第24話 告白
「はあ」
また竜輝はため息をつく。
もはや訳が分からない。
もしやまさかこんなことでリサとの関係が壊れてしまうのだろうか。
それだけは嫌だ。
リサの事が好きな竜輝がこんなことを考えてしまうのは絶対に違う。
ただ、分かるのは恋愛は面倒くさいという事だ。
ああ面倒くさい。
一人の人が一人にしか恋愛できない。
そんな仕組みが面倒くさい。
不倫だとか浮気だとかそう言うのを認めているとか、そう言う事ではない。
ただただ、面倒くさいのだ。
とりあえず気持ちを伝えるまでの事はしない。だけど、今の自分の遥に対する気持ちを伝えなければ。
そして竜輝は遥の所に言った。
「あの、遥さん」
竜輝は遥のもとに行った。
「遥さんは、その」
「なに?」
こちらを真っ直ぐに見る遥。
その視線に軽くたじろぎながらも、竜輝は言葉を発する。
「遥さんは、僕の事が、その」
「なに?」
「好きなんですか?」
竜輝は勢いよく言った。
それに対し、遥は目をぱちくりとさせる。そして、
「あは、訊いちゃうんだね」
そう言って微笑した後、
「好きだよ」
そう告げた。その言葉に竜輝は軽くびくっとする。
「将棋棋士として、じゃなくね」
その言葉に竜輝は軽く唾を飲み込む。
そうか、本当に。
竜輝は非常な言葉を告げなければならない。人の心を壊すかもしれない言葉だ。
怖いけれど、言うしかない。言わなければそれはただの卑怯者だ。意気地なしだ。
「僕は遥さんの気持ちには答えられません」
竜輝は静かにそう告げた。
そして竜輝は遥のその顔をじっと見る。すると彼女はただ、笑って見せた。
「な、何ですか?」
「分かってたから」
「分かってた?」
「リサの事が好きなんだろうなあって」
その言葉に竜輝は軽くした唇を噛む。
「あ、私の事に対しては気にしなくてもいいよ。こうなるって分かってたのに告白しちゃったただの愚か者だから」
「そんなこと言わないでくださいよ」
竜輝は、遥の自嘲を止める。
「そんなこと言わないでください。僕は気持ちには答えられませんでも、僕は遥さんの事も立派な人間だと思っています」
「本当にそう思ってくれてる?」
「はい」
その言葉に、「ありがとうね」と、遥が小さな声で言う。
「なんで僕の事を好きになったんですか」
「将棋からよ」
「将棋から」
竜輝は反芻するように呟く。
「うん。私元から将棋には興味があって趣味程度で指してたの。それはリサにも幸也にも言ってなかったんだけどね」
「はい……」
「だからクラスに、竜輝君が来た時に私の心は高鳴ったの。最初は見てるだけで良かった。でも、リサとの距離が迫った時にこれはやばって思ったの」
「なるほどです」
たしかにそれは頷ける。
勿論彼女の好意には気づいては気づいてはいなかった。いなかったけれど。
「僕は遥さんが魅力がない女性だと思いませんし、むしろ魅力はあると思います」
「だけど、気持ちに応えてくれないのは……」
「そう言う事です……」
リサの事が好きだから。
「僕はずっと好きでしたから」
竜輝はそう言って去っていく。
その後姿を遥はただ見るしかなかった。
「リサさん」
竜輝は話しかける。
「なに?」
少しいやそうな顔をしたリサが出迎える。
だけど、演技が上手くできていないのが、目に見えて明らかだった。
「御影さんの事振ってきました」
竜輝がそう言うと、リサが「はあ?」と言った。
リサらしくないリアクションだ。竜輝は軽く新たなリサの一面を見れたことに感謝しつつ、
竜輝はリサの顔をじっと見る。
「だって遥よ。人気のある女子だし、付き合った方がいいんじゃないの」
「僕はあまり損得勘定で動きたくありません」
そう、竜輝が告げると、「ごめんね」と、リサが謝る。
「あまり口出しする気ではなかったんだけどさ、もったいないなって」
「御影さんは確かに可愛いですし、いい人だけど、違うんです」
「何が違うの?」
「それで、田島さんと気まずく気まずい関係になりたくないんです」
それはほかでもない竜輝の本心だ。そう、嘘偽りなどどこにもない。
「僕は田島さんと関係が悪くなるなら、恋愛しないです」
「そんなに、私と一緒にいたいの?」
「はい、田島さんはもう僕の中で親友ですから」
少し言い過ぎたかなと、竜輝は不安で頭をポリポリとかく。
「遥の事は本当に良かったの?」
「いいんですよ」
「わたしと友達でいるよりも、遥の彼氏になった方がいいよ」
その言葉を聞くと、異性として見られてないように思えて悲しくなる。
でも、
「親友でいたいんです。田島さんの」
「わたしよりも人気があるのに? あの子結構告白されてるよ」
「そんなことどうでもいいんです」
思わず叫んでしまった。
このタイミングで告白出来たらどれだけいい事か。
でも、その勇気は今はないし、告白するのは今じゃない。
「僕は田島さんと一緒に居たいんですから」
「ありがとう。その竜輝君の気持ち受け取ります。……これからは親友だね」
「っはい」
竜輝とリサは固い握手を結ぶ。その中で、竜輝は照れくさくなった。
「それならさ」リサが悪戯な笑みを浮かべる。「そろそろ私の事を名前で呼んでいいんじゃない?」
「名前で、ですか」
これは所謂から質問それは分かっている。だけど、訊かずにはいられない。
「うん、そう」
元気よく言うリサの顔を見る。
それを見るにどうやら逃れられないらしい。
「リサ、さん」
そう竜輝が言うと、リサは「うん、そうだよ!!」と言って竜輝に抱き着いてくる。
(これ、勘違い、させようと死に来てませんか?)
竜輝は心の中で、そう叫ぶ。
そう、もうこんなの、ドキドキさせに来ていないとしたら明らかにおかしい。
(まるで小悪魔……)
もはや小悪魔かサキュバスのようにしか思えない。
だけど、今取りあえず言えるのは、遥の告白を断ってよかったなという事だった。




