夢見る羊は何を持つ
ため息交じりの運転でホームセンターについた。
「あの椅子地味に高いんだよねぇ……はぁ……。」
そうしてオフィスチェアコーナーまでとことこ歩いていく。
「やっぱり平日って人すっくないな~」
「うーん、どれがいいのかしら。」
オフィスチェアコーナーにつくと、どうやら先客がいるようだ。
(あの女の人、椅子選びで悩んでるのかな?)
と、思いつつも、口出しするものでもないと課長の椅子探しへ戻る。
「えーっと、718の椅子…718の椅子……あった!!」
約5万円のオフィスチェアだ。
「私給料日までまだ1週間あるのに…あんのクソ課長め、あいかわらず変な顔と頭しやが——」
「すみません。ちょっと聞いてもいいかしら?」
「ファイ!!どうかしましたか!?」
突然の呼びかけに心臓がキュッとなる。
「私の椅子探し、手伝ってほしいんだけれども、いい?」
なんと、先にこの場所で椅子探しを見ていた女性が話しかけてきた。
「えっ、あっ、椅子探しですか?」
「そうなの。私ね、モノを見つけるのが苦手で、良ければ手伝ってくださりませんか?」
「まあ、それくらいなら全然……どの椅子を探しているんですか?」
「この椅子なんだけれども…」
そう言われ、女性の画面の椅子を見ると——
「さささ30万!?」
「貯金がたまってきたから、思い切って買おうとおもってね。最近仕事で腰も痛めること増えてきたし。」
なんと贅沢な使い方であろうか。
「ここら辺は値段通りに椅子が置いてあるので、右のほうに行くほど、高い椅子が置いてあるんですけれども……見当たらないですね……」
「うーん、どこにあるのかしらねぇ」
二人で、オフィスチェアコーナーで探しても見つからないと嘆く。
すると——
「どうかなさいましたか?」
店員さんが声をかけてくれた。
「実は、この椅子を探してて、」
「うぇ!?お、お客様、本当にこちらの商品をお探しなのですか?」
「少々お待ちくださいませ!」
そう言って、裏へと走って行ってしまった。
二人の間に流れる沈黙。
「あなたも今日、椅子を買いに来たの?」
「えっ?あっ、はい。本当はそんな予定じゃなかったんですけどね」
「こんな時間にスーツで買いに来てるってことは……事務員さん…とかかしら?」
「よくわかりましたね!?実は、課長が椅子を壊して、私が新しいの買うことになっちゃって……」
「あら、たいへんねぇ。そういう人はちゃんと相手しちゃだめよ。こっちがつらくなるんだから。」
「へぇー。結構詳しいんですね」
「そうよ~。私も元事務員だもの」
少し聞きづらいけども……聞いてみたい。
「つかぬことをお聞きしますが、現在のご職業は一体…?」
「私の仕事?今はね——」
「お客様!!お待たせいたしました!!」
そのとき、店員さんが誰かを連れてきた。
「こんにちは。私は店長の小林です。革製のパーソナルチェアをお求めと聞いております。」
「こんにちは。私が探しているんだけれども、どこにあるのかしら?」
「この製品はこの場所にはないんですよ。高額商品ということもあって、二階の最上級製品シリーズの場所に置いてあるんですよ。良ければご案内いたしますよ。」
「じゃあ、お願いしようかしら」
どうやら、私が手伝う必要はなくなったようだ。
「大丈夫そうなので、それじゃそろそろ私は帰ります」
「ほんとにごめんなさいね。良ければ、今度お礼がしたいの。※¹FAINやってる?」
「そんな大丈夫ですよ!別に大したことしてないですから。」
「あら。あなた、なにかつらい悩みを抱えてそうな顔をしていたから、相談相手にでもと思ったのだけれど……」
突然核心を突かれたことで、心臓がキュッとなる。
「それに、年上の厚意は素直に受け取るものよ?どう?」
この人は何か違う。
この短時間で、そう思ってしまった。
「じゃあ、お言葉に甘えて……QR出すので読み取りお願いします」
「は~い。いいわよ~」
——ピッ
{NAME:雨宮 愛莉}
「えっ?この名前って……?」
この人、有名漫画家だった。
ホームセンター名:MITORI
※¹この世界での大手連絡アプリ




