!!」


脱兎のごとく逃げ去る男たちを見送り、ルーナは深いため息をついた。


「なんだい、ギルバート。デートの邪魔をするんじゃないよ」

「邪魔だとは心外だ。……愛する妻の様子を見に来て何が悪い」


不敵に笑うネレイスと、無表情ながらも瞳に独占欲を宿すギルバート。二人の背後には、まるで見えるかのような『大蛇』と『虎』が激しく火花を散らして睨み合っている。


「ば、場所変えよ場所を! 視線が痛すぎて、お茶の味が分からないよ!」


ルーナは真っ赤な顔で、賑やかな一行を連れて慌てて店を後にした。



数日後、港にはゼクス率いる新生エルバイン王国の船団が集結していた。


「マキナ、準備はいい?」

「ああ」


マキナが、力強く頷く。

ギルバートに腰を引き寄せられ、ルーナは水平線の先に見えるアステリア王国を見据えた。

愛する仲間たちと共に、すべての元凶を断ち切るための旅が――今始まる。

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