第25話 文化祭の話し合い
そして続いて文化祭の話し合いが行われた。
ホームルームでだ。
竜輝とリサは緊張した顔も血をしている。
当然だ。今日行われるのは決選投票。つまり今日運命が決すると言っても過言ではない。
今の所の計画としては、今日は将棋カフェ基ボドゲカフェを押すという事だ。
そして、もう一方の劇の方は有志で募集することになっている。
そして、最初に投票が行われる予定だが、まず最初にそれぞれの意見者からさらなる情報を追加するフレーズが入る。
そこでリサは、
「将棋カフェというのでは万人受けしないかなと思いました。なので、将棋を軸にしたボドゲカフェにしたらどうかと思います。例えばチェスや囲碁など、様々な世界のボードゲームを集めたらいいんじゃないでしょうか」
その言葉に場が盛り上がりを見せる。
ちなみに竜輝はただ、黙り込んだ。
今更クラスが劇で固まるとも思えなかった。
それよりかは、有志を集めてその中で劇をした方が確実に現実的と言える。
そう、先日に話したように。
そして決選投票が始まっていく。
その前に竜輝はリサの方を軽く見やる。
それにリサもまた頷いて見せた。
そして――
とりあえずの五個に絞られた。暴け屋敷、ボドゲカフェメイドカフェ、そして遊園地テーマパークと、続いていく。
今現時点で表が一番多いのは、メイドカフェだ。やはりみんなリサや遥のメイド服姿を見たいのだろう。
竜輝もリサのメイド服姿を見たい思いもあるし、リサはメイドカフェに決まったら本当にメイド服を着るだろう。
だけど、それを見たい気持ち以上に、リサの笑顔が見たい。
リサの好きな、リサのしたいボドゲカフェにしたい。
その気持ちがある。
そして、竜輝は手を上げた。
恐る恐るだ。ビビりながらだ。だけど、リサのために。リサがしたい事を出来るために、手を上げ意見を出すのだ。
「何ですか、立花君」
そう、議長が言う。
そしてそれに合わせて、竜輝の方にみんなが向く。
竜輝はそれをうけ、緊張が高まる。
ドクドクドクドク。ドクドクドクドク。
心臓の音が莫大な音量で流れていく。
ああ、手を上げなきゃよかった。なんて思ってしまう。
でも、手を上げない選択肢なんてなかった。
手を上げるべきではなかった、なんて考えるのがもう弱気だ。
変わるしかない。変わるしかないのだ。
そう、もう言うしかない。
「僕が将棋カフェ基ボドゲカフェをしたい理由は、2つあります」
なんだか英語の文章みたいになってしまった。
だけど、このまま言い切るしかない。
「一つは、僕が将棋が好きだからこれで将棋とか、囲碁でもチェスでもいいですけど、魅力を知って欲しいです。そしてもう一つは――」
言い切れ、言い切るしかない。
「これはメイドカフェなんかでも組み合わせられると思います」
「どういう事?」とリサ。
「メイドカフェの格好で接客したらメイドカフェ剣、ボードゲームが出来ますよ」
「それはなんか違うくね?」と、幸也。
「俺は萌え萌えきゅんを求めているんだ。それは分かっているか? 竜王さん!!」
「ええ、っとそう言う訳じゃなくてですね」
このまま自分の考えを言い切れるのか。
それは難しい事だけど。
「僕は、メイドカフェの待機スペースにボドゲを置いたらどうかって思ったんです」
「それはどういう?」
「メイドカフェなんてやったら、人数を捌かなければなりません。だけど、いっぺんに多くを招いたら大変なことになります。それに全員メイドをやりたいわけじゃないでしょう」
竜輝は周りを見る。
恥ずかしいし、今やっていることが本当に正しいのかも分からない。けれど、
「本当はメイドをやりたくないって人手を上げてください」
竜輝は女子たちを見やる。手は上がらないが、少し会場がざわざわとし始める。
「いやよね」
「あまり着たくない」
「えーあたしは来たい」
なんて話が進んでいる。
「それに」竜輝はその打和議を止めるように竜輝が叫ぶ。
「メイドカフェは、客数を絞らなければ、たぶん重労働になります。だからこの形がいいかと」
そう、竜輝は言い切った。
半分、願望込みだ。
それに対する反応はおずおずという形だった。
しかし、
「それはいいかもしんねえ」そう、幸也が言ったしょんかん風向きが変わった。
「メイドやりたい人どれくらいいる? それともメイドやってもいいって人」
そして7人くらいの手が上がった。
「七人に負担が集中するのもいけねえ。確かに休憩時間を入れたら、二人か三人くらいしか一回には接客させられねえ。となれば、実質的な客数制限するのもいいな」
そして、幸也が味方に加わったことで、その案は一気に進んでいくのだった。
