案件106.ダム上の取引
セイブレスと聖女マナキの身柄交換が行われる奥玉ダムの上空では、数機のドローンとマスコミを乗せたヘリコプターが飛び交っていた。
『間もなく、特級異救者盾守ツドウ氏が主導する悪堕者との取引が、ここ奥玉ダムにて始まろうとしています』
『悪堕者は、不法入国したセイブレス30名の命と引換えに聖女様の身柄を要求し、救世会が拒絶した後に盾守ツドウ氏が承諾しました』
『これに対し世論の過半数が非難していますが、悪堕者を一網打尽にするため敢えて応じたのではという意見もあります』
『また、取引が決裂し戦闘に発展する可能性もあるため、奥玉ダムの従業員及び下流地域で暮らす人々の避難は既に完了しています。我々は異救者の邪魔にならないよう、引き続き情報を発信し続けます』
一方セイブレスたちを拉致した悪堕者の轟々爺、ガチャダマン、バズフライはサエラと共に、ダムの最上部で聖女と付添の異救者が来るのを待っていた。
「さっきからマスコミがうるさいブ~ン」
「撃ち落としてやろうかのう?」
「放っておけ、異救者共の醜態を全国に晒し上げてやるんだ」
「!あれを見ろ!」
ガチャダマンが指を向けた先で異空間が開き、中から聖女マナキとボンゴラが出てきた。
「ほう、手差ボンゴラか」
『たった今、聖女様がお見えになりました!一緒にいるのは・・・黒火手団の代表、手差ボンゴラ氏です!悪堕者は身柄交換の条件として、3級以下の異救者1名が聖女様を連れてくるよう指示しました』
『聖女様とセイブレス30名の運命は、彼の手にかかっています!!』
そして時刻は昼の12時となり、ボンゴラとサエラ率いる悪堕者との取引が始まった。
「こうして対面するのは初めてだなボンゴラ、みんながお前に注目してるぜ」
「そんなことより、セイブレスたちは無事なのか?」
「せっかちな奴だ、ガチャダマン」
『カプセル結界!!』
するとガチャダマンが球状の結界を張り、ダムの最上部にいる全員をすっぽり覆い尽くした。
「これで邪魔者はワープでも入ってこれないし、外部との連絡もできない。まずはお互いのブツを確認しよう」
サエラがヒトリバコを取り出し蓋を開けると、中から手足を縛られたセイブレス30人が、ボンゴラとマナキの前に現れ騒ぎ出した。
「なんだここは!?」
「ママ怖いよ!」
「助けてくれ!!」
「それ以上近づいたり、不審な動きをしたと判断したら分かってるな?」
ボンゴラとマナキは、セイブレスたちが本物かよく目を凝らし確認し合った。
「どうマナキちゃん?みんな、リストの顔写真と一致してるけど」
「『聖女スカウター』で見てるけど、幻覚でも闇異の擬態でもない。本物で間違いないよ」
救世主ルニディムの力を宿すマナキは、真実を見通すこともできるのだ。一方サエラはバーコードリーダーのような呪物をスマホに繋ぎ、ボンゴラとマナキの身体を読み取ってその情報をスマホで確認していた。
「聖女本人で間違いなし、妙な呪物も機械も持ってないな」
「みなさん心配しないで下さい!必ずこの手で救ってみせます!!」
ボンゴラの熱い言葉と眼差しでセイブレスたちが少し落ち着いたと思いきや、サエラがヒトリバコを開けて再び閉じ込められてしまった。
「確認作業は終わりだ、次はこいつを拾え」
サエラが二人の前に投げ捨てたのは、セイブレスたちを封じているのとは別のヒトリバコだ。
「『聖女トリバコ』。名前の通り、聖女様を封印するための特注品だ。ボンゴラ、お前がこれを開けて聖女様を封印しろ。それで取引開始だ」
聖女トリバコを拾い上げたボンゴラは、それを見つめたまま考え事をした後、マナキに声をかけた。
「マナキちゃん・・・」
「心配しないでボンゴラくん、あなたたちのこと信じてるから」
マナキの笑顔を見たボンゴラは覚悟を決め、彼女を聖女トリバコの中に封印した。
「さあ取引を始めよう、まずはお互い一歩ずつゆっくり歩くんだ」
ボンゴラとサエラはヒトリバコを持ったまま、ザッザッと歩を進め互いの距離を縮めていった。
『ついに身柄交換が始まりました!果たして聖女様は、悪堕者の手に落ちてしまうのでしょうか!?それとも手差ボンゴラ氏には、何か秘策があるのでしょうか!?』
この光景はマスコミを通じてテレビやSNSに映し出され、原ククリや竹谷ヨブローなど、かつてボンゴラと関わり救われた人々が固唾を飲み見守っていた。
そしてついに両者は、お互いの手が届く距離まで近づいた。
不敵な笑みを浮かべるサエラと冷や汗をかくも真剣な表情のボンゴラ、両者の目が合った時サエラがボンゴラに銃を向けた。
「!」
「ボンゴラ、お前の名を永遠に刻んでやろう。聖女もセイブレスも救えない、最低最悪の闇深案件としてなあ!!!」
卑劣なサエラは、最初から取引をするつもりはなかった!轟々爺たちも攻撃態勢となり、ボンゴラ絶体絶命のピンチ!彼の物語は、こんなところで終わってしまうのだろうか!?
しかしボンゴラはそんな状況でも、毅然とした表情を崩さなかった。
「・・・おれを撃っても、お前たちの望みは何一つ叶わない」
「負け惜しみを―」
その時ボンゴラの背後で、バリィンという音と共に結界の一部が割れた。
「!?」
今度は結界の向こう側に黒皇が現れ、なんとヒトリバコを持ち彼の隣には聖女マナキがいた。
「どうなってるブ~ン!?」
「小僧謀りおったな!」
「セイブレスが入ったヒトリバコは、アゼルがすり替えた!封印した聖女様も偽物だ!」
「クソッ!聖女をよこせ!!」
「待てガチャダマン!結界を解くな!!」
焦ったガチャダマンがカプセル結界を解除した瞬間、聖明師に変異したリンドーに頭部を狙撃され、轟々爺とバズフライはトゥエバとモズロウの不意打ちを食らい怯んだ。
さらにサエラが手下たちに気を取られている間、ボンゴラの手から浄化エネルギーが溢れ出しサエラに掌打を当てようとした。
「くっ!」
サエラが銃を発砲し迎え撃つが、ボンゴラの前に盾が現れ防がれてしまった。
『救手パルマァ!!!』
ボンゴラの掌打がサエラのボディにヒットし、浄化エネルギーが彼の身体を駆け巡った。
「ぐおあああ!!」
サエラはダメージで身体のバランスを崩し、ボンゴラはその隙にセイブレスが入ったヒトリバコを奪い取った。
「よし!セイブレスを取り返したぞ!!」
「おのれ小僧・・・一体どんな手を使ったのじゃあ!?」
To be next case




