第14話 夜
食事が終わった後、
「兄さん、お風呂に入ってきていい?」
と、凛が聞いた。
竜輝はそれに対し、「いいよ」と答えた。
凛はそれを聞いて、お風呂場へと向かっていく。
「兄さん」
そして呼びかける声がする。
「一緒に入る?」
「入るわけないでしょ」
瞬時に竜輝が突っ込んだのを聞いて、「冗談」と言ってそのまま消え去る。
お風呂はまだ焚いていないが、恐らくはニ十分程度で分けるだろう。
竜輝は、座り、詰め将棋の本を手に取る。
凛は何も悪くはないが、そろそろリサに会いたくなってくる。今日は日曜日。リサに会えるのは、明日からだ。
そして、シャワーを浴びる音がする。
お風呂が炊けるまでの間、シャワーを浴びるという事だ。
もしや、今のこの間にもシャワーを浴びている。つまり今凛は裸。
そんな事を考え出すとドキドキしだす。
だめだ。これではだめだ。従兄妹には欲情したらいけない。
竜輝は静かに深呼吸をし、将棋を指す。
オンライン将棋だ。
とは言っても、オンライン将棋は相手が弱い。
一応匿名だが、あまりにも上手く差し過ぎると、だめだ。とはいえ切れ負け三分だから、適当にやったらそれなりの将棋にはなる。
だが、竜輝の今の不純な気持ちを消し去るには十分だ。
結果は3勝2敗。トップ棋士としてアマチュアに対してその成績ではだめだが、別に竜輝はまじめにやっているわけではない。
それで、三勝も出来たのだから十分だろう。
「上がったよ」
凛はパジャマ姿で上がってきた。髪の毛はしっかりとしとりと濡れており、はた目から見て叡智だ。
「なに、見てるの」
「何でもない」
竜輝は首を振った。
「ふーん」そう、凛はジト目で見る。
「お風呂に入ってくる」
竜輝が言う。
正直、今日から心臓が持つのかは分からない。
だけど、お風呂だけは安寧の場所だ。何しろ、凛に惑わされずに済む。
お風呂の水を手に救う。
それだけで、少しほっとする。
だけど同時に、凛が触った水であるという事実にも直面する。
リサ一筋のはずなのに、なぜ、従妹に心をドキドキとさせられているんだ。
正直、訳が分からない。
そして、お気に入りの歌を歌う。気を紛らわせようという狙いだ。
正直成功しているかは分からないが、また少し楽になる。
その後はひたすらにお風呂で温まるのであった。
「上がったよ」
竜輝は髪の毛を完全に乾かし、そしてタオルで吹き斬った。
そんな竜輝に対し、凛は抱き着きに来る。
竜輝はその頭を優しく撫でる。
その髪の毛にはまた水気が残っている。
竜輝の心はまだ惑う。
一緒に女子と暮らすことになるだけでここまでハードモードになるのだろうか。
今からでも別の住まいを探させるか。
それだと、竜輝がドキドキしてしまっていることがばれてしまう。
竜輝は軽く首を振り、
「どこに寝るの?」
そう訊いた。
その言葉に、凛は「私、兄さんの隣で寝かせてもらう。布団持ってきたから」
「そう、って、え?」
「兄さんの隣、いいでしょ」
「え、でも」
「別の部屋だと冷房代がもったいないから」
「確かに……」
そうはいったものの、やはりドキドキするのは変わらない。
竜輝はその日の夜。どきどきしながら過ごした。




