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ガンソード・マギア ~序列最下位、銃剣魔法使いの英雄譚~  作者: 瀬里@ピッコマ/Lineマンガ連載中


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14/20

14.銃剣魔法を学ぶ

試しの儀で初めて序列を受け、ガンソード・マギアの契約を行った者は、ファルケハイン本邸に留まり半年間の魔法教育を受ける。

講師は、当主の弟、序列第二位のカール。

対して教えを受けるのは、四人だ。

序列十五位、ワルサー、十四歳、ガンソード・マギアの銘は<やいば

序列十六位、グンター、十四歳、ガンソード・マギアの銘は<きり

序列十八位、ルペルト、十歳、ガンソード・マギアの銘は<やみ

序列二十位、ディルク、十歳、ガンソード・マギアの銘は<あかつき




「建国の八家とは、ヴァルト王国建国時、国を支えた八つの家門のことだ。八家はヴァルト王家より公爵の爵位を授けられ、それぞれの家に二十の古代魔法武具アーティファクトが与えられた」


初日は、建国や、家の成り立ちにかかわる座学らしい。

他の皆は、親から教えてを受けて知っているようなことなのかもしれない。はっきり言って眠そうだった。

しかし、ディルクは違う。

母は、アルトナーの生まれだったし、回帰前も含めて、きちんとした教育を受けてこなかった。

初めて知ることばかりでワクワクしている。


「盾・鎧・剣・槍・銃・弓・錫杖魔法ロッド・マギア銃剣魔法ガンソード・マギア。このうち、魔法系は、ロッド・マギアのアルトナー家と、ガンソード・マギアのファルケハイン家だけだ。だから、アルトナーとファルケハインは他家よりも少し交流が深い」


他の三人はちらりとディルクの赤髪に目をやった。


(赤毛を馬鹿にしてるくせに)


表向きではそう言いながら、ファルケハインの連中が排他的なのは、ディルクは嫌というほど味わっている。

こういったところは話半分に聞くことにする。


「各家は、以降独自のルールをもって古代魔法武具を、後世に残し続けている。ファルケハインの場合は五年に一度行われる試しの儀だね。試しの儀で、毎回、序列は入れ替わる。君たちはガンソード・マギアを手に入れた。けれど、その裏ではガンソード・マギアを手放した者がいることを忘れてはならない。そして、いつか君たちもガンソード・マギアを手放す時がくる」


手に入れてすぐに、手放すときの話を聞くことになるとは思っていなかった。


「君たちは、ガンソード・マギアを預かり、ファルケハインを支えるために序列を授けられた。しかし、それは恒久的な立場ではない。奢ることなく、自分を磨くことだ。そしてその時が来たら、胸を張って後進に道を譲り、育てる立場になってほしい」


ディルクが最後まで参加できなかった祝賀会では、最後に、序列から外れた者に対して勲章を授ける儀式があったらしい。


「さて、それでは、もっと実用的で楽しい話を始めようか」


カールは、突然、腰からガンソード・マギア<さざなみ>を抜き、一振りした。


「≪銀のウェイブ≫」


<漣>の魔法刻印が起動し、中空に魔法陣が一瞬浮かび上がると、白光を放つ刀身が伸び、机に座るディルクたちの間を縦横無尽に駆け抜けた。


「ガンソード・マギアの仕組みについてだ」


皆が、ごくりと唾を飲み込んだ。




「ファルケハインが賜った古代魔法武具──ガンソード・マギアの特性は、他の八家と大きく異なる。

それは、銃剣魔法を使うためには、必ずガンソード・マギアが必要だということだ。逆にどんなに銃剣魔法を極めた者でも、ガンソード・マギアがなければその技を使うことができない。

例えば、盾の八家であるリヒター家では、盾術は、リヒター家の誰もが学び、全員で高めてきた。古代魔法武具を賜っていない者も、その技を極めることができる。

しかし、銃剣魔法を使える者は、この世界に、たった二十人しかいないんだ。

裾野が狭く、限られた者しか使えない。

これが、銃剣魔法の進化が他家に比べ遅れている理由でもある。

そして、古代魔法武具の解き明かされていない秘密がまだ眠っているかもしれないという、ロマンを感じるところだね」


ディルクにも理解できた。

回帰前、ディルクは、ファルケハイン家にいながら、ガンソード・マギアを学ぶことができなかった。

代わりに他の八家で技を磨いた。

鎧のバウムガルデン家で体術を、剣のツンペ家で剣術を、銃のシュペール家で銃術を、といった具合だ。魔法については魔力がなかったので磨くことができなかったが、魔力があればアルトナー家で磨いたことだろう。