「はあ……」
竜輝は静かにため息をつく。
緊張。そう、本当に緊張した。
これが通らなかったらどうしようかと、本気で思った。
だけど、無事に通った。
竜輝は安心した。
「竜輝君、すごいよ!!」
リサは竜輝に向かって抱き着いてきた。
竜輝は小さく、「え」と、こぼす。
「ありがとう!! あのままだったら負けてたよ」
「あ、はい」
意識してしまう。
ドキドキして、興奮が体の底から舞い上がっていく。
ああ、リサの事が好きだ。そう心の底から感じる。
「田島さん、あつ――」
そう言おうと思ったが、今それを言ってしまってはリサの愛を受け入れられない。
暑苦しいのは事実だが、それを言ってリサのハグを止めるのは嫌だ。
何しろ、リサのハグ。正直気持ちがいいのだ。
少しげすいなことを言うと、胸が当たっているのだし。
竜輝は迷った結果、リサのハグを暫く享受しようと考えた。
★
「あれで付き合ってねえのマジかよ」
幸也は呟く。
「だよな」
クラスメイトの、佐伯博が頷く。
「羨ましい」
博がそう言うと、「おい!」と、幸也が言う。
「お前はいいのかよ」
「ん、何がだ?」
「だって」
そう言って博が二人を見る。
「嫌に決まってるだろうが」
その言葉に、博が「だよな、安心した」と頷く。
「だけど、俺にはリサの行動を阻害する権利なんてねえからな」
「そう?」
「ああ、正直な」
幸也はそのまま腕を組む。
「だけど、嬉しい事もある」
「なに?」
「竜王さんがクラスになじんでいってるからな」
そう頷いた。
★
そして、2分間のハグののち、竜輝は解放された。
竜輝はホクホクとした気分になっている。
まだ体にはリサの温もりが残っている。
あそこまでしっかりと背後から抱き着かれるなんて、幸せ過ぎる。
「リサさん」
「なーに?」
「凛たちも将棋カフェをするんでしょうか」
「かもねえ、でもあちらでも苦労しているんじゃない?」
「かも」
そして竜輝は軽く考え込む。
「劇の話もした方がいいかな……」
「それなら私に任せてよ!」リサは胸を張る。
「それに、竜輝君の体力はもうゼロでしょ」
「はい、ゼロに近いです」そう言って竜輝は苦笑する。
何しろ今までもかなり精神を使いながら必死で発言をした。発言自体が、勇気のいる事だし、発言内容もかなり神経を使いながら発言していた。疲れないはずがない。
その後はリサが劇の話を皆にした。一緒に劇を作らないかという物だ。
そこまでh何強がなかった。
という事は竜輝が発表してたら心が折れていただろうと思い、少し微笑した。
そして――
文化祭の話が終わった。
★
放課後リサの家に行った。そこで竜輝はいつもの如く、凛と将棋を指す。
凛はいつの間にかいたのだ。
もう、凛と粧裕がすっかりと仲良くなっていることに歓喜を覚えつつ、今日話し合わなきゃならないことがある。
「ねえ、凛」
竜輝は口を開く。
「二人のクラスでは出し物はどうなったの?」
「将棋カフェになった」
凛が淡々とそう言うと、竜輝は「そうなのか」と、少し安堵の表情を醸し出しながら言った。
「遊びに行くね」
リサが言うと、「うん、歓迎する」と、粧裕が答える。
さて、ここで話すべきことは、
「劇の件、どうですか」
竜輝がそう口を開けた。
「うーん、あまり賛同者はいなかったけど。明日将棋部で話そうと思ってる」
そう、粧裕が言う。
「凛ちゃんと、立花さんがいてくれたらいろいろ誘えそうですし」
「そうですか」
そう言えば将棋部はどんな人たちがいるのだろう。そう、疑問に思った。だけど、そこはぐいぐいと訊いていいのだろうか、と思った。
今日は何となく勇気が出る日だ。
だけど、これを訊くのはその中でも更に勇気のいる者だ。
「竜輝君、どうしたの?」
リサが聞く。その言葉に、竜輝は「ええ、と」と続け、
「将棋部にはどんな人がいるのかな、と」
竜輝は恐る恐るそう告げる。と、
「どんな人なんだろうね。そう言えば竜輝君そんなこと言ってなかった?」
「そんな事……?」
「竜輝君、将棋部に教えに行くとか」
「ああ……」
そんな事を言っていた気がする。
「確かに将棋部にお邪魔しても面白そうですね」
「え?来てくれるの?」粧裕がぐいぐいと迫ってくる。
「ええ」竜輝は軽く身を引きながら返事を返すと、
「ありがとう」と言って、粧裕は頭を下げた。
「凛は行ったことあるの」
「ないわ」
凛がそう答える。その言葉に軽く頬付きを突きながら、
「兄さんと一緒なら言ってもいいかも」
「そう」
「凛、ありがとう」
そう、竜輝が言うと、凛が笑顔になった。




