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竜王の学園生活  作者: 有原優


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第16話 文化祭の話し合い

「えー今日は文化祭準備について軽く共有しておきたいと思います」


 そう、ホームルーム中に先生が言った。


 文化祭。青春イベントの一つだ、余談だが、竜輝は文化祭なるイベントには人生でほとんど参加したことがない。大体色々な対局に阻まれたりして参加できていない。


 それも、プロになって以来だが、二年連続で参加は出来ていない。


 しかし、今年は、違う。参加出来るのだ。

 そこが大きなところ。


 今年こそは今まで我慢してきた学園行事を行えるのだ。


 本格的に話し合うのはまだまだこれからだ。そう、五時間目に行われる。しかし、もう既に楽しみである。

 きっと楽しい話し合いになるだろう。


「わくわくしてるの?」


 そんな竜輝に対して、リサが話しかけた。


「うん」


 竜輝はそう頷く。楽しみで仕方がない。それが今の状況だ。


「五限目から楽しみでたまらないです」

「文化祭準備から?」


 竜輝は頷く。


「そっか、何の出し物がいい?」

「え?」


 その言葉に、驚く。


「ほら、意思疎通って必要でしょ」


 確かにそうだ。


「あんがい将棋喫茶って言うのもありじゃない? 私あまりルール分からないけど」

「それいいじゃねえか。天才棋士様がいるからな」


 そこに入ってきたのは幸也だ。


「まあ、そうだけど」

「お、天才棋士っていう事は認めるんだな」

「え、えっと」


 竜輝はしどろもどろに答える。その表情を見て、リサはふふっと笑った。


「でもまじめに考えると何でしょうか」


 この前は逃げた。今回は立ち向かわなくては。


「そうだなあ、何があるんだろうな」


 友達は考える。その表情を見て、竜輝は少し緊張する。

 自分は上手く会話が出来ているのだろうか。


「メイドカフェとか」

「それ、欲望が入っちゃってるから」


 そのリサの言葉を聞いて、「そうだな」と幸也は言って笑う。


「でも、リサのメイド服姿は見てえよな、なあ、天才棋士様」

「そう言うコミュニケーションが苦手だって言ったの忘れたの?」


 リサが幸也をじっと睨むと、冗談じゃねえかと、友達が慌てふためく。


 その二人を見て、また竜輝は不安になってしまう。


「大丈夫よ。竜輝君には素質があるから」


 素質って何の?とふと訊きたくなった。

 だけど、それを本人に言う訳にはいかない。


 だけど、状況から考えて、コミュニケーションに対しての事だろう。


「リサさん、リサさんはなにがいいですか?」

「え、なにかなあ」


 そう言ってリサはうーんと考え出す。


「そうねえ、執事カフェ」

「それ俺と同じじゃねえか」幸也が突っ込みを入れると、「冗談冗談」と、リサは慌てて手を振る。


「本音を言うとね、やりたい出し物は、将棋喫茶かな」

「結局それなんですか」

「そう、だって将棋を広めたいもん」

「そう言うものなんですか」


 リサは将棋のルール知らないんじゃ、なんてことはもう言わない。


「それで、竜輝君は何なの?」

「え、えっと」


 竜輝は再び考え込む。


「お化け屋敷とか?」

「恒例のね」


 リサはそう言って笑った。


「おいおい、そこは将棋カフェじゃないのか」

「あなたじゃ黙ってなさい」


 そう言ってリサは幸也の頭を叩いた。

 それを見て、少しだけ羨ましくなる。

 こんな、陽キャみたいな絡み方をしている二人に対して、


「騒がしくてごめんね」

「ううん、大丈夫」


 その時に、リサが携帯を開く。


「ねえ、竜輝君」


 リサが叫ぶ、


「これ、どういう事?」

「これとは?」


 そこに書かれていたのは、『あの凛さんが、わたしのクラスに転校してきたんだけど』という物だった。


「凛はリサさんの妹と同じクラスに転校したのか」

「そうみたい」

「幸せそうですね」

「うん」

「何話してんだ?」


 そう、幸也が入ってきたところで、チャイムが鳴った。


「あ、」と言って幸也はそのまま席に戻る。


 こうして騒がしい休み時間は終わりを迎えた。


 そして、しばらく時間がたち、五限目となった。いよいよ発表される。話し合いのスタートだ、

 正直緊張している。

 久しぶりの文化祭。その始まりの話し合いだ。


