第三話・ヘルモンドの町
常日頃拠点にしている街、フィーリアの西にキリハたち三人はいた。
魔術を利用した機械工学である、魔導工学の技術によって作られた導力車という車を走らせて約半日が経つ。もうそろそろ目的地の町が見える頃だろう。
ちなみに、この導力車は私物だ。そして、とある人物に様々な改造を施されていたりする。
「ねー、あとどれくらいで着くの?」
後部座席からのソフィアの声。
「距離的にはあと30分くらいですね。よく手入れされた街道を走っていますからないとは思いますけど、魔獣などに出会ったら遅れるかも知れません」
助手席からはクオンの声。地図をめくりながら答えている。
キリハは運転だ。クオンが運転でも良かったが、キリハの方が慣れているためやっている。
ソフィアは同乗者が酔うなので、任されることはない。遠距離攻撃が三人の中で一番得意なので、いざというとき砲台係に専念できるように、という理由もあるが。
「もう座り疲れたよ~。町に着いたらすぐ宿とってお風呂入りたい」
「残念だけど最初はギルドの支部で手続きと情報収集だよ。その後僕は支部長と会談、二人は後詰めの手配と、消耗品の買い出しだね」
「えー」
ソフィアは不満丸出しだ。ごく一部を除き、仕事と私用をしっかり分けられるクオンを見習って欲しい。
「明日の朝は自由な時間があるから我慢して」
「なら準備を明日に──」
「回すのは無しだよ。できる準備を後に回すとろくなことにならないからね。
それに、そうすると明日一日中準備や仕事で埋まるよ?」
「……はあい」
そんなやり取りをしているうちに町が見えてきた。
「ヘルモンドの町で間違いなさそうですね」
「みたいだね。じゃあ早く中に入ろうか」
――――――――――
門の詰所で手続きを済ませて町に入ると、様々な店が並んでいる大通りだった。
なお、町に入るのに門を通ったわけは、町が特殊な柵で囲まれているからだ。これは魔術の盾を発生させることができるもので、魔獣の侵入を防ぐために、人の居住地は大抵同じような機能を持った柵や壁で囲まれている。
「支部はこの道を真っ直ぐ行って右手ですね。フィーリア支部で教えてもらった宿はその少し先です」
先ほどとは違う地図を見ながらクオンが言った。町中の地図だろう。詰め所でもらってきたのだろうか。
「それじゃあ、さっそく支部に行こうか」
車を走らせることおよそ5分。冒険者ギルドのヘルモンド支部に到着した。外観はフィーリア支部と同じ、石造りで白い塗装がなされた建物。規模はこちらの方が小さいが、町自体の規模に差があるので当たり前だろう。
「紹介状良し、ギルド証良し、依頼カード良しと。じゃ、入ろう」
持ち物を確認して入ると、中は一般的な冒険者ギルド支部のつくりだった。
受付窓口が複数あり、依頼を確認などができる端末があり、テーブルや椅子がある。キリハたちはいくつかある窓口の中の、事務関連の窓口へ向かった。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
対応に出てきた眼鏡を掛けた男性係員へ、自分のギルド証を出して身分証明をし、次にフィーリアで受けた依頼の内容か記録されたカードを渡す。
「朱二級冒険者、キリハ・ヒトツギ様ですね。連絡を承っております。そちらのお二方はパーティーメンバーの方でよろしいですか?」
「はい、そうです」
係員の質問に、ギルド証を渡して、クオンが答えた。
その横では、同じようにソフィアもギルド証を出している。
「ありがとうございます。手続きと状況の説明がございますので、リーダーの方はこのままお待ちください。他のメンバーの方は帰っていただいてもかまいません」
端末での処理がおわったのだろう、三人のギルド証と依頼カードを返して係員が言った。
「説明を聞いてくるから、二人は準備の方お願いね。ああ、そうだ、もう一枚の紹介状渡しておくから、必要だったら使って」
クオンに紹介状を渡す。これは冒険者ギルドが重要な依頼を受けた冒険者に対して発行するもので、冒険者個人が持つギルド証よりも信頼度が高い身分保証となっている。
そのため、様々な偽造防止措置がなされており、さらに使用期限がある。これがあれば何かあっても対応できるだろう。
「わかりました。一言一句逃さず聞いてきてくださいね。行きましょう、ソフィ」
クオンとソフィアが出口へ歩いて行くのを見送り、係員へ向き合った。
「問題がなければ説明のために支部長室まで来ていただきたいのですが、よろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「ではご案内させていただきます」
2016年4月30日レイアウト・文の言い回し修正
同年5月2日段落始めを一マス下げました




