第28話 劇
そして、運命の第一回目の劇の話し合いが行われる日がやってきた。
あの後も、粧裕が将棋部の面々に宣伝してくれたと聞いたけれど。
どれくらい集まっているだろうか。
それが、竜輝にとっての、疑問点だ。
そこに二人の将棋部員がいた。
達樹ともう一人は、漆原花林。物静かな少女だ。
それにもう一人。遥もいる。
「遥も来てくれたの?」
リサがそう訊くと、「うん。来るよ」と答える。そして彼女は竜輝の顔をじっと見る。
どうやらまだ、諦め切れていないようだ。
竜輝はそれに対し、軽く息を吐き、
「色々決めましょう」と言った。
竜輝自身最近謎の自信が目覚めてきている。そんな何時がしていた。
なぜだろうか分からない。だけど、最近謎に仕切れるようになった。
それは竜輝にとって非常にありがたい事だった。なぜならば、コミュ障脱却のカギとなるのだから。
「劇どうします?」
「わたしは立花竜輝物語がいいと思うんだけど」
「だからそれは――」
恥ずかしいにもほどがある。それに本人がいるのにそれは劇なのだろうか。
遥が「それ劇じゃないでしょ」と実際に突っ込んだ。それをうけ、竜輝は軽くほっとした。
そして劇選びが難航していくが、このままこれに時間をかけるわけにはいかない。
文化祭までに時間はそこまではないのだ。
「でも、将棋にしたいのは事実ですよね」
そう、粧裕が言うと、皆頷く。
全員将棋を知っているのだ。
「カードゲームのアニメとか見てたら良くありません? カードゲームで雌雄を決する事」
「ある」凛が頷く。「あれ、意味わからないけど」辛辣そうだ。
「だからそれを将棋に置き換えるのはどうでしょうか」
粧裕のその発言に、会場に鮮烈が走った。竜輝にはそんな気がした。
「将棋で強さを決める」
達樹が頷く。
「ありかもしれない」
「それならいいシナリオ思いついた!!」
リサが元気よく言う。
「私、それでシナリオ考えてもいい?」
「お姉ちゃん。いいけど今ある程度固めてくれませんか?」
「なんで?」
「お姉ちゃん、暴走しそう」
その言葉に、リサは軽くうなだれる。
「確かに」遥も頷いた。「リサって、自分の趣味嗜好を全部入れ込むから」
「遥までひどい」
リサは半ば泣き出しそうに、いい、そのまま竜輝に抱き着いた。
竜輝はその背中を優しく撫でる。
だけど、その中で少しドキドキとする気持ちも生じている。
好きな人にいきなり抱き着かれて、ドキドキすらしない人間はこの世にいないと思う。
そう、リサに抱き着かれて。
それはともかく、リサのハグは暖かい。
「お姉ちゃん。イチャイチャしないで、考えよう」
「イチャイチャしてないもん」そう言って頬を膨らませ、「分かったよう」そう言って互いに共有する。
リサが考えていたストーリーというのはこういう物だった。
『将棋王という物が存在する世界。将棋王の息子であった、ラシャは将棋王になるために、鍛錬に励む。だが、そんな中将棋王が破れてしまう。黒マントの男に将棋王が破れてしあむ。
そして、黒マントの男、ウィリアムズ率いる闇の王国が誕生してしまう。
その政策の最初は、市民から将棋を奪うという物だ。将棋という物が最大の娯楽であった町の人にとってそれは最大の悪だ。だけど、ウィリアムズに将棋で勝てる者はいない。
そんな中ラシャは部下に逃がされ、町に降りた。そしてその町の嘆きの声を感じ、許せない気持ちでいっぱいになった。
そして、ラシャは父の敵、ウィリアムズを倒すために戦いに出るのであった』
「まあまあ、面白そうじゃん」
それに対し、遥が言う。
「屋tぅパリ復讐系はいいよね」
「わたしとしては復讐系じゃないんだけど」
リサがそう言うと、遥が笑って「ごめんごめん」と、日田荒丸。
「やっぱり主人公は竜輝君確定!! これは譲れない」
その言葉に竜輝は「ええ……」と言った。
主人公なんて。
「それはリサさんがやればいいんじゃ」
「文句は禁止。竜輝君に決めた者は竜輝君に決めたの。異論は認めないわ」
リサは楽しそうだ。
「でも、立花竜王でいいと思います。この中で一番強いですし」
その言葉に頷く。
しかし、それに異論を離す人物が一人。
「私、主人公やりたい」
凛だ。凛がそう言い放ったのだ。
「どうして?」
「魔王になった兄さんを倒したい」
その言葉に、竜輝は唾をのんだ。
「兄さんはどう思う?」
「僕は何でもいいよ」
「でも、わたしは竜輝君が主人公だと思って書いてたんだけど」
「うーん」
そして会議が迷いに迷ったあと、
結局凛がラスボスで、竜輝が主人公に決まった。
凛の提案は届かなかったのだ。
凛は軽くぐずったが、これがみんなの総意となれば、断る術を持たなかった。
これでいろいろと動き出せそうになる。
そう、竜輝の青春が。




