エピローグ―2 前世等での娘の千恵子とフランスの運命
最終話ということもあり、少し長くなっています。
僕は、鈴が出してきた馬肉の味噌漬けの味を想い起こしながら、改めて考えた。
土方伯爵家では、味噌をずっと自作し続けている。
その味噌は、篠田千恵子が土方伯爵家に伝えたモノだ、基は会津味噌だと噂レベルで聞いていたが。
本当だったようだな。
そして、味噌の味に誘われたのか、千恵子のそれぞれの運命の違いに、僕は想いを馳せた。
史実、この世界では、千恵子は土方伯爵夫人として、良き華族の家刀自として人生を終えた。
だが、鈴が赴いた異世界では、軍医士官に千恵子はなって、第二次世界大戦で戦死した。
一方、ジャンヌ達が赴いた異世界では、嫡母の岸忠子の画策もあり、土方伯爵夫人ではあったが、衆議院議員にもなって、それこそ国務大臣等まで務めた重鎮議員になり、その結果として、小泉又次郎以下の小泉家を政界から完全に追い出したのだ。
もし、僕が長命して、澪では無かった忠子が暴走せず、良き家庭の妻、母になっていたら、僕は日本に第一次世界大戦後に、ジャンヌと別れて、帰国していただろう。
その場合、千恵子はどんな人生を歩んだのだろうか。
普通に考えれば、正妻の忠子との間に総司という跡取り息子がいる以上、僕は忠子に頭を下げて、忠子との夫婦生活を選ばざるを得ない。
更に当時からすれば、りつは苦汁を呑んで、僕と別れざるを得ないだろう。
これが逆ならまだしも、男女差別と言われるだろうが、当時では跡取り息子を産んだ正妻の忠子が圧倒的に強い立場だからだ。
りつは、千恵子の養育費を受け取るだけでも、矛を収めざるを得ない。
その後は、千恵子はどうなっていくのだろうか。
僕を慕う余り、軍医士官に成るだろうか、又、土方伯爵家に嫁ぐだろうか。
僕は、その場合の千恵子の人生を夢想した。
又、それぞれの世界のフランスの運命の違いにも、僕は想いを馳せざるを得なかった。
(この世界の)史実では、フランスは欧州の地域大国として健在だが、徐々に老大国になりつつある。
だが、鈴の赴いた異世界では、フランスという国家は健在だが、パリで原爆が炸裂したこと等から、フランスは内乱状態になって荒廃した末に第四共和政が成立し、完全に過去の大国になっているようだ。
一方、ジャンヌ達の赴いた異世界では、フランスは英独を凌ぐ欧州一の大国として君臨している。
(この世界では、ソ連が第二次世界大戦で完全に分裂崩壊し、後継国のロシア等では民族、宗教問題で地域紛争や内戦が絶えない状況が続いている為でもある)
何故にそうなったのか。
鈴やジャンヌ、更には岸澪や村山愛の完全な憶測だが、僕とジャンヌが結ばれるか否か、更にその結末の違いから、フランスの運命は変わるのではないか、とのことだ。
何しろ、史実だと、僕の息子のアラン・ダヴ―が、1960年前後のアルジェリア等のフランス植民地問題解決に奔走し、クーデター反対を貫いたことから、このようになったが。
鈴の赴いた異世界では、僕の息子のアラン・ダヴ―は存在せず、フランス植民地問題は混迷し、パリで原爆が炸裂等する事態が起きてしまったのだ。
ジャンヌ達の赴いた異世界では、僕が祖国フランスの為に、とフランス植民地問題解決に懸命に奔走したことから、フランスは見事に損切りに成功して、欧州一の大国として君臨する事態が起きた。
僕からすれば、完全に嗤うしかない憶測だ。
第一次世界大戦の際、マルセイユで日本海兵隊の若手尉官と街娼が出逢うか否かで、更にその後の選択肢の違いで、フランスというそれなりの大国の運命が変わるなんて、そんなことはある筈が無い。
だが、史実と異世界の歴史の流れを考えれば、彼女達の憶測を僕は完全には否定できない。
それならば、僕が長命した場合、フランスはどうなるのだろうか。
僕の息子、アラン・ダヴ―がいるのだから、史実通りの運命をフランスは歩む公算が高いが。
本当のところはどうなるのだろうか。
余りにも個人的なことだが、前世での僕の娘、千恵子のこと。
その反対で、フランスという国家の運命のこと。
それ以外にも、僕の選択肢によって、大小様々な違いはあるが、運命が変わることがあるだろう。
特に僕の前世の実家、野村家の運命は、本当に大きく違うだろう。
旅行から還って来た鈴とジャンヌの話に因れば、野村家の旧居の跡地は更地で売地になっていたとか。
もし、僕が長命していた場合、野村家の旧居は跡地にならず、今でも野村家の縁者が住んでいたのではないだろうか。
(尚、他所事ながら、鈴とジャンヌの口ぶりから、僕は今更のこと、と考えざるを得なかったが。
二人は共に野村家の旧居の跡地を購入して、僕との夫婦生活の拠点にしたいようだった)
そんな色々のことを考える余り、僕は物思いに暫くの間、耽らざるを得なかった。
そして、この土方鈴とジャンヌ・ダヴ―の会津への一泊二日の旅行は、更なる事態を引き起こした。
「はい」
「よく分かるね」
「異世界とはいえ、50年余りも連れ添った以上、分かって当然よ」
ジャンヌが、僕に積極的にアプローチするようになったのだ。
それに対抗して、
「はい」
「何で分かるの」
「異世界と併せて、70年余りも連れ添った仲ですもの」
鈴も、ジャンヌに負けじと対抗するようになった。
それに、本来の正妻として、岸澪も対抗しようとするが。
澪は、僕と全く共に暮らしたことが無いと言っても過言ではない。
(尚、村山愛は、
「私は所詮は愛人ですから」
と三人の争いから、一歩引く態度を執っている。
最も僕が見る限り、ジャンヌ達と赴いた異世界で、日本に僕が遺した子ども3人から、
「僕、私達のお母さん」
と慕われた経験等に満足していて、そういう態度を執っているようだ)
ともかく、そうしたことから、澪がとうとうブチ切れる事態が起きてしまった。
「私と一緒に、ヴェルダン近くの宿に行って、共に異世界に行きましょう。
そうすれば、50年余りを共に過ごせて、私は貴方のことを理解できるし、貴方も私の良さが理解できる筈だから」
澪は、其処までのことを言い出した。
それに対して、鈴、ジャンヌ、愛は共同戦線を急きょ張って対処する事態が起きて。
その結果、僕は一人でヴェルダン近くの宿に赴くのだが。
それは又、完全に別の物語になる。
最後の別の物語ですが、
「ハーレムなんて、誤解です。やったことは認めます。ですが、ここまで子育てに苦労するとは」
になります。
(細かいことを言えば、「野村雄と高木惣吉」等も絡んできます)
つまり、この話は、
「ハーレムなんて、誤解です。やったことは認めます。ですが、ここまで子育てに苦労するとは」
の前日譚になる訳です。
(この後に割烹で、外伝における時系列に付いて、補足説明します。
最も基本的に独立した話、小説ですので、個別に読んでも楽しめると想います)
御感想等をお待ちしています。