「また、魔法に関しても特殊だ。ガンソード・マギアを真に理解するには、元素魔法だけでなく、刻印魔法も習得しなければならない」

「刻印魔法……」

「そう、ファルケハインの序列保持者だけが学ぶことを許される、門外不出の魔法だ。今後は段階を踏んで進めていくことになる。君たちは、まず元素魔法の使い方、それから刻印魔法の使い方を学ぶ。そして、その後、刻印魔法の『作り方』を学ぶ」




「はあ、終わった。頭爆発しそう。ディルクはどうなの?」

「別に」


ディルクに話しかけてきたのは、ルペルトだ。

双子のグンターとワルサーは二人でいつもつるんでいるし、年も四つも上だから、ディルクしか話しかける相手がいないのだろう。

ディルクは仲良くするつもりがないので、最低限の返事だ。

母と妹はアルトナーに旅立ち、一時的に身の安全が確保されたとはいえ、彼らと慣れあう気はない。

ディルクの評判を鵜吞みにし、敵視してきた親戚連中は、いうなれば全員敵だ。

弱みを見せないことが何よりも重要なので、余計な接触はしないに限る。

しかし、ルペルトは、全く意に介さず、ふわふわのアッシュブロンドの髪を揺らしながら話しかけてくる。

大きな瞳をきらきらとさせてまとわりついてくる。まるで子犬だ。


「なあ、ディルクのガンソード・マギア、やっぱり剣に戻せないの?」

「『やっぱり』って、どういうことなんだ?」


試しの儀の際にグンターとワルサーが話していたことだった。ふと気になって思わず聞き返してしまった。


「教えてやるよ!」


失敗したと思った時には遅かった。

ルペルトは、すっかりディルクになついてしまった。




講義も進み、二週間が過ぎた。

ディルクは、静かすぎるグンターとワルサーを不審に思っていたが、残念ながらそれは懸念で終わらなかった。

オスカーと一緒にディルクを痛めつけることに喜びを感じていたこの二人が、おとなしくしているわけなどなかったのだ。


この日は、カールが不在のため、急遽他の銃剣魔法使いが、講義を行うことになった。

ガンソード・マギアの講義は、序列を持った銃剣魔法使いにしかできない。

今日現れたのは、グンターとワルサーの兄、序列十一位のギルターだった。

彼は、ファルケハイン近郊の守備を任されているため、序列保持者の中では最も呼び出しやすい人物だ。ちなみに、本邸近郊に白蛇サーペントの侵入を許した責任問題で、当主からだいぶ叱責を受けたとも聞いている。


「カール様から実習の許可は頂いている。今日の講義は、練武場での模擬訓練だ」


ギルターのその宣言に、グンターとワルサーは、弱者をいたぶることへの高揚感を隠そうともしなかった。




練武場の中央に立つディルクの耳元を、弾丸がかすめる。

耳元を通過したのは≪貫通の弾丸ペネトレイト≫だ。


「あー、間違えちまった」

「それ、戦闘用の弾丸じゃないですか!」

「ルペルト。グンターは間違えたって言ってるだろ。間違いは誰にでもあるんだから、気にするなよ」

「間違いにしても、これはあんまりです!」


ルペルトの抗議もワルサーとグンターの二人は意に介さない。

そして、それはギルターもだ。ルペルトは助けを求めてギルターの方を向くが、ギルターは、こちらがまるで見えていないかのように背を向けた。

彼らはやはりディルクを放っておくつもりなどなかったのだ。今までは単にカールの視線が気になって手を出してこなかっただけだ。


「おい、お前、余計なことをするなよ」

「なんですか、それ! 大けがしたらどうす……ぐっ」

「お前、空気読めよ。俺たちも大けがする人数を増やしたくはないんだ。わかるだろ?」


(あいつ、ばかか? 黙ってればいいのに)


何故かワルサーに反抗するルペルトは、腹を殴られうずくまった。

十歳と十四歳の体格差は大きい。

腹を押さえたまま、それでもワルサーをにらみつけるルペルトを見て、ディルクは大きくため息をつく。




昨日、母から手紙が来た。

『アルトナー公爵夫人にはとてもよくしてもらっているの。ラウラもフィーネ様ととても仲良くしているわ。魔力が大きいだけの私でも役に立つお仕事があるらしいので、元気になったら恩返しをするつもりよ。しばらくこちらにいることになるわ』

二人は、今安全な場所にいる。

自分の手の中から、いつか二人の命がこぼれ落ちてしまうのではないかという焦燥感から、ディルクは初めて解放されたのだ。


だから。


──もう、ディルクは、自分を偽る必要などない。


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