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竜王の学園生活  作者: 有原優


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第21話 指導対局


 家に帰るとすぐにリサの家に行った。勿論将棋を教えるためだ。

 学校で遥に将棋を教え、リサにも将棋を教える。中々の重労働になっている。そんな感じがした。


 今日は寂しがらせないために、リサの家に行くと、前もって伝えた。

 すると家に帰ると既に、凛はお邪魔していた。そして粧裕に将棋を教えていた。


 凛は楽しそうに将棋を教えているその光景を見ると、竜輝もほっこりとする。


「兄さん」


 凛が抱き着いてくる。


(最近スキンシップが激しい気がする)


 竜輝は戸惑いながらもそのハグに返す。


(僕が男ってこと分かってるのかな)


 子能も一緒にお風呂に入ろうだなんて言っていたし、女親戚くらいの感じで言っているのだろう。


 とは言っても竜輝にとっては、ただの親戚ではない。

 彼女の父を殺したようなものなのだ。

 それに、異性だし。そんなスキンシップをしていいような関係ではないというのに。


「凛」


 竜輝は静かに言葉を発する。


「駄目だよこんなこと」


 しかも、リサや粧裕がいる空間だ。二人でこんなことをしてはいけない。そう、竜輝は思う。


「兄さんのけち」

「何がケチなんだ」


 竜輝は、ため息をつきながら、凛の頭をポンっと叩く。


「意味が分からないよ」


 そして、イスに座った。



 ★



「今日は、竜輝君がわたしに将棋を教えてくれる約束なんだけど」

「兄さんに将棋を教わる」


 凛は反芻するように言葉にした。


「ずるい」

「何がずるいんだ」

「わたしと将棋、指して」

「二人一気には無理だ」


 そう、竜輝が言うと、凛が頬を膨らませる。


「どうなってるんだ」


 竜輝はそう、シンプルに自身の持つ疑問を呈した。



 そしてリサに将棋を教える。

 リサにはこの前の訪問時に軽いルールだけは教えた。勉強を教えてもらう空き時間だ。

 だけど、そこまでの長い時間は教えてなかった。

 そう言う意味では、今日が実質初めてと言えよう。

 なにしろ、今日は勉強を教えてもらう予定はない。つまり将棋だけに精魂を込められるという事だ。


 将棋盤を前に、竜輝は軽く精神統一をする。


「田島さん」


 竜輝はそう口にする。


「よろしくお願いします」


 そう、頭を下げる。するとそれに合わせて「お願いします先生」と言った。


 その、先生という言葉に少しだけ高揚感を感じる。先生と言われるのは何にしろ嬉しい事なのだ。

 竜輝は早速軽く駒を動かす。

 今回は8枚落ち。

 玉と金を残して他の駒は全て落としている。


 勿論玉以外を落とす最高のハンデ19枚落ちでもよかったのだが、正直教えるなら8枚落ちがベストだと判断したのだ。



 実際八枚落ちでも十分なハンデだ。先程遥に対して6枚落ちで屋tぅたが、それからさらに二枚落としている。

 それを考えれば、中々厳しい戦いになるだろう。


 遥との時や、粧裕との時は指導は終わってからにしたが、今回は対局中に教えようと思う。

 勝ち方を覚えてもらって最後にリサに自信の玉をつましてもらえば最高だ。


 先手として金を動かし、バランスよく陣形を整えるが、完璧には整えられない。


 そして、対局中に、竜輝は小さくガッツポーズをする。


 しっかりと、リサに教えられているという高揚感だ。

 好きな人相手だとどうなるのかは分からなかった。

 だけど、上手く行っている。

 さらに、


「なるほど」「そうさすのね」「確かに」「勉強になります」などと相槌を打ちながら竜輝の事を師とあえぐリサの姿。それもまた可愛い物だ。


 竜輝の心は段々と紅潮していく。

 だけど、それを悟られてはいけない。


 そして対局が終わると、「ふう」と竜輝は息を吐いた。

 なんとかドキドキしながらだったけれどリサに勝たせることが出来た。

この時点で指導対局としては成功の粋に入るだろう。



 その後はお楽しみ(?)雑談タイムだ。


「田島さんって、遥さんとは結構長いんですよね」


 竜輝がふと訊く。

 そう言えばリサは遥が将棋が出来る事を知らなかった。

 友達ならば、知っていてもおかしくはないはずなのに。


「うん、10年くらいは一緒にいるかな」

「そんなに……」


 10年ともなれば、かなりの年月だ。

 リサが今17だから逆算して、7歳の時からだ。

 そう考えると、親友中の親友だ。


「ちなみに幸也は高校に入ってからだね」

「そうなんですか」


 という事は、親友度では遥の方が上。単純に年数で表してもいいのかは分からないのだけど。


 まて、と竜輝は思う。その理論では自分が一番リサと仲が良くないという事になる。

 自分で腹が立ち、自分でムカついた。

 そんな自分に軽く嫌気がさし、一人で、軽く自分の腕をつかむ。


「どうしたの?」

「何でもない」


 竜輝はそう返した、


「でも、遥ってなんで竜輝君に話しかけたんだろ」

「え?」


 どういう事だろうか。


「だってさ、私じゃなくて、竜輝君に将棋の事を教わったんだろ」

「もしかして嫉妬してます?」

「え?」

「あ、ごめんなさい」


 勘違いだったようだ。


「嫉妬はしてるかもね。私将棋の事知らなかったし。だから今日竜輝君を家に誘ったのかもしれないし」

「自覚はあるんですか?」

「うん」


 リサは頷く。


「竜輝君を取られている気がして、少しいやだった」


(田島さん!?)


 竜輝は心の中で叫ぶ。


 それは嫉妬しているという事でいいのだろうか。


「僕は、田島さんが一番の親友ですよ」



「田島さんがそう思ってくれてるならですけど」

「私は友達全員大事だからなあ」


 その言葉に、竜輝は軽く「え?」とこぼす。


「竜輝君も嫉妬してるの?」

「っ軽くですけど」


 嫉妬と言っていいのなら、嫉妬はもちろんの事している。

 そもそも最初にリサが幸也や遥の事を呼び捨てにしてたこと。そして、リサとずっと長く一緒にいたこと。幼馴染であるという事。


 どれだけ仲良くなったとしても、昔のリサの事は知らない。既にすぎさっえつぃ待った過去は取り戻すことは出来ない。

 今からの未来の思いでしか作れない。


「それにしても、なんで遥は将棋をするようになったんだろ」


 リサは、うつろな目で彼方を見る。


「将棋なんて興味がないような感じなのに」

「さあ、でも結構強かったですよ」


 将棋を初めて一月とかではあんな実力は出せない。

 少なくとも、竜輝とリサが仲良くなる前から、将棋を指していたのは目に見えて撮れる。

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