第52話 韋駄天の加護の弊害
主人公は、初めてCランクの魔物と戦いました。
その対処の為に、初めて韋駄天の加護の効果を俊敏1000プラスにしたのですが。
頭痛と関節痛と筋肉痛が起こった様です。
「はぁはぁはぁ」
自分の呼吸がやたら大きく聞こえる。
剣は、振るうと同時に握力が無くなり飛んで行った。
そして、痛みだけでなく全身に力が入らなくなり座り込む俺。
何でだよ。
【先ずは防御結界を張りエリクサーによる治療を】
そう指示されたので、防御結界を張り、バッグに入っているエリクサーを亜空間収納し、中身だけ首から掛ける。
それで、頭と関節と筋肉の痛みは減ってくれたが。
ああ。
頭の痛みは、ワーウルフを倒した直後くらいから減ってはいたが。
「で、どういう事?」
そう補佐さんに聞く。
【韋駄天の加護により上昇した俊敏ステータスによる弊害です】
「弊害?」
【はい。俊敏ステータスの向上により、思考速度、体の動き等が高速化出来ます。
しかし、知力、筋力、耐久ステータスが、その向上した俊敏に対応できるだけの力がなく、その為に起こる弊害です。
具体的な数値で具体例を挙げれば、俊敏以外のステータスが400なのに俊敏だけが1400と言った数値になりますので】
「早く動けるけど、それに耐えられる筋力と耐久が無いから、筋肉や関節が破壊されるって事?」
【破壊までは。傷んでしまうが正しい表現でしょう】
「えっ。思考速度が上がった為、脳とかもダメージ受けているの?」
【いえ。思考速度の上昇については、痛みだけで脳の損傷と言った事はありません。
上がった思考速度に応じて酷い頭痛が続く程度です。
なので、本気になればなる程、頭痛が酷くなり、余裕がある時はそれ程の頭痛がしない状況でした】
「……、何で教えてくれなかったの?」
そう補佐さんに、クレームを入れる感じで聞いてみる。
【貴方様の、出来るだけ私に依存するのを減らしたいとの意思を聞いていたので】
「あ~。まあ、そうか。
そのくらい気が付けって事だね」
【はい】
「どおりで、俊敏50%アップと俊敏1000プラスなんて、2種類の効果が選べるわけだ」
【そういう事です】
「はあ。他に何か俺が気が付いていない事は有る?」
【現在気になっているのは、感知の能力を使いこなしていない事です】
「……。ああ。隠密でレベルが上がり、感知スキルはLV9と言うか、今の戦闘でLV10MAXになったのに、その力を把握し使いこなしていないんだ」
【それ以前の斥候職でのレベルアップでLV5になった時からです】
「感知スキルがLV5。
確か魔力を感知出来る様になったタイミングか」
【はい】
「たしか、初期設定のままだから、気配しか感知しない設定だったか。
それを魔力も感知する設定に。
ああ。
今なら悪意とか危機とかも設定できたか」
【設定時に自分で必ず気が付かれる事なので先に指摘しますと、魔力については感覚に通知してくるのについてはOFFか強度を下げておくので良いでしょう。
把握する情報が多くなり過ぎますので。
ただし、貴方様が探索や察知を意識した場合や感知スキルが異変・異常を感知した場合は、100%の感知を実行すると言う指示が良いと思われます】
「あ~。そうすべきなのか」
【危機とか悪意とかも、通常時は強度(感度)を20%くらいで良いかと。
何もかも知らせてこられても、把握しきれない、鬱陶しい又は逆に情報に対し意識を割かなくなるでしょうから。
ですが、魔力と同様に、探索や察知を意識した場合、感知スキルが異変を感じた場合、市町村に入るといった悪意や危険に敏感になる必要があると思った場合や、何もなくても安全確認のために定期的に強度を一時的に上げると言った事は必要になりますが】
「なるほどね。
という事は、目の前に3Dマップで表示するタイプの情報提供は、もっと細かく表示して良いのか。
マップを見るという事は、当然それに意識を割いているって事だし」
【はい。魔力については、魔素の濃度まで表示するようにするのが良いと思われます】
「……。魔素の濃い場所に強い魔物が湧くからか」
【例外はありますが、魔素の濃い場所を好む魔物が多い、魔素の濃さに応じた強さの魔物が居ると言うのもあります】
「ひょっとして、今のワーウルフは魔素が濃い場所に居たのか」
【いえ。あれは例外でしょう。
おそらく、自分より弱い魔物を倒しまくる特性を持っていたのだと思います】
「あ~、1億分の1とはいえ、倒せば種族経験値は入るからね」
【後は、虐殺を好む傾向があった様にも感知出来ました】
「はあ。まあ、そんな例外が居るにしても、魔素の濃度を把握していれば、強すぎる魔物に会う危険を減らせるんだ」
【はい】
「ああ。3Dマップに表示する感知結果についても、それぞれ強度(感度)が指定できるんだ。
どのくらいが良いのかね」
【状況によりますが、気配と魔力については100%、悪意と危機については50%程度にし、MPや周りの状況を睨みながら、感知する範囲を操作する、を基本にすると良いかと】
「なら、それで一応設定しておこう」
【後は、感知スキルが放つ感知の魔力について、他から感知し辛い設定に、との指示も必要かと】
「あ~。さっきのは、感知の魔力を逆探知された可能性もありそうだもんね」
【はい。更に言うと、仮装及び偽装スキルのレベルが上がり、全力で動いても解除されないレベルになった後は、感知の魔力に魔素に仮装か埋没、魔素に偽装か隠形と言った事を掛けておく事も推奨しておきます】
「それは、先に教えてくれるんだ」
【はい。感知スキルによる感知の逆探知に関しては、一度経験しましたし、今後致命的な事態に発展する可能性が高いので】
「はあ。感知スキルがLV10MAXになって、かなり広い範囲を感知出来る様になったけど、感知範囲を広げれば良いって話にはならないんだね」
【はい。貴方様は、魔力源泉スキルをお持ちなのでMP切れにはなりにくいですが、通常は消費MPが多すぎて広範囲の感知は行いませんから。
また、先ほどお知らせした、感知の魔力に感知し辛く指定しておくのにも、仮装・偽装を施すのにもMPが使われますので、他の人はここぞと言う時しか使わない手法です】
「MPの残量に注意しろ、と他の人に比べて馬鹿みたいにMPを使っていると言う自覚を持て、かな」
【はい】
「本当なら、そう言うのは冒険者ギルドや先輩冒険者に教わるんだろうけど、急ぎすぎって事か。
力を持ちすぎているから、迂闊には聞けないと言うのもあるけど」
【はい。次に、私が指摘するまでもありませんが、韋駄天の加護の弊害を考えると、現状50%プラスの方が使い易いと思われます】
「……。それで、さっきのワーウルフに勝てたかな」
【戦い方次第ではありますが、俊敏でも劣っていて負けた可能性が高いと思われます】
「はあ。まだCランクの魔物とは戦うな、という事だね」とため息を付きつ、次の事を考える事にした。
主人公は、韋駄天の加護の弊害や感知スキルの設定について補佐さんに教わりました。
これで、危険な目に遭う事が減ると良いのですが。




