第40話 襲撃①
それは突然現れた。
『それでは個人戦決勝トーナメントを始m……⁉︎』
「なんだ、あれ」
闘技大会の会場の真上に巨大な毒々しい紫色の魔法陣が現れた。魔法陣はクルクルと回転しながら光を放っている。
会場の奴らは突然の事に混乱して誰1人として動けない。
「っ!あれは危険だ!止めろぉお‼︎」
魔法陣の回転が早まり、光が強くなってきたところでラグドーン王の隣にいたレウスが叫ぶ。その声を聞いて冒険者や騎士たちが動こうとするが、既に遅かった。
カッ!!!
魔法陣が一際輝いたかと思うと、魔法陣は消えて魔法陣がさっきまであった場所の空間が割れた。
パリィィィィンッ!
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
割れた空間から先ず出てきたのは黒い龍。だが、その姿は鱗がはげていたり片目がなく生気が感じられない。まるで屍のようだ。
黒い龍に続いて様々な魔物たちが雪崩打つように這い出てくる。ワイバーンにトロール、オーガ、グール、オーク、ゴブリン、リザードマン、ハーピー、アラクネ、リビングアーマー、キラーパペット、ゴーレムなどなど多くの魔物が溢れ出した。
出てくる魔物たちは種族関係なしに出てくるが、1つだけ共通点があるとすればそれはどの魔物も全て死んでいることだ。
そう、死んでいるのに動いている。これはゾンビなどのアンデットモンスターと同じだ。
そうこうしている内に割れた空間から最後に一際大きな梟が飛び出てくると割れた空間は元に戻った。
梟は上空から地上へと一直線に飛び、墜落寸前で急上昇して何かを会場に置いていった。
置いていかれたそれは、魔族だった。
「やあやあ、皆さん初めまして。もしくはお久しぶりです。元アメシア帝国外交官、現魔王軍魔将が1人、知識のグラナダと申します」
そこにいるその男は慇懃無礼な態度で大袈裟に自己紹介して1つ礼をすると何故か俺の方を向いて言った。
「では、死んでください」
「全員、避けろぉお!!!」
レウスの声が響く。俺たちは頭で考えるよりも早くその場から飛び退っていた。俺たちが避けた直後、闘技場を毒々しい紫のブレスが襲った。
ズッガアアアアアアアンッ!!!!!
闘技場に張られている結界が一瞬だけ大きくたわんで、砕け散った。そしてブレスは闘技場を破壊し尽くした。
チラリと横目で見ると、ラグドーン王などの重鎮や貴族たちは高ランク冒険者や私兵たちが庇って逃げている。一般席の観客たちも席に残っていた魔法使いたちが咄嗟に張った簡易結界によって一部を除いて守られたようだ。
だが、防御が間に合わなかった箇所は地面ごと抉れて建物を消しとばしていた。
「それでは、やりなさい」
男、グラナダが魔物たちに命じると一斉に俺たちに向かって殺到する。
「全員、迎え討て!」
『おおおおおおおおおっ!!』
レウスが叫ぶと同時に魔物の群れに突っ込み、他の冒険者や騎士たちがそれに続く。
「シロ、ハク、レウスを援護してこい。アンチはラグドーン王のところに行け」
「「えっ?」」
「何故です、マスター」
「……あいつの強さが桁違いだからだ。居ると邪魔だ。それに、勝てるか正直わからない」
俺は冷や汗をかきながらグラナダのステータスをもう一度見る。やはり、ありえないほど強いステータスが視界に表示されていた。
名前 グラナダ=クラブ=アモスード
種族 魔人【悪魔/死骸人】
性別 男
年齢 ???
職業 【学者】【解読者】【呪術師】
レベル502
装備
主武器:呪鴉の羽根ペン
副武器:呪毒の短剣、転移の細剣
頭装備:封魔の単眼鏡
胴装備:悪鬼の黒衣
腕装備:煉魔の手袋
足装備:闇竜鱗の革長靴
スキル
呪術Lv8
黒魔術Lv10(MAX)
闇魔法Lv8
火魔法Lv6
風魔法Lv6
雷魔法Lv6
氷魔法Lv5
刻印魔法Lv9
体術Lv6
短剣術Lv6
魔力操作Lv7
魔力強化Lv7
特殊スキル
言語魔法
失われた魔術
死霊魔法
魔眼
【麻痺、振動、氷結、幻惑、鑑定】
称号
知識の神エンキの加護
知識の悪魔
永遠の学者
永遠の解読者
呪術師
蘇らせた者
知識の魔将軍
復讐者
アンデットカイザー
「アンデット組は冒険者に協力、グレイとクリアはあのそれぞれあの腐った犬ころとトカゲの相手だ」
「「「「「分かりました!」」」」」
「…………(コクン)」
『了解した、主よまた後で』
『分かった、殺してくる』
サッ、と俺の家族たちは俺の指示通りに行ってくれた。
そして、俺の前にはグラナダと名乗った男が進んでくる。グラナダは俺から20メートルほど離れたところで止まると太もものホルダーからナイフを抜いた。
俺は腰から怠惰を抜いて下段に構える。するとグラナダは話しかけてきた。
「君がテツヤだな?」
「……ああそうだ。だから何だ?」
「そうか、やはり君か。君に質問だ。君はローズという女性を覚えているか?」
「覚えている、強欲の前の持ち主の魔人だった」
「そうか。覚えているならそれはそれでいい。彼女を殺したことを悔やみ、嘆きながら絶望に呑まれて死ね」
グラナダはそう言った。
ガキィィンッ!
グラナダが目で追えないほどの速度で踏み込み、ナイフを俺の首に向かって突き出した。それを俺は怠惰で切り上げる。
「堕落!」
「【邪炎】!」
俺がグラナダを斬ろうと踏み込んだ瞬間に闇魔法と火魔法の混合魔法が俺を襲い、行くてを阻んだ。
そしてグラナダが投擲したナイフを避けきれずに頬にかする。掠ったと思った瞬間に体から力が抜け、うまく動かすことが出来なくなった。
「【氷壁】!」
咄嗟に氷の壁を作って身を守るが、グラナダの放った風の刃で切り裂かれて氷の壁はいとも簡単に崩れる。
「くそっ!ウィップグローブ起動、来い!グレイプニル!」
「【雷矢】、多重展開」
グレイプニルで動かない体を強引に引っ張ってグラナダの雷の矢を避けるが、数が多く何発かは被弾してしまう。
明らかに体がおかしいと思い、俺は自分のステータスを確認して表情が凍りついた。そこには
状態異常 【呪い】【猛毒】【麻痺】
そう書かれていた。
「どうしました?この程度で終わりですか?彼女を殺したくせにこれ位で終わらないで下さいね?」
俺に向かって歩きながら目が笑っていない笑みを浮かべているグラナダを見て、俺は軽い絶望を感じた。
補足説明
グラナダの容姿について。
銀髪の肌が青っぽい好青年。目の色は赤で、左目にモノクルを掛けている。
医者が着ている白衣の黒版を着ており、躰つきは細い。
身長は180センチくらい。




