第24話 逆襲
「なるほどねー。れーくんはずっとさくさくの手のひらの上で踊ってるわけだー」
ポッキーを咀嚼しながら、興味の欠片もないような声で奈子は言う。
「そうなるな。ところでれーくんってなんだ」
「ん、怜太でしょ。だかられーくん。君っていい子なんだねー。そんな馬鹿正直に話すなんてさ」
「今話したことがすべて真実であるという保証もないぞ」
「いや、あんだけ熱量込めて語っておきながら嘘でしたわ無理があるだろ」
久留実が冷めた瞳を刺してくる。単細胞なこの子に下に見られるのは少し悔しい。
「彩子も千代も嫌いだけど、大っ嫌いだけど。れーくんのことはちょっぴり好きだなー私。シンパシーを感じるっていうか、同族の匂いがするっていうかー」
「俺も感情が明け透けな奈子ちゃんのことは嫌いじゃないよ。久留実ちゃんもね」
「ずっと気になってんだけど、どうして久留実ちゃん呼びなんだよ?」
「久留実という呼称は恋人専用らしくてね」
久留実がぽっと頬を赤くして、勢いよく奈子に視線を刺す。なにも見なかったことにしよう。
「で、さくさくに勝つ算段はついてるの?」
「あぁ。ついてるよ」
「私と久留実が手を貸さなくても大丈夫な感じ?」
「そうだな」
「ちぇっ、つまんねぇのー」
ぶんぶんと足を振り、奈子は久留実の膝にこてんと頭を乗せる。動揺してわたわたする久留実を見て、奈子はうれしそうにしている。反応に困るから怜太の前でイチャつかないでほしい。
「強いて言うなら、YouTube Liveにできるだけたくさんの人を誘導してほしい。頼めるか」
「おいおい。こちとら腐ってもDREAMERSだぞ。毎年全国まわってるアイドル舐めんな」
ニッと久留実は白い歯をみせる。奈子はさておき、久留実が協力的であることには驚いた。
「ありがとうふたりとも」
「無償じゃないからね。ちゃ~んとれーくんには相応の対価をもらうからね。だからまー、ちょ~嫌だけど、少しの間だけ彩子と千代の味方してあげるよ」
「ったく、陰鬱な話のせいで胸糞悪くなっちまったじゃねぇか。アタシは中途半端が嫌いなんだ。だから阿久井怜太、しっかり勝ってスカッとする話持ち帰ってこいよ」
「言われずともそのつもりだ」
彩子も、千代も、奈子も、久留実も、これ以上傷つけさせない。
何故なら四人は、かつて怜太と美香に希望をくれたアイドルだから。美香が愛したアイドルだから。
母が好いていたものを、怜太の宝ものを 今度こそ護ってみせる。
今はもう、あの頃のように無力じゃない。




