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夢見る羊は何を知る  作者: 藤本レン


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3/6

夢見る羊は何を聞く

「えっ、この名前って」


驚きで、とっさに顔を上げると、雨宮さんからこっそりウインクが飛んできた。


「それじゃあ案内お願いしま~す」


そのまま彼女らは、エスカレーターの方へ行ってしまった。


「うそでしょ……」


静かになったこの場所で、一人ポカーンとする。


カチカチと針の音でハッと意識が戻る。


スマホを確認すると外出時間は──


「あと30分しかないじゃん!急いで帰らないと!」


すぐさま近くに居た男性店員を捕まえ、会計を終える。


「もしよろければ、お車に商品、お積みいたしましょうか?」


(ラッキー!!こんな重いの積み込むだけで10分かかるもん!)


「じゃあ、お願いします」


そうして車のところへカートを持って行った。


しかし——


「フン!!あれ?ふんぬ!!はぁはぁ……」


(この店員、力無ぇ!!)


てっきり、力があると思っていたばかりに、がっかり感が強い。


「あのー、手伝いましょうか……?」


「すみません……お願いします……」


そうして二人で協力し、なんとか荷物を積み込んだ。


「ほんとに、すみません……ありがとう、ござい、ました、」


息切れを起こす店員さんを見ていると、なんだか可哀そうになってくる。


「いえいえ、こちらこそありがとうございました」


「またの、ご来、店を、おまち、して、おります……」


そうして、ちょっとしたトラブルもありつつ、会社へと急いで帰ってきた。


買ってきた椅子を台車に載せ、部屋まで運ぶ。


「課長、戻りました」


そうして、パイプ椅子に座る悲しい課長へ台車を運ぶ。


無言で立ち上がり、椅子の型式を確認すると、


「間違えてこなかったようだな。帰ってくるのが遅いが……まあいいだろう。仕事に戻れ」


(買ってきてやったのになんだその言い方!?こんのクソ課長が)


「それでは失礼します。」


そうして自分のデスクに戻った。


「おかえり、災難だったな」


隣の席の静奈が声をかけてくれた。


「ほんとにな、あのクソ課長まじ嫌い」


「はっはっはっ!あの課長、わけわからんところでキレるもんな!」


「笑い事じゃないって~」


プルルルル!!!


「おっと、お互い仕事戻るか」


固定電話からの着信音にて、それぞれの仕事に戻った。


キーン コーン カーン コーン。


「ふぃーー!!疲れた~。」


「そういえば、お前、今日戻るの遅かったな。迷子にでもなったか?」


「えっ」


突然、有名漫画家と出会った衝撃を思い出す。


「どうした?」


「いやっ、なんでもないよ。椅子重いじゃん!?それで運ぶの時間かかったんだよ!?」


言い訳を並べ出した、その時、スマホが震える。


着信の相手は——


(雨宮さん!?)


「お前、まさか……」


「男と仲良くなってたのか~。ふ~ん。なかなかやるようになったじゃないか~。」


「待って違うって!これお母さんからの電話だから!」


「まっ、そういうことにしといてやるよ」


にやにやとする静奈を置いて、一足先に会社の外へ出る。


「もしもし?雨宮さん?」


「もしも~し。雨宮ですよ~。あなた望月ちゃんって言うのね!名前通りのかわいらしい子だったわね~。」


憧れの有名人にそんなことを言ってもらえて、少しにんまりしてしまう。


「今日は本当にごめんなさいね。」


「いえいえ!こんなにすごい方とお知り合いになれて光栄ですよ!」


「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわ。それでね、やっぱりお礼にご飯でもと思ってね。望月ちゃん、空いてる日にちある?」


「えーっと、ちょっと確認しますね。んーっと、今週の土曜日なら空いてます!」


「あら偶然ね!私もその日ちょうど予定がないの!その日にしましょ!」


そうして私は、来たる土曜日に胸を躍らせながら、帰路に着くのだった。



雨宮 愛莉 (30代)


4年前にヒット作を生み出し、今も連載している有名漫画家。


巷では、女性漫画家という点と、その内容の独自性から根強い支持層を獲得している。



三上 静奈 (27歳)


つばめの高校時代からの友人。


就職先で困っていた時に、現在の会社を紹介してくれた。


冷やかし上手で、つばめの夢は知っているが、現在の活動は知らない。


婚活中でマッチングアプリは3個持ち。


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