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黒鬼奇譚  作者: 湯豆腐メンタル
因縁を超えて
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第二話・依頼

「お疲れ様でした、キリハさん」


 依頼を終えて冒険者ギルド───依頼をを受けてそれをこなして報酬を受けとる冒険者(なんでもや)たちの互助組合───の受付へ達成報告をすると、係りの女性、クレアが笑顔で迎えてくれた。


「クオンさんもお疲れ様です」


 次にクレアはキリハの隣の少女に声をかけた。長い黒髪に黒目の十代後半程度の少女だ。着物や和服と呼ばれる東方の国の民族衣装に似た服を着ている。


「高位冒険者の方に猫探しを頼んでしまってすみませんでした。本当はこちらで適当な人を見つけるべきだったんですけど」


「いえ、大丈夫ですよ。新しい術式を組み込んだ実験動物だというのは聞いてましたから」

 詫びるクレアに問題ないと返しつつ、隣のクオンに目配せをしておく。その意味を理解してくれたクオンが懐から一枚のカードを取り出した。


「クレアさん、達成証明です。お願いしますね」


「はい。脱走した実験動物捕獲依頼達成、確認です。本当にありがとうございました」


 これで任せられた依頼は済んだ。新開発された魔術の式を組み込まれた実験動物───三匹の超高速疾走猫───を捕まえるのは骨が折れたが、報酬として猫が脱走した研究所から最新モデルの魔術機械をもらえるのでこちらとしても得だ。そう結論付けつつ、キリハは次の用事を済ませることにした。


「ところでクレアさん、僕たちが探しているヤツの情報は入っていますか?」


 クレアは首を横に振る。その表情は少し申し訳なさそうだ。


「入っていません。二週間前にルノーの町を襲ったあと、目撃証言も、活動の痕跡も確認されてないんです。」


「そうですか。ありがとうございます。また新しい情報が入ったら教えてください。……僕たちはこれで」


 受付を後にする。依頼達成の報告をしている間にもう一人の仲間が新しい依頼を受けているはずだ。


「ソフィアと合流しようか。……たびたび姿をくらませるヤツの新しい見つけ方も練らないといけないし」


 クオンがふう、と息をはく。


「そうですね。魔獣や武具の情報が手に入りやすいということで冒険者になりましたが、それでも情報収集はそろそろ限界です。別の方法を考えないとでしょうね。

自分の私怨ためだけでなく、人を襲う怪物を討つためという意味でも、刃がとどく位置まで近付けておかないとですから」


「そうだね。とりあえずあっちの受付前のテーブルで待とうか」


 二人で達成報告をした受付とは別の受付の方へ歩き出す。ここの支部は手続きの効率化のため、依頼の受領、達成報告、その他の雑務などで窓口が複数に別れている。いや、小さい支部でなければ大体こうだから、ここも、と言うべきか。


「丁度終わったみたいですね」


 二人がテーブルに座る直前に、受付にいた少女が振り向いた。もう一人の仲間のソフィアだ。

 落ち着いた青のセミロングの髪に、琥珀色の透き通った瞳。

 クオンが綺麗な顔立ちなら、こちらは愛嬌があるといった感じか。年齢はキリハとクオンより低いのだが、ほんの少しの違いだ。


「キリハさん、クオンさん、依頼受けてきたよ」


「お疲れ様。僕たちも報告は終わったよ。新しい方の内容は?」


「キリハさんの二つ名にぴったりな依頼だよ」


 ソフィアは指先で依頼を受けている証のカードをくるくる回しながら言った。その言い方で内容は予想できたが、それなりに大事なカードを雑に扱うのは感心しない。


「カード回す癖は直した方いいよ。無くすからね。それと二つ名についてもあまり言わないで欲しいかな。高位の冒険者になるほどいろんな呼ばれかたをするけど、いい意味で呼ばれることもあれば、悪い意味で呼ばれることもあるからあまり好きじゃない」


「二つ名といえばソフィも有名なものがあった気がしますけれど。たしか──」


 クオンが口を開くと、ソフィアはわたわたと手を振り回してそれを遮った。


「クオンさんストーーップ!! 僕の呼ばれ方は恥ずかしいの多いからやめて!!」


「そうでしょうか。わたくしは中々素敵なネーミングだと思いますけれど。例えば、火焔―――」


「やめてーーー!!」


 クオンは悪気なく言っているようだが、ソフィアは全力で止めようとしている。ソフィアがかなり恥ずかしがっているて、話が大きく脱線しているため、キリハは元の話に戻すことにした。


「二人とも、そろそろ依頼の話をしよう。」


 渡りに舟とばかりにソフィアが飛びついてきた。


「そうだね! まだ詳しく話してないもんね!」


「はい、わかりました。討伐対象がどんな相手かは想像できますが、場所などは聞いていないですからね」


 ここでソフィアが咳払いを一つ。


「こほん。えーとね、場所はこの街から西に導力車で半日くらいの町の、さらに北に少しいった森。その森の奥深くで、地域の生態系トップの魔獣の死骸が発見されたんだって。それも複数」


「ということは、その魔獣を殺した相手がいるか、病気や毒物が発生してるか、環境が激変してるってことかな。もしくはこの中の要因が複数起きたか」


 ソフィアがパチリと指を鳴らし、キリハを指差す。


「そういうこと。で、僕らはこれ全部できるやつを知ってるよね。そして、町の人が森の中で見たことがない魔獣を見たっていう証言があったらしいんだよね~。これがキリハさんの異名の話にもつながるんだけど」


「ソフィ、人を指差すのもやめたほうがいですよ。……敵が何かはわかりました」


 クオンがすっと目を細める。その隙間から見える瞳には冷たい光が宿っていた。


「瘴魔ですね」


 さらに、薄い笑みを浮かべた顔は美しくも、首筋に刃物を突きつけられるような寒気を持っていた。


「うん。クオンはやる気みたいだけどどうする?今なら複数パーティにできるけど、またソロパーティにする?〝瘴魔狩り〟のキリハさん」

2016年4月9日誤字脱字等修正

同年4月30日レイアウト・文の言い回し修正

同年5月2日段落始めを一マス下げました

同年6月21日レイアウト修正

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