 竜輝は手を久の上に置いて、緊張した顔も血だ。

 それこそ、今からテストで儲けるのだろうかと、思えるような格好だ。


 リサは、そんな竜輝を見て、スマホを取り出す。そして『大丈夫?』と送った。


 竜輝は自分の机の中に置いてあるスマホが光ったのを見て、机の中を覗く。

 するとそこには『大丈夫?』と着ていた。

 竜輝はそれを見て、リサの顔を見た。


 リサがにっこりと笑いかける。そして竜輝はスマホを触り、『大丈夫です』と送った。

 大丈夫ではないのは謎の緊張感だ。しかし、それは何とか抑えられるレベルにある。


 そして、ホームルームが始まる。

 文化委員が『何がいいですか?』と訊く。

 それに合わせて多くの人達が手を上げた。

 そしてどんどんと意見が出て来る。それを見て竜輝はおろおろとする。


(僕も手を上げるべきだろうか)


 迷いが生じる。いつ上げたらいいのかも分からない。そもそも自分の意見など一蹴されるのではないだろうか。

 そんな時に、一人の女生徒が「お化け屋敷やりたい」と行ったことで、竜輝の手を上げるチャンスは無くなった。


(ど、どうしよう)


 何らかの形で、文化祭の話し合いに参加したい。

 考えたい。幽霊屋敷の他にやりたいことは。

 そもそも、文化祭って何が主流なんだろう。


 訳が分からなくなる。

 だけど、一つだけ思いついたものはある。

 将棋カフェではない。

 ただ、


「はい」


 竜輝は手を上げた。

 それを見て、リサは目を見開く。そしてわくわくしながら頬杖を突き、竜輝の顔をじっと見る。


(田島さんが見ている)


 それだけで緊張する。度盛らずに言わなければ。そして竜輝は言葉を発す。


「僕は、劇がしたいです」


 その言葉にみんなが竜輝の顔を見る。

 竜輝は緊張する。だけど、言い切った。


 その後、劇について少し説明があった。竜輝は緊張をしながら聞いていたので、あまりその内容自体は覚えていないが、それに夜と劇は練習時間を長く撮らなければならないから、それに反対する人にとっては難しいだろうという話だ。


 それを聞いて、竜輝は一瞬間違えたかな、と思った。何しろ、竜輝自身は多忙の身。それに緊張しがちだ。


 息を吸った。


 そして席に戻り行く末を待った。



「はい」


 そして、リサも手を上げた。


「わたし、将棋カフェがしたいです」


 そのリサの発言は場に緊張感をもたらす。


「将棋カフェね」

「もしかして、立花君がいるから?」

「確かに立花君と仲いいもんね」

「立花竜王がいるからか」


 注目が集まり、竜輝は気恥ずかしくなった。


 竜輝は別に、褒められるために将棋をやっているわけではない。

 自分の代わりに死んでしまった叔父の代わりに将棋界を盛り上げるという目的でやっている部分もあるが、その根底にあるのはあくまでも、将棋が好きだという気持ちだ。


 田島さんはきっと良かれと思って提案してくれたのだろう。しかし、竜輝にとっては、残念ながらそれははた迷惑という結果になってしまう。


「僕の事は関係ないよ」迷い、そして竜輝は静かに発した。


「でも、将棋が面白いのはそうだけど」


 そう、頬をポリポリとかきながら言った。


 そして結果として決議は後日行われることとなった。しかし今の状況として、一番最有力なのは、お化け屋敷だそうだとなれば定石として、仲間を探すという事になるのだが。



「お願いします」


 リサが手を合わせて来る。


「なんで……」


 竜輝は戸惑う。


「竜輝君しかいないの」


 そう言われても、



「僕があげたのは一応劇なんですけど」

「そうだった」


 思い出したかのように言うリサに対して、


「そうだった、じゃないですよ」


 と、軽く呆れがちに言った竜輝。


「うーんじゃあ、共同戦線を組まない?」

「え?」


 意味が分からない。竜輝は目をぱちくりとさせる。


「劇と将棋カフェは両立できるでしょ?」


 カフェは室内展示。劇は体育館展示だ。だから、両立できる。その分ハードになるのだが。


「いえ、でも劇は厳しいから」


 思えば竜輝には練習できる時間が限られている。


「大丈夫。私がついてるから!」


 そう言ってリサは胸を張る。


「それに竜輝君の文化祭を楽しい物にしてあげたいしね」

「まあ、それは」


 それはそうだ。楽しい物になって欲しい。


「じゃあ善は急げだ。放課後勉強会がてら一緒に相談しよ!」



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