第9話 過去と神罰転生決定
主人公は、転生を拒否し続けています。
その合間に神が口にしたあの人の事。
何があったのでしょう。
長めです。
転生を拒否し続けていると神が言ってきた。
「何でそんなに消え去りたいのさ。
ああ。
あの人の事がいまだにトラウマなのか」
そう言われて思い出したあの光景。
「チッ」
「神に舌打ちしたよ。神に」
「人なんて、全ての世界で滅び去ればいいでしょ。
なんで、それに俺が抗わなければ、ならないんですか」
「あ~。いや。うん。
ちょっと待って。
あ~、そんなに怒ったら」
高校の2年の時、8人の友達グループの中に俺と彼女は居た。
クラスで見れば一軍のグループでは無かったけど、それなりに楽しかった。
弄りはあっても、虐めと言う程の事は無かったし、みんな性格が良かったし、ウマもあったし。
そんな中、彼女と二人だけでショッピングセンターに行く事になった。
ああ。
『弟の誕生日プレゼントを買いたいから、選ぶのを手伝って欲しいんだけど』って、俺だけに声が掛かったんだ。
初めてのデートかもしれない。
可愛い彼女と、これから付き合う事になるのかもしれない。
『私、正蔵君の事が好きだよ』
そう言われたら『俺も好きだよ』と答えよう。
いや。
『大好き』の方が良いのだろうか。
『私の事好きかな?』
そう聞かれたら。
『俺と違って宿題をちゃんとやっている、真面目な処が好き』
『日が暮れるまで無くしたイヤホンを一緒に探してくれた、優しい処が好き』
そう答えよう。
いや。
空気を読んで、俺から好きって言うべきなのかな。
いやいやいや。
勘違いだったら、一生の恥だし。
でも……。
付き合えたら幸せだろうな。
そんな風に浮かれ、行ったショッピングセンター。
お洒落した感じの彼女に見惚れつつ、照れつつ、お店を廻っている時にそれは起こった。
テロ。
以前は平和だった俺達の国。
でも、政治家は国民に対し嘘を言っておけばいい、という状況が長く続き、苦しみの中で生活していた国民に怒りが蓄積され、それでも政治家は嘘をつき続け、国民を裏切り続けた。
いや。
新たに人権を無視する法律を作り、国民を監視し、縛る事を始めた。
そして、自分達とその利権に係るモノだけを優遇。
真面目な国民性は、真面目である事は馬鹿と言う国民性に代わり、怒りを我慢するのではなく爆発させる方向へ。
自殺者は前から多かったが、死ぬくらいなら社会への復讐を、という思考にかわって行った。
結果、犯罪者とテロリストが増えた。
そして、包丁や車と言った武器だけではなく、拳銃どころか自動小銃までがそいつらの手に入る様に。
幾ら海に囲まれていても、国境の壁を低くする政策が行われた上に、武器を欲する人が多くなれば。
十分に商売になるのなら、と言った感じで武器が国内に流れ込んで来た。
ああ。
武器の輸出なんて始めたから、武器の管理が甘くなり、横流しされたって言う報道もあったか。
そして、それがテロに使われ始める事になる。
まだ、酷いテロがそれ程無かった為に平和ボケをしたままの俺は、それに当たってしまった。
ショッピングセンターで完全武装のテロリストによって行われた銃乱射事件。
無差別大量殺人。
俺はテロリストから見て柱の陰に居た。
だけど、彼女は……。
「バッバッバッバッバッバッ」と言う変な音と甲高い異常な悲鳴達。
あの時に、状況を理解し彼女を柱の陰に引き寄せていれば。
彼女に覆いかぶさり、地面に伏していれば。
結局は守り切れなかったとしても、その程度の事すら俺は出来なかった。
そんな俺が、状況が理解できずに周りを見回している間に、彼女は凶弾に倒れてしまう。
俺の目の前で。
あっという間に。
少なくとも3発だったか。
倒れた彼女から流れる大量の血。
ほぼ即死だったらしいのに、目から大粒の涙が流れていた。
俺は、何もできずに立っていただけ。
テロリスト達が、俺達の方に来なかったから、それでも死なずに済んだ。
俺も死ねばよかったのに。
事情を聴きに来た綾の家族に『弟の誕生日プレゼンを買うのを手伝ってほしいって言われて、買い物に行っていたんです』、と事実を言ったのも、嫌な思い出だ。
俺と二人で遊びに行っていた、で良かったのに、あの場所に居たのは俺が原因ではないって、言い訳をしたんだ。
それで、綾の弟が泣いたのも、自己嫌悪の原因だった。
俺もあの時に死ねばよかったのに。
その後考えたのは、彼女を守る力が欲しかった、か。
だけど、武術・武道を始めたとして、俺があのテロリスト達から彼女を守れたのか。
無理だ。
警察や軍隊に入れば。
死ねばいいと思っている連中を守らされるだけだ。
不法に武器を手に入れて人を殺す訓練は。
中半端にしかならないし、それで捕まったらただの馬鹿だ。
警察や軍隊に入り、技術を身に付けてから辞めて、普通の生活に戻れば。
装備が無くて守れるのか。
なら、その後不法に武器を手に入れれば。
世間から見たら彼奴らと同類だし、守った後はどうなる?
