第41話 襲撃②
「くそっ!」
俺は体が動かないので意識して脳内でSPシステムを開いてそこから毒軽減、麻痺軽減、呪軽減の3つを全てレベル5の状態で取得する。
今のでSPを465pt失った。だが取得すると、体が大分軽くなり動くようになった。
「ぬうぁっ!」
俺が立ち上がったところに飛んできた黒い炎と雷の矢を怠惰で受けつつ俺は後退してそのまま氷の弾丸を放つ。
だが、俺の放った魔法は全てことごとくグラナダの持った細剣に防がれ、受け流されていた。
「【氷壁】、多重展開!」
俺は氷の壁を何重にも重ねて出してアイテムボックスから物を出す為の時間を稼ぐ。今も氷の壁を破ろうと凄い勢いで魔法がグラナダから飛んできており、猶予は少ない。
俺はアイテムボックスから万能魔法薬を取り出すとその淡い水色をした液体を一気にあおる。
万能魔法薬は1本白金貨1枚する高価なポーションのようなものだ。傷や病、毒などを癒し、同時に魔力と体力を回復させる。だが、必要な材料が中々手に入らないため売っているところは少ない。
この万能魔法薬はレウスから教えてもらった王家御用達の魔導具店で買ったものだ。今飲んだものを含めて3本しかないので多用はできない。
チラリと自分のステータスを確認すると状態異常は変化していた。
状態異常【呪い】【毒(微)】
麻痺が消え、猛毒は毒(微)に変化している。が、呪いは消えずに残っているようだ。
ドゴオオオオンッ!
「やれやれ、こんなもので時間稼ぎとは人間とは何とも無様なものですねぇ?」
最後の氷の壁を破壊してグラナダは歩いてきた。その姿はあれだけ連続で魔法を行使したのに疲れを感じさせない。いや、実際に疲れてなどいないのだろう。それだけ魔族というものは強力な種族だ。
「行くぞっ!堕落、強奪!」
強欲を抜き放って右に怠惰、左に強欲の二刀流になる。二刀を使った連撃で攻め続けるが、それらはことごとく受け止められたり流されたりして決定打を与えられない。
「アアアアアアアアアアアッ‼︎第五之太刀!連奪!」
強欲の大罪技である連奪を使って何とか防御を貫こうと攻撃する。が、連奪でさえもグラナダは裾の一部や普通のナイフなどでガードして自分がダメージを受けることを徹底的に避けていた。
「第七之太刀!怠傷!」
「まだまだ甘いですね」
ガギィィィィインッッ!!!
渾身の一撃はいとも簡単にグラナダの持つ細剣の突きで弾かれてしまった。
一撃を外して大きく体勢を崩してしまった俺の腹部に向かって容赦なくグラナダの蹴りが炸裂する。
咄嗟にガードしようとしたが間に合わずにまともに受けてしまった。肋骨が何本が逝ったかもしれない。
「ぐぅっ…まだだ!影の道化、武雷強化!」
俺は2つの身体強化系魔法を発動して再度グラナダに斬りかかろうとする。が、
「だから甘いと言っているでしょう?」
ズジュッ……
「……は?」
真横の地面から伸びた岩の槍に横腹を貫かれ、俺は体から急に力が抜けていく感覚を感じて膝から崩れ落ちた。
崩れ落ちた時に体重がかかって岩の槍がより深く食い込むが体は相変わらず動かない。
「さて、君には生きていた事を後悔し絶望するほどの痛みを体験してもらいましょう」
道端の石ころでも見るような目で俺を見ながら同時に泥沼のような深く澱んだ恨みを感じさせる目をしたグラナダの宣告は死刑にも等しかった。
「それでは始めましょう。先ずは呪いからいきましょうか」
細剣を俺に向けて呪いをかけようとグラナダが口を開いた。だが、グラナダの口から呪いをかける言葉は出てこなかった。なぜなら、
「ちっ、誰ですかあなたは」
「僕は…僕は、勇者コウキ!この国の勇者にして世界に平和をもたらす希望だ!」
魔法を放った体勢でこちらを睨む勇者がいた。
「勇者、ですか。ならあなたもついでに殺してしまいますか」
グラナダの手に黒い炎が集まる。それを放とうと手を勇者に向けたところでそれを遮る者が現れた。
「おぅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「!?ちっ!」
「もう一丁ぉぉお!」
大剣を振り下ろしグラナダを威嚇するレウスが俺を守るようにグラナダと俺の間に立った。
「行くぞ魔族!唸れ!地竜剣アード!」
レウスが手に持った大剣を掲げると地面から岩や金属が飛び出してレウスが持つ大剣に付着していく。そうして巨大な鈍器のようになった大剣をレウスは薙ぎ払うかのように振るった。
「うおっしゃぁぁぁぁあ!!」
「っっっ⁉︎」
グラナダはその大剣を受け止めきれずに押し負けて空中に浮かび後ろへ押しのけられ、体勢を崩した。
急いで体勢を直そうとするが、その時には既に後ろに勇者が回り込んでいた。
「敵を突き刺し、悪を貫け!聖剣召喚、フロッティ!」
特殊スキルの聖剣召喚を使った勇者が喚び出した聖剣フロッティは容赦なく目の前の敵へと向かう。
「くらえっ!」
カッ!!!
一際強く衝撃が発生し、土埃が舞う。勇者は一撃を加えるとすぐに壁を蹴ってこちらへ戻ってきた。
「コウキ、今の内に回復してやってくれ」
「わかりましたレウス先生」
そう言ってコウキはまた特殊スキルを使用する。
「全てに慈悲を、全てに癒しを与えよ。聖剣召喚、カーテナ!」
気がつくと勇者の手の中には剣先も刃もない剣が握られていた。それで勇者は俺を切った。
「っ!?」
「これで呪いも毒も無くなったはず。大丈夫かい?」
「……ああ、取り敢えずな」
確かに状態異常の欄には何も書かれていなかった。
「……来るぞ」
レウスがそう呟くと同時に土埃が晴れ、そこに無傷で佇むグラナダの姿を目にすることになった。
「ふむ、中々いい攻撃でしたよ。ですが少し驚きましたが脅威にはなりませんね」
奴は、まだまだ余裕そうだった。




