第一話・出会い
少年は家の中で目を覚ました。とりたてて特徴のない、畳敷木造の家だ。どこか見覚えがある気がするが、ここで何をしていたのかは思い出せない。
とりあえず少年は寝転がっていた畳の上に立ち、人がいないか確認することにした。襖を開け、隣の部屋、土間、二階の部屋を見回ってみたが誰もいない。
「変だな……」
少年はこのまま家に居ても得るものはないと思い、外に出ることにした。
「勝手に使うのは悪いけど、裸足で出るのは遠慮したいし…。後で返せばいいかな?」
土間の草履を一足引っかけ外に出ると、何かがおかいしい気がした。目の前に広がるのはごく普通の町並みだ。特筆すべき所はない………。
そこで彼ははたと気付いた。人がいないのだ。周りの家にも気配がない。
「これは……? 誰かいませんか?」
声を発しても返事がない。歩きながら時折同じように声をあげても、やはり返事はない。
「物音もしない……。一体何があったんだろう。何で誰もいない?」
一度立ち止まり、辺りを見回したり、家の中を覗いてみても何も見つけられない。
「誰かいませんかー? 誰かーーー? ……誰もいない、かあ。何か理由がわかるものがあればなあ。ん?あれは……」
ひたすら同じことを繰り返し歩いてきて途方に暮れていたが、手がかりになりそうなものを見つけた。視界の端に煙が上がっていた。
「黒い煙…。煙が上がっているってことは人がいるかもしれない。行ってみよう」
少年は煙の根元を目指して走り出した。
――――――――――
たどり着いたその場所には、当たり前ながら物が焼ける臭いが漂っていた。そして煙の発生源、そこにあったのは荼毘にふされる幾つもの遺体。大きな穴に入れられたそれの数は百ではきかないだろう。
「声が聞こえる…。誰か泣いてる?」
誰かがすすり泣く声が聞こえてきた。若い女性の声に思える。
「人がいるってことだ。行こう」
声が聞こえてきた方向、穴を挟んだ向こう側へと歩き出す。煙で見えないが誰かいるかもしれない。穴を迂回するように歩いていると、だんだん声が大きくなってきた。近づいているということだろう。
穴の角を曲がったとき、少し先に人影があった。地面に突っ伏すような格好の着物の少女。年の頃は12、3歳だろうか。自分とあまり変わらない、と少年は感じた。
少年が声を掛ける前にすすり泣く少女が顔を上げた。長い黒髪から覗く黒曜石のような瞳がきれいだった。少女が嗚咽混じりに口を開いた。
「あなたは、だ れ?」
その言葉に答えるため、少年も言葉を紡ぐ。
「僕は……」
それが彼と彼女の出会いだった。
2016年4月30日レイアウト・文の言い回しを修正
同年5月2日段落始めを一マス下げました
同年6月21日レイアウト修正




