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竜王の学園生活  作者: 有原優


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第4話 陽キャ

そして翌日。竜輝が学校に着くと、


 

「ねえねえ、立花君。よく考えたら連絡先交換してないなって。だから交換しない?」


リサがもの凄い勢いで竜輝に迫ってきた。


「こ、交換?」


 (そんなこと考えてなかった。だって、あの、田島さんと連絡先交換するなんて)


「だって、日曜日の連絡難しくなるじゃん。ほら、お願い」

「わ、わかりました」


 まさかこういった形で易々と連絡先を交換できるなんて。

 竜輝はひそかに心の中でがっつポーズをした。誰にもばれないように現実では控えたけれど。




 しかし次の瞬間、すぐさま自身の考えを否定した。

 だって、リサは所謂陽キャだ。彼女の事だから、誰にでも連絡先を交換している可能性もある。

 ぬか喜びになる可能性もある。

 誰にも慣れない程度に首を振り、勝負はここからだと、自分自身に語り掛ける。


「えへへ、分かんないことがあったらいつでも言ってよ。いつでも相談に乗るからさ」

「勉強に関して……ですか?」

「そうだね。恋愛の事とかでもいいよ」

「へ」竜輝は固まる。


「そんな面白い反応しなくても。……冗談に決まってるって。もしかして好きな相手とかいるの?」


(それがあなただなんて言えるわけがないでしょうが)


 竜輝は心の中の悶々とした気持ちを感じる。

 本当に異性として意識されてないんだな、と思うと悲しくなる。


「ふふ、そんな赤くならなくても」

「そうだよー」


 そう言いながら、ピンク色の髪の毛を一本にくくった少女。御影遥みかげはるかが来た。


「リサもあまり虐めてやらないの」

「虐めてるつもりはないよー。ただ、喋ってただけ」

「そう?」

「つーか」


もう一人男子がやってきた。赤色に染めた髪色が特徴的な桐谷幸也きりたにさちやだ。


「いつの間に仲良くなったんだよ」

「そりゃあ、この前ちょっとノートを貸したことが原因ね」

「それで、勉強教えることになったんだよねー」

「そうそう」

「ずりいな。俺にも教えてくれよ」

「えー、幸也に―? なんかちょっとやだ」


(あ、どうしよ)


 竜輝は固まった。あまりにも人が多い。

 この状況で話に加わる度胸が竜輝にあるか、否だ。

 それに先ほど、リサは、幸也と下の名前呼びしてた。


 まだ自分は立花君としか言われてないのだ。

 そう思うと、少しだけ悲しくなる。

 でもそうだ。


 彼女は陽キャだ。自分の(というのはおこがましいが)になったわけじゃない。


「ねえ、立花君」


 竜輝は突然そう言われ、軽くたじろぐ。


「話に加わろうよ。友達を作るチャンスだよ」


 急にそう言われてもどうすれば。自分は所詮陰の者。

 竜輝は将棋の代わりにコミュニケ―ジョン能力を失ったのだ。

 目を見開き、分かりやすく固まる竜輝。

 

「お、竜王さんか」


 竜王さんかと言われても、どうしたら。


「将棋できるんだっけ? 著名人じゃん」


 そう言う桐谷幸也にどう返したらいいのか分からず「えっと……」とたじろぐ。


「はは、やっぱり面白いな。竜王さん」

「ええ、面白いってどういう事よー」


 そう言って笑う御影遥。

 その時点で理解した。この人たちは住む世界が違うんだと。


 それに気づくと、すぐに竜輝は「トイレ」と言ってその場を逃げ出した。

 もう無理だ、コミュ障、会話。何も分からない。とりあえずここから逃げ出したい。


「はあ」


 竜輝はトイレで用を足した。しかも大の方で。

 とは言っても大便などない。


 出るのはせいぜいおならと少しのおしっこだけだ。

 ただ、避難しているだけ。あの場を脱したかっただけだ。


 そんな時スマホから大きな通知音が鳴った。

 竜輝はそれを受け、びっくりとした。

 彼には普段通知など来ない。

 だって、来るような相手がいないのだから。

 ふとスマホを見ると、リサからだった。


『大丈夫? ごめんね、いきなり早すぎたよね』


 そのような内容が書いてあった。


(なんで謝るんだよ。……悪いのは全部僕なのに)


 リサはただ、気を使ってくれただけだ。

 竜輝はそれを生かせなかった。完全に自分が悪い。


「はあ、どうしたらいいんだよ」


 トイレを理由で抜け出したはいいけど、きっと教室では自分のせいで空気が悪くなっている。

 そこに戻る勇気は竜輝にはない。

 腕に着けてある腕時計を見る。今の時刻は一時一〇分。残り十分で授業が始まってしまう。

 十分後にあそこに戻る? 不可能だ。


 竜輝にとってリサ以外の陽キャは苦手だ。

 距離感をはき違えたように易々と自分のパーソナルスペースに入ってくる。

 しかもほぼ初対面だというのに。


「僕は、やっぱり人とは仲良くできないんだな」


 きっとリサの友達だから悪い人ではないんだろう。

 悪い人とリサが仲良くなるわけがない。

 ただ、好きに慣れない。その事実が辛い。

 それに――


 嫉妬してしまった。自分よりも田島さんに近い人たちが。

 こんな気持ちで教室に戻れるわけがない。


 15分間、トイレにこもった後、

 竜輝は結局早退届を出すことにした。今日はもう教室に戻れる気がしないのだ。


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