第13話 凛の料理
そして、また一週間後、竜輝の家に凛が来た。
ドアを開けると、
「今日はよろしくお願いします」
そう、頭を下げる凛。
彼女は、可憐なスカートとニット帽をかぶり家にやってきた。
その長い髪の毛はも三つ編みでくくっている。
可愛らしい姿だ。
今日はあいさつの日だから、親しき中にも礼儀ありという事で最大限のおしゃれをしてきたのだろうか。
その心意気に感謝をしながら、
「いらっしゃい」
と言った。
そして、ドアを開けると、
「お邪魔します」と言って凛が仲へと入っていく。
凛は中を見ながら「ここが兄さんの家」と呟く。
そう言えば凛をこの家に上げたことはほとんどない。
しかも、前あげた時は、まだ高校に入る前で引っ越す前だった。
「私、楽しみにしてたの」
凛が言った。
「楽しみに?」
どういう事?と、竜輝が続ける。
「私、兄さんと一緒に暮らしたかったの」
「まさか僕と住むために転校したんじゃ……」
そう、竜輝が口に出すと、
「それは違う」と凛が否定する。
「私が転校したのは人間関係のせい」
「そうだったね」
余計なことを訊いてしまったのだろうか、竜輝は自省する。
「それよりも兄さん、将棋が指したい」
「いきなり?」
「うん」
凛が頷く。
「毎日兄さんと将棋の対局がしたい」
「そこまで……」
熱意がすごい。
「毎日詰め将棋と棋譜並べだけだったから」
「オンライン将棋は」
「あれはだめ、相手が弱い」
「まあ確かに」
竜輝と平手でもある程度勝負になる凛相手に弱すぎるのだろう。
凛がオンライン将棋で戦うという事は所謂役不足という物なのだろう。
「だから、毎日兄さんと刺させてもらうわ。私が強く慣れるまで」
「それは構わないよ」
妹分のために、力を入れるのは竜輝にとって全然問題のない行為だ。
感想戦まですれば、しっかりと勉強になる。
毎日互いに持ち時間30分、秒読み三十秒で刺せば、ある程度は勝負になる。
「じゃあ、お願いします」
「うん、お願いします」
そして二人は対局を開始する。
凛は早速胡坐をかきたい曲を開始する。
基本、対局時の姿勢は正座だ。しかし、胡坐をかくケースもある。
しかし、この場合は別だ。辺に胡坐なせいで、スカートの中が見え賭けている。
つまり、パンツだ。
竜輝は自分で紳士であるとは自負していない。しかし、人がはしたなければ、当然注意をする。
注意をしたいと思っていたのだが、
ほんとうに、注意していいのだろうかという疑念を抱く。
もしかして、人の足を見てた。人のパンツを見てた変態として処罰されるかもしれない。勿論、竜輝にとって、そんな気はない。
興味がないと言えばうそになるかもしれないが、可愛い妹みたいな凛をみて興奮するなんていう事は絶対にしたくはない。
そもそも、誰が相手でも許されない事だと、竜輝は思っている。
「あの、凛さん」
竜輝は万を持して声をかける。
「兄さん、何?」
謎に勝ち誇ったかのような表情を見せる凛。
「スカートの中が……」
「それが何?」
ここまで言って、なぜ気が付かないのか。
竜輝は軽く苛々とする。
「スカートの中見えてるよ」
「兄さん、スカートの中見てたの?」
やっぱりそう言われるか。そう思い竜輝は静かにうなずく。
すると、
「変態」
そう、凛が言う。その言葉にがっくりと肩を落とす。
そして、その将棋は残念ながら竜輝の負けで終わってしまった。
「やった兄さんに勝った」
凛はそう言って嬉しそうにガッツポーズをする。
普段感情の起伏の少ない凛だが、そんな彼女が笑顔なのならいいか。そう竜輝は思った。
そして凛が料理を作ってくれる。
竜輝はそれを楽しみに待つ。
凛の手料理を食べるのは正直初めてだ。ワクワクの気持ちが抑えられない。
「兄さん、楽しそうに待っててもすぐには出来ないよ」
「分かってる」
竜輝は頷く。
「でも、楽しみなんだ。僕には家族がいたことがないから」
「兄さんは……そうだね」
凛は頷く。
「凛もそうでしょ」
凛の父親はもういない。彼女の父親は、渡辺はもうなくなった。
それも、竜輝のせいで。
「変な空気にしてごめん」
「大丈夫。私は兄さんの為の私だから」
「そう、ありがとう」
竜輝は静かに感謝を告げる。
そして、凛の料理が完成し、竜輝と凛は二人で食卓の前に座る。
いざ実食の時竜輝はワクワクしながら、手に取る。
スプーンで目の前のチャーハンを救う。
事実は小説世も奇なり。リサと同じ料理だ。
だけど、食べた瞬間、異変に気付く。
このチャーハン。
(塩辛くない? それに、油まみれ)
本人を前に美味しくないとは言いにくいが、それでもこれは食べきれる気がしない。
「ねえ、凛」
竜輝は恐る恐る声に出す。
すると臨はチャーハンを食べて、震えている。
「兄さん、ごめん」
凛は静かにそう言うと、急いで竜輝のお皿を取る。
「どうしたの」
「こんなの兄さんに食べさせられない。巣てる」
そう言って荒々しく持っていこうとする。
しかし、竜輝は静かに首を振った。
「だめだよ、そんなの」
竜輝の本音だ。失敗作だとしても、わざわざ捨てに行くことはない。
「もっといい方法があるはず」
竜輝がそう言うと、凛は鼻声で、「うん」と言った。
その後、ご飯を足すことで何とか味を薄くすることに成功した。
それでも、残念ながら美味しい味にはならなかった。しかし、普通のチャーハン一歩手前くらいまでは持って行けただろうか。
「兄さんは凄いね。視野が広すぎ」
「大したことないよ」
それに、今のアイデアだって、そんなにすごい物とは思わない。普通のアイデアだ。
「でも、食べられてよかった。凛がせっかく作ってくれたのに、こんなので終わったら悲しいから」
「兄さんは優しい。うん、優しい」
凛はそううんうんと頷いて見せる。
「私の自慢の兄さん」
そう言って凛は軽い笑みを浮かべた。