武器の不法所持で守り続けられないだろう。
と、俺は何もしなかった。
だけど、愛する者を守れる力を持たない、持とうとしない俺は女性と付き合う資格はない、とは思ったか。
気晴らしとか付き合いで結構風俗には行ったけど、もう彼女は作れなかった。
モテルタイプじゃないのもあったんだろうけど。
あの事を想起させるものを避けつつ、現実逃避できる小説、漫画、アニメ、ゲームにハマったのも、あれが理由かもな。
だけど。
それでも、まだ、あのゲームの世界よりは今まで居た世界の方がましだ。
なのに、転生しろ。
ふざけるな。
俺は、もう消え去りたいんだよ。
やっと、親を見送ると言う義務を終えて、俺は終れそうなのに。
あんなのは、二度と嫌なんだよ。
運悪く、あの後テロにはあっていないが、人の世界ではあんな事ばっかりだ。
人なんて滅びればいい。
なのに、救う為に転生しろ、だと。
世界中で、もっと酷い事は幾らでも起こっている。
あのゲームの世界でもだ。
あんな事をまた俺に経験させようと言うのか。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
「待って、待って。
そんな激情を持っていたら、人族として転生できなくなる。
忘れて。
とりあえず、彼女に関する事は一旦忘れて」
「……、なんだ?」
「ふう。なんとか戻って来たか」
「……」
「それで転生してくれるよね」
「嫌です」
「が~ん」
……。
なんか変だ。
何かを思い出せないような。
ああ。
こいつが、神かどうか疑わしい駄目な奴だと言うのは覚えているけど。
「よし!」
「よし?」
「今までの不敬の累計で、神に対する不敬罪により神罰転生決定だよ」
「何言っているの?」
「大丈夫。僕はそれ程気にしていないし、君に渡す力は全て渡すし」
「嫌だと言っていますよね」
「僕も必死なのさ」
「その必死さの方向が間違っているって、何で分からないんですか」
「ふふふ。
否定はしないさ。
で、最後に何か欲しいスキルはある?」
「俺は消え去りたいと言っているんです」
「うん。内心を読んだ感じだと、生産系の全てのスキルと、全ての耐性スキルと、交流術とか、瞬動とか、飛翔とか、明鏡止水とか、魔眼とか、多重存在とか、エナジードレインとか、光輪撃とか、後は……。
3つのお願いスキルを使えば手に入るから、後は自分で頑張ってみて」
「いや。だから嫌だと」
「君が行く事で、頑張る事で、多くの人を救えるから」
「だから、そう言うのも嫌なんですよ。
あれ。
何で、だろう?
小心者だから……か」
「じゃ~ね。
まあ、ボクが望めば補佐さんで会話できるから」
そう神らしき存在が言うと凄い力で雲の地面に吸い込まれ、星々が光っている宇宙のような暗闇の中を引っ張って行かれる。
「この、馬鹿神ィィィィィ」
そう叫ぶと、前世の記憶の再生と言うか追憶が終った。
それと共に、追憶を見て思い出したあの事が思い出せなくなっていく。
何が悲しかったのか、何が怖いのか、何故怒っていたのか、何を諦めたのか、何故嫌なのか、何に絶望したのか、何故すべてに滅んで欲しいのか、何故……。
心に大きな穴が開いている。
そんな風に感じてしまう。
なんで……。
訳の分からない不安や恐怖を感じながら、思い出すのは追憶の内容。
チートを貰って、異世界で生きて行かないと駄目なのか。
死ぬのは、多分何時でも出来る。
怖くて死ねない、と言うのもありそうだけど。
世界から見れば所詮弱者でしかないとはいえ、人の世では最強。
助けたい人を助ける。
そんな事が、出来る様になるのか。
両親は既にいないが。
ゲームのあの人達なら助けられるかもしれないのか。
と言うか、プレイヤーが助けないと、不幸になるのが決まっている人達が大勢いた。
なら、助け出す事に挑戦しても良いんだけど。
なんだろう。
この嫌な感じ。
本当に、これが俺の思考なのか。
追憶の中でも神に思念誘導されているのでは、と思ったが。
単純に、神意に影響を受けてしまったのか?
本当の俺なら、こんな目に遭わせた存在の言う事なんて聞くはずないだろうに。
ああ。
ゲームで仲間にした人はやっぱり救いたい、と言うのは、まあ、違和感がないが。
まあ、あの人達を助けられるなら、神らしき存在の言う事も少しは聞いてあげても良いか。
罪滅ぼしに……、何の罪滅ぼし?
今度は助けられる?
何が嫌なんだ?
何で消え去りたいんだ?
何で全てが滅びるべきなんだ?
資格が……。
分からない。
だけど、心の穴や恐怖や不安は、少しずつ小さくなっている?
心の防衛機制ってやつ?
それとも、心や記憶が操作されて……。
そんな風に考えていると、聞こえたのが。
『思い出せる時が来る事を願っている。
そして、息子の成長を頼む』
『息子の事、よろしくお願いしますね』
そんな、声だった。
主人公は、神罰転生させられてしまった事を思い出しました。
大丈夫なのでしょうか。
そして、聞こえた声は。




