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風結び ー戦国ノイズー  作者: 蓮空虎太
第5章 第二次天正伊賀の乱 ー 伊賀燃ゆる
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第84話 マイの手紙

拝啓、平成の里のみんな。


お元気ですか。


伊賀の乱無事切り抜けられましたか?


里には無事戻れましたか?


私とショーちゃんの他、未来に戻ったみんなの近況を報告するね。


あの平成の里の滝に飛び込んだ後、私たちはみんな同じ奈良の山中に戻りました。


戻ったとはいえ、今度は私たちが不審者w


着の身着のままのボロい着物だから、どうしようと言っていたら、あのノアちゃんが一人町まで行って、私たちの着替え一式を買ってきてくれたの。


これには本当に助かったわ。


ノアちゃんレンタカーも借りてきて、そのまま名古屋のノアちゃんの住むアパートに連れて行ってくれたんだ。


彼女の行動力に少しビックリしたw


夜は久々にみんなで牛丼食べた。感動するくらい美味しかった。


それからシャワー。

暖かいお湯が蛇口をひねるだけで出るって、こんなにありがたい事なんだって涙が出た。

シャンプーで髪を洗えるのも嬉しかったなぁ。


そして夜を徹してノアちゃんに私たちのいた里のことを話したの。


あらためて自分に起きたことを思って、「すぐ帰れた私はすごくラッキーだったんですね…」と安堵していたわ。


そして翌日、私たちはどうするか考えた結果、家族の所へ行く前に警察に行くことに決めたの。


愛知県警 生活安全課 行方不明者係ってところ。


そこに5人で行ったら、警察の人も突然捜索願が出ていた人が多数現れたことに驚いてた。


色々考えたけど、嘘を言ってもバラバラに取り調べられたらすぐバレるから、皆正直に話そうって言って、里のこと全て話したの。


そしたら次の日に警察庁 生活安全局 特殊行方事案対策室というところから3人の刑事さんが来て、またあらためて色々聞かれた。


私たちが知らないだけで、こうした摩訶不思議な失踪や突然の出戻りって結構あるみたいで、そういうことを専門に取り調べる極秘な人たちなんだって。


映画みたいだねw


そうして2日ほど取り調べを受けて、私たちは解放されたの。


マスコミとかに発表されて大騒動になるのかなって心配したんだけど、特殊行方事案対策室の刑事さんによると、日本で年間に失踪して捜索願が出る人は9万人もいるそうで、そのうちの数人は私たちのように神隠しのようにいなくなっているらしく、そんな人がひょっこり帰ってくる例も結構あるらしいの。


そういう人がタイムスリップや宇宙人にさらわれていたなんていうことを言う事例もあって、警察としては、事件性が無いそうした捜査不能な事案については敢えてマスコミ公表もせず、そっと社会に帰しているってことで、私たちも家族にだけ連絡を取ってお終いだった。


その後の家族への対応の方が大変だったけどねw

タイムスリップなんてなかなか信じてもらえなくて…でも一生懸命話した。


ショーちゃんの事も、(ふう)の事も。


そしてゴエモンの携帯に…残ってたよ。


里のみんな、風の笑顔…


それを見て私ワンワン泣いちゃって、一緒にいてくれたショーちゃんもワンワン泣いて、そしたらママもパパもお兄ちゃんも妹もワンワン泣いて、ショーちゃんのご両親も...。


その後、両家の親たちが画像見て「初孫可愛いね」って言い合って、今ではそれを写真にして互いの家に飾ってるの。


みんな“一度抱っこしてあげたかった”って言ってくれて…


それで、全て信じてくれて、私とショーちゃんのことも皆認めてくれて、今度は“早く風の生まれかわりを抱っこさせろ”って言いだしてw


式は後日改めてだけど、籍は早く入れとけってパパに言われて、私は正式に井田麻衣になりました。


ショーちゃんも私も色々詮索されたりするのが嫌だし、前の仕事も退職扱いになっていたから、全然違う土地で一からやり直すことにしました。

なので今はお仕事と住む場所をショーちゃんと二人で探しています。


そんな混乱続きでなかなか忙しいんだけど、“平成の里帰り”の皆とは定期的に会うようにしているんだ。

ノアちゃんもね。時間は短かったけど、あの世界を共有した仲間だから。


そうそう、マサさんとシホさんも籍入れるみたいなのよ。

京都への脱出行の時もマサさんいつもシホさんのこと気にかけていたから。


マサさんは「俺たちはもう子供作れないけど、余生をあの里の暮らしを思い出しながら語り合える相手が側にいるのがいいと思ってな」って言ってる。


「気持ちわかる~」って、皆で言ってたら、ユウさんが「俺は誰と一緒にいればいいんだよ~」ってw


「ユウには脱出行の時の名誉の刀傷があるだろう」ってマサさんに言われて、苦い顔しながらも、「今となっては本当にいい思い出だよ、これ」って言って傷を見せびらかしてたw


こんな感じで私たちはやっと混乱から平穏な日常に戻りつつあります。


でもね、こんなこと言ったらそっちで大変な思いしている皆に怒られるかもしれないけど、今私たちはあの平成の里で暮らした日々が懐かしく、あそこでの暮らしが本当に生きているって実感できた日々だったなって思っています。


確かにこっちは安全で、便利で、美味しいものたくさんあって、きれいな服やアクセがあって、何不自由ないんだけど、誰も他人に無関心で、自分のことしか考えてなくて…何を食べても貰っても、心から感動することなくて、うわべだけの無機質な世界にいる感じがします。


平成の里で、少ない食べ物を皆で分け合って、畑仕事や里の行事を皆で力合わせて、何するにも皆で協力して生きていたあの里の日々こそ、人間らしい生き方だったなって思うの。


ショーちゃんと「もし平成の里に帰れるっていったらどうする?」って言いあったことがあって、“せいの”で一緒に答えたら、二人とも「帰る」って答えたのよ。


(ふう)を安全な未来で育てたいって思っていたんだけど、ネットの仮想空間に引きこもったり、いじめが横行する無機質な世界より、里の広場を走り回って、周りの大人や子供同士が家族の様に声を掛け合う中で育つ方が、子供にとって幸せなんじゃないかって、今は思ってるの。


こっちに戻ったことを後悔しているんじゃないけど、あの里での暮らしは素晴らしいものだったんだって、今本当に実感しています。


だから、みんながあの里で一緒に生きていけること、マイは凄く羨ましく思っています。


これからもずっと、みんなが元気で過ごしていけること願ってるね。

(ん、過去の人にこれからもは変か?w)


じゃあ、またね。      敬具



追伸


そうそう、先日ね、みんなで里のあったであろう山に行ってみたの。


なんか全然変わっていてね、私たちが飛び込んだ滝なんて無くなっていて、場所を特定するのも凄く苦労したんだけど、山の形とかは変わらないから、一日がかりで、ここじゃないかってところまで辿りついたんだ。


広場の所も草木が生い茂っていて、全然人が住んでいた形跡なんてなかったんだけど、皆でテント張って、火を起こして宴を思い出して過ごしたんだ。


そしたらね、ショーちゃんが確かこの辺だったって言ってしきりに辺りを掘り返しだしたの。


私にはすぐわかった…

ショーちゃんが何を探しているのか。


あの日『風』と刻んだ石…

広場を見渡せる小高い調理場の横。


私も掘った。

そしたらマサさんも、ユウさんも、シホさんもノアちゃんもみんなで掘って探してくれた。


でも…

風の石は出てこなかった。


それはきっと、風がもう私のお腹に帰ってきているからなのかな…


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