第37話 先送り
主人公は、全能者になった初日を終えようとしています。
疲れ眠いのですが、その前に考えてしまうようです。
絶望を抱えていた主人公を転生させる設定である為に、主人公が改めてどうするかを考えた時に自殺とか虐殺と言ったワードが出てきます。
嫌な人は飛ばしてください。
全能者となり、幾つかの力を手に入れた成人(16歳)の誕生日。
ああ。
前世の記憶も手に入れたか。
その長い一日を終えて、寝る事にしたんだけど。
暗闇になって考えるのは……。
もう、魔物にでも殺された方が良いのでは、という事か。
【それは、推奨できません】と聞いても居ないのに補佐さんが言ってくるが。
『補佐さんは、そう言うしかないんだろうけどさ』
【神罰転生させたお詫び、という事で神から預かっている情報をお伝えします】
『何それ。あの話の通じない馬鹿神が?』
【転生時に対応した神とは別の人の神です】
『なんで、お詫びなの?』
【無理やり転生させた上に、神罰転生でしたから】
『ひょっとして、無能者だったのは、そういう事か』
【はい。それで、才能開花後であっても貴方様がやる気をなくし安易に死を選ぶ事、人に憎悪を向ける事も想定されての情報提供です】
『ふ~ん』
【まず、自由に生きて問題がないそうです。
魔物を倒す生活でも、物を作る生活でも、どちらでも人に貢献する事になりますから。
ただ、可能なら人族が滅びない方向へ、その力を振るって欲しいそうですが】
『それについて、『何で人の為に、そんな事をしなければならない』って嫌気がさしているって分かっているんでしょ』
【はい。なので、気が向いたら程度でも、ゲームで仲間にした人達を救うだけでも良いそうです】
『ふ~ん』
【また、人に敵対し魔族や魔物に与する事も認めるそうです】
『へ~。それで人を滅びに向かわせても良いんだ』
【それが、勇者制度を盛り込んだ結果という事で諦めるそうです。
ただ、貴方様の性格では、そこまではしないだろうと想定されている様ですが】
『どうかね。
無能者って馬鹿にされ見下されての生活を続けてみれば良いんじゃない、神様も。
前世だって……。
あれ?
なんだっけ?
ああ。
人はどうしようもない生き物だから滅びればいい存在だって、嫌と言うほどニュースとかで見たけど』
【……。
それで、安易に死を選ぶ行為についてですが。
人の世は苦界。
神は人に対し、そこで己を磨いてほしい、との願いを持っています】
『磨いてどうなるんだろうね』
【……。
なので、その修行・自己研鑽から逃げる者については、冷遇される傾向があります】
『冷遇。消し去ってくれるのだとありがたいんだけど』
【例えば、次にこの世界で生まれ変わった時に、生産者職にしか就けず、昇華の神酒を使っても戦士職にしか才能が開花しない様な冷遇です】
『それでも、目の前の苦しさから逃げ出したいって気持ちは、分からないんだろうね』
【勿論、その辺は考慮されます。
しかし、今の貴方様は他の方々より恵まれています。
なのに、そんな選択は、おそらく認められないでしょう】
『なら、絶望を抱えた人を転生対象になんて、すべきじゃなかったね』
【……、死を選ばれるのですか?】
『死ぬのは怖いよ。
魔物に殺されるのも怖いし。
だけど、生きるのも辛いし嫌だ』
【全能者になったので、勇者職に就くころには色々と楽になる筈ですが】
『楽にね。
神が苦界とか自己研鑽とか言っている世界なのに、そんな事になるのかね。
王都で寝ていたら竜のブレスで死んだりしたのに』
【天からの恵みがありますから】
『はあ。
死んでも、3回は生き返らないと駄目なんだっけ。
ああ。
自分やポポとチモにスキルとかを付与して回数を0にしておけば、直ぐに死ねるのか。
運悪く、竜に襲われたりしたら、あっという間だ。
あれ?
ひょっとして、ゲームには無かった幸運スキルによって、そう言うのは回避されるのか』
【そういう事もあるかもしれません】
『はあ。どうしたものか』
【せめて、貴方様が助けなければ死んでしまう人を数名、助けてもらえないでしょうか】
『そうすれば、俺が死に難くなるって感じなの?』
【それは、貴方様次第です】
『まあ、そうだね。
助けるだけ助けて関わりを持たなければ良いだけだけど』
【おそらく、それは不可能です】
『そうなの?』
【ゲームの様に簡単にはいかないかと】
『なのに、助けろって言うんだ』
【はい。貴方様が助け仲間にしたNPCの内数名は、人の世の希望に、人をより良き方向に導ける可能性を持つ人達ですから】
『そうなんだ。
なら、その人達を助ければ、俺はお役御免か』
【少なくとも、死後に冷遇される事は無いかと。
出来れば、育成までお願いしたい処ですが】
『育成?』
【勇者の力と、前世のゲーム知識で、普通の人では出来ない様なレベリングと職業の才能の開花も可能ですから】
『ふ~ん』
【私も、この世に生を受け、何も成さずに消滅するのは望みません。
せめて私の創造主たちの望みの一つでも、叶えさせてもらえないでしょうか】
『考えておくよ。
と言うか、多分死ぬのは怖くて、ダラダラと生き残っていくと思うよ。
人の世で一番恵まれた職業である勇者職に就ける、という事は希望もあるって事だろうし。
まあ、今日も死にかけたし、そんなに甘い世界じゃないから、断言はしないけどね』
【はい。サポートさせていただきます】
はあ。
魔物の領域に突っ込んで行くと言う自殺じみた事をする以外にも、人を滅ぼす為に虐殺を行い続ける、という道もあるんだけど。
人に対する怒りや憎悪はあるが。
それは最後の手段だな。
という事で先送りだな。
必要だと思ったら、必要と思う虐殺をすれば良いだけだ。
慎重に、かな。
当然、人の中にも生きていて欲しいような人が居るだろうから、勘違い・間違いは許されないだろうし。
と言うか、生きていて欲しいような人を殺したら、今以上に消えたくなるだろうな。
自殺か。
それは、最後の手段だよな。
前世でもそうだったけど、先送りだ。
はあ。
しかし、補佐さんに愚痴ってしまった感じだな。
申し訳ない気がしてきた。
こんなに甘えたのは、母親以来かもな。
あの馬鹿神にも原因はあるから、許してもらおう。
少し情けなくなりつつ、眠りに着く事にした。
長い一日だったと思いつつ。
主人公は絶望を抱えていた為に転生の対象に選ばれました。
それが転生対象として、どうなのか、と言うのを本人も考えてしまった様です。




