第十五話 登校
竜輝は、目を開く。そして隣の布団を見る。
布団は奇麗にたたまれている。
どうやら凛は竜輝よりも先に起きたようだ。
そして竜輝は自身の瞼をこする。
眠気は少し残っている。
そして。軽く二度寝をした後、二度目のアラームで今度こそ起き上がる。
洗面所に行くと、
「兄さんおはよう」
そう、パジャマ姿の凛が歯を磨いていた。
胸元は少し開いており、胸の谷間が軽く見える様相になっており、竜輝にとって少し、刺激が強い格好だ。
また、髪の毛もまだ整えていないからか、寝癖がすごい。髪の毛が軽く跳ねている。まるで山村元四冠みたいな跳ね方をしている。
いつもきちんとしている完璧超人の生の姿を見るのはまた変な感じがした。
竜輝は慌てて首を振った。
共同生活をする以上、異性として見てはいけないのだ。
竜輝は息を軽く吐くと、
「凛もおはよう」
そう語りかけた。
そして、竜輝は自分の歯ブラシを手に取ろうとする。しかし、軽く見た所、歯ブラシが見当たらない。
「あれ?」
竜輝は疑問に感じる。
なぜ、自分の歯ブラシがないのだろうか。
「凛。僕の歯ブラシ知らない?」
「あ」凛が口を開く。そこには竜輝の歯ブラシがあった。
「まさか、凛」
「ごめんなさい、間違えた」
「間違えた?」
「うん。どうぞ」
凛から歯ブラシを受け取る。竜輝は暫くその歯ブラシを目にした後、
水で洗い流した。まさか凛が間違って使うなんて。
あとで、歯ブラシに名前を書いておかなければ。
「次からきをつけてよ」
「ん、分かってる」
本当に分かっているのだろうか。
そんな不安を抱えながら、竜輝は自分の歯ブラシで歯を磨いた。
凛の髪の毛はぐしゃぐしゃでいつもとは違うだらしなさがあった。
竜輝はマンションから出る。そこにはリサの姿があった。
「田島さん、おはよう」
竜輝が話しかけると、「おはよう」と、元気のいい返事があった。
竜輝は少し安心した。リサの姿を目にすることによって不思議と安心が出来た。
その時マンションのドアが開いた。
そこには凛の姿だ。
凛とリサは互いに顔を見合わせる。
そして、時間にしてほんの二秒ほどの静寂を打ち破るように、
「昨日から、竜輝君と一緒に生活している凛です。よろしく」
そう、手を差し出した。
「え?」
当然ながら、リサは凛の顔を真っ直ぐに見る。
「どういう事?」
「竜輝君の友達、だよね」
「ええ」
「どういう事?」
その一連の会話で、リサが混乱していることは誰の目にも明らかだった。それに何故かリサに対して反発的な凛。
竜輝は慌てて、凛の前に出る。
「田島さん、ごめん。この子は、僕の研究会仲間なんだ」
「研究会仲間?」
「それと、竜輝君のいとこ」
そう、凛はドヤっとしながら言う。
「そんなドやることある?」
「うん、あるよ」
凛はあくまでもクールにそう言い放った、
「兄さん、行きましょ」
そう言って腕をつかむ凛。
それに竜輝があたふたしていると、
「私もしかして邪魔だった?」
そうリサがいう物だから大変だ。
(僕はどうしたらいいんだ)
竜輝は困る。
凛は一体どうしちゃったんだ。
なぜこんなにも田島さんに対して藩閥しているんだ。
僕は二人のいざこざを止めなくてはならない。
だけど、竜輝の体は上手い事動かなかった。
その結果、三人で、登校するようになった。
気まずい空間で、竜輝が真ん中で歩いている。
気まずすぎて、この場から離れたいところだ。
それか早く学校についてほしい。
リサが出てくるタイミングが、もう少し遅かったら、否早かったら。
そう、祈ってしまうが、そんなもの叶う訳もない。
竜輝はまたため息をつく。
そして学校の近く、凛は別の道を歩きがtぅ港に行く。
「ごめんね。僕のいとこが」
「うん。大丈夫だよ」
そう言ってリサは不器用に笑う。
「それで彼女は?」
「凛。僕の妹弟子だよ」
「妹弟子。それってもしかして」
「何か知ってるの?」
竜輝が問う。すると、「粧裕の好きな棋士の一人!!」
そう言い放った。
基本的に、女性は女流棋界に所属する。
そして、女流棋士と、奨励会騎士は兼任することができる。そのため、基本的に女流棋士として主にやりながら、ひそかにプロ棋士になることを目指す物だが、凛は違う。女流棋士にはならずに、一人男性がひしめく奨励会に入っているのだ。
「だから粧裕が尊敬しているらしいのよ」
「そうなんですか」
竜輝が感心すると、凛が首を突っ込み、「わたしは凄いのよ」そう、ドヤっとする。
今日は幾度もドヤ顔をしている。それを見て竜輝は軽く笑みを浮かべる。
「凛も有名ですからね」
「それを言ったら竜輝君の方がじゃない」
「まあそうですけど」
確かに、結局知名度では竜輝が勝つ。
だけど、そう言う話ではない。
「でも凛は、多分もうすぐもうすぐプロ棋士になりますよ」
そう言い放つ。
「あの子は、才能の原石ですから」
「竜輝君とどっちが強いの?」
「流石に僕ですけど、食らいついてきますよ。たぶん、下手なプロよりも強いと思います」
「そうなんだ……」
リサは、竜輝のその言葉を聞き、一歩前に出る。凛は先ほどからずっと竜輝の言葉に頷いている。
「今度粧裕の元にも連れてきてくれない?」
「そうですね。機会があれば」
機会があれば連れていきたい。そしてあの感じだと、竜輝と凛の夢の共演に胸がはち切れるだろう。
あの子の前で公開対局をやってあげてもいい。
そして粧裕が楽しめば、リサも楽しむ。リサの笑顔が見れる。リサに自分のいいところを見せられる。
それこそが、竜輝の楽しみの一つなのだから。
「でも、あの子……」
「どうしました?」
「ううん、何でもない」
リサは首を振った。それを見て、竜輝は「何だったんですか」と言って小さなため息をついた。




