第21話 大氾濫⑤
「鈍器持ちの奴らは左側に周れ!槍、剣持ちは下がってろ!」
「まずは右腕っ!」
レウスが指示を出しているのを聞きつつ自律思考魔導戦闘機械(以下、機械兵と呼称)の右腕の肘関節部に怠惰を振り下ろす。傷を与えるが、浅い傷しかつけられない。
「くそっ、なんて硬さだ」
「鈍器組!左足首関節部に集中攻撃!弓持ちは頭部に矢を集中して視界をふさげ!」
「レウス!あいつ、クソ硬いぞ!まともに傷がつかない!」
「分かってる!でもやるしかねえ!」
レウス指揮する冒険者たちが左足首関節部に集中攻撃するが、壊れるどころかダメージを与えられているようには見えない。あ、二人蹴飛ばされた。
「どうするかな……」
「ワタシを使ってはいかがでしょう、ご主人?」
「強欲をか?」
「はい、ワタシの“強奪”で関節部を奪ってしまえば良いと思います」
「お前って地味にチート能力だよな……」
「そんなことはありませんよ?奪うと決めたところに当てないと効果は発動しませんし、基本的に決めたところは奪うまで変えられませんから」
「そうか。まあそれはいい、やるぞ」
「はい、ご主人」
「怠惰は今回は休んどけ」
「わかったよ〜」
俺は怠惰を腰に戻し、今度は強欲を腰から抜く。蒼い刀身が現れた。怠惰との見た目の違いは刀身の色だけのようだ。
「行くぞ、強欲」
「わかりました、ご主人」
俺は強欲を八相に構えて機械兵に向かって突っ込む。向かってくる右拳を横に回転するようにステップし、右腕肘関節部に強欲で切りつける。そして
「“強奪”!」
ガシャッ‼︎
『!!!!!?』
機械兵の右腕肘関節が消えた。支えを失った肘から先の右腕が地面に落ちる。その肘関節は俺の手の中に。それを見て機械兵は困惑しているようだ。そりゃそうだろう、気づいたら自分の肘関節が相手の手の中にあるんだ。普通の人間でさえ混乱するのに人工知能の機械が困惑しないわけない。
俺は機械兵の肘関節をアイテムボックスに仕舞って、強欲を機械兵に向ける。
「レウス、他の冒険者たちと下がってくれ」
「分かった、無理はするな」
「無理なんてしねぇよ。……じゃあ、機械兵。スクラップタイムだ」
『………………………』
「うわー、ご主人が悪い顔してる」
「そうですねぇ、ふふふっ」
機械兵が震えていた気がするが気のせいだろう。
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「………これは」
「酷いとしか言えませんね……」
「お前らはどうしてそんな顔してるんだ?」
俺が機械兵をバラし終わった後、レウスとギルド員のレナさんがやって来た。二人は俺がバラした機械兵を見て顔を青ざめさせているが何故だろうか?
「「マスター…………」」
「うん、これはご主人が悪いね……」
「そうですねぇ、ご主人は顔に似合わず以外と鬼畜ですねぇ」
「MyLordニマチガイハアリマセン」
何故かアンチを除いてシロ、ハク、怠惰、強欲、も引いていた。本気で何故かわからない。
「おいレウス。なんでお前らは引いてるんだ?」
「…お前、ホントに分からないのか?」
「ああ」
「あのな……」
レウスは一度言葉を止めて、息を吸ってから俺に向き合った。
「バラすと言ってもこんなに全身をバラす必要はないだろうが!というかまだコアと頭部は繋がって残ってるし、むしろ機械兵の目からオイルが流れてるのが涙にしか見えねぇし、こんなに全身を意識がある状態でスクラップにする必要もなかっただろうが!」
「おお、すごい肺活量だなレウス」
「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇえ‼︎」
なるほど、つまり俺が機械兵を意識?がある状態で全身をスクラップしたのがグロいとそういうことか?そんなに酷いことはしてないと思うんだがなあ。
「まあ、レウスは放っておくとしてだ」
「だから話しを聞けぇぇぇぇぇぇぇえ‼︎」
「おい、お前、もう話せるだろう」
『⁉︎』
「お前だよお前」
俺は機械兵の残った頭部をゲシゲシと踏みつける。こいつは俺がバラすついでに錬金術でスピーカーを造ったから話すことが可能になったはずだ。ついでにこの世界の一般的な言語もインストールしといたし。
『ハ、ハナセマス…』
「よし、それじゃあお前自身の事を洗いざらい話してもらおうか」
『アノ、ソレハ…』
「そうそう、拒否権はないから。それと後で嘘や言ってないことが分かったら………どうなるか分かってるな?」
『………………………』
俺が笑いながら問いかけ、それに機械兵の首から上がイヤイヤしながら涙(に見えるオイル)を流すのを俺の後ろで見たレウスたちが苦虫を噛み潰したような顔をして機械兵から顔を背けていたのが印象的だった。
〜1時間後〜
「本当にもうないか?」
『ありません!本当にありませんから!だからやめてーー!』
ペラペラと自身の事を話す機械兵は1時間もすると話し方がだいぶ流暢になった。それにしても話すことはもうないらしい。
「レナさん、聞いてたよね?記録は取ってある?」
「は、はい。取ってあります」
レナさんは顔を引きつらせた笑顔で答えを返した。どうしたんだろうか?まあ、それは置いておこう。
「じゃあ、コイツを俺にくれ。今回の大氾濫の報酬として」
「それは……ギルド長に聞いてみます。分かりましたらお伝えしに行きますので」
「分かった。それまでは預かってていい?」
「どうぞ」
「よし、じゃあお前は中に入ってろ」
未だに涙を流す機械兵を他のパーツと一緒にアイテムボックスに仕舞った。機械兵は意識はあっても生物ではないから仕舞えるようだ。それにしてもあの涙は一体何処から出ていたのだろうか?
「よし、じゃあ街に戻るか!」
「そうだな。お前に説教もしないといけないしな」
「ええ、早く戻りましょう。ギルド長に報告もしないといけませんし」
「「帰る〜!」」
『主よ、私も流石に疲れました』
「In a condition of order of "MyLord"」
「疲れたね〜」
「そうですねぇ。早く帰りましょう」
俺たちは街に向かって歩いて帰った。門に着くと、衛兵が笑顔で歓迎してくれた。門も壊れているところもあり、多少なりとも被害は負ってしまったが、この街が無事なのが嬉しいのだろう。
俺たちはギルド前で別れた。レナさんはギルド長へと報告の為にギルド内に、レウスは俺とは違う宿に、俺は明るい小鳥亭に。それぞれ帰っていった。
宿に俺が着くと、宿の庭に俺がテイムしたワイバーン亜種がいた。撫でてやってグレイを一緒にいさせる。宿の中では女将さんや他の冒険者たちに歓迎と感謝を受けた。俺は苦笑いして部屋にサッサと戻る。
「あー、疲れた」
「「疲れた〜」」
俺が装備をアイテムボックスに仕舞ってベットに腰掛けるとシロとハクは装備をつけたままベットにダイブした。こいつらも今日は頑張っていただろう。
「シロ、ハク、今日はよく頑張ったな。偉いぞ」
「そうでしょー」
「がんばったよー」
「そうだな」
俺は二人の頭をよしよしと撫でてやる。そのまま装備を外すように言うと二人は装備を外してスグにベットで寝てしまった。汗くらい流せと言いたかったが、やめておく。明日、言えばいいだろう。
俺も最後に残った怠惰と強欲を枕元に立て掛けると濡らしたタオルで体を拭いてから、ベットに潜り込んだ。
これにて第2章は終了です。次は拠点を変えての第3章を書こうと思っています。
これからも読者の皆さんを楽しませられるような趣味全開の小説を書こうと思っていますので、これからもよろしくお願いします。




