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あと「500m」  作者: 彼岸ライ
一章 雨、のち曇りかもしれない
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3/4

二話

彼岸ライです。前回の続きです。

前回の話を読んでいない方は読んでくれると嬉しいです。


「おーい、凜夏(りんか)。大丈夫?」


はっとする。今は(みつる)とお昼ご飯を食べているところだった。


「あ、ごめん。何も聞いてなかった」

「今日なんか、ずっとぼーっとしてるよ。本当に大丈夫?」


(みつる)にも心配をかけてしまった。黒澤(くろさわ)君にも。


「……うん、大丈夫だよ」

「何でも上の空じゃない?なんかあった?」

「え、そうかな?大丈夫だよ」


というと、(みつる)はちょっと考え込んだ表情になった。


「大丈夫ならいいけど。無理しないでよ。

 なんかあったら言ってね」

(みつる)は、しっかりしてる。

なんかあったとき、頼れる相手がいるのは素直に嬉しい。

「うん。ありがとう」


「話し中悪いんだけど、結城(ゆうき)朝倉(あさくら)が呼んでるぞ。」

走って黒澤(くろさわ)君が話しかけてきた。


「あ、悠真(ゆうま)か。ごめん、凜夏(りんか)。ちょっと行ってくるね」


朝倉(あさくら)君のところに、(みつる)が行くのを見守ってからまた考え込む。

なんであの人、あそこにいたんだろう。いつも通ってるけど、

あの人がそこに来たのは初めてだ。

でも、なんか会ったような気がする。

なんか突っかかるような感じがした。


「ごめん、ただいま!」

考え込んでいると、(みつる)が戻ってきた。

「おかえりー」

「なんかさ、悠真(ゆうま)さ。教科書ないから貸してくれ って

 言ってくるんだよ。ほんとちゃんと持ってきてほしいよね」


不思議な人だったな。口数は多くなかったけど、

言葉に優しさがあったし。どっかで会った気が…。

でも、そんな格好いい人に会ってたら覚えてるし…。


凜夏(りんか)?大丈夫?」


あと、少し悲しそうだった気がする。


凜夏(りんか)!」

少し大きな声で、呼ばれると私はやっと気がついた。


「ごめん、大丈夫だよ」


「なら、いいけど…」





ほとんどの時間を上の空でいると、気づけば、空は少し暗くなっていた。

雨も止んでいて、夕焼けが綺麗だった。


「じゃ、また明日。気をつけてね、凜夏(りんか)。」

「ばいばい。また明日ね。も気をつけてね」


反対方向の(みつる)と別れて、しばらく歩く。

やっぱり、あの人のことが気になって仕方がなかった。

あの看板に行けば、会えるのだろうか。


【県立林明高校まであと500m】


そう書かれた看板が見えると、すぐにあの人を探した。

あの人は、いなかった。

同じ場所に毎回立ってるなんてことはないのに、

少し安心したが、期待が外れた悲しさがあった。


気持ちを切り替えて、看板の近くから離れた。

その時、聞きたかった声が聞こえてきた。


「また、会いましたね」


「え?」


嘘、そんなはずないのに。

一回しか会っていないのに。

心臓の音がやけに大きく聞こえた。


ゆっくりとした足音が聞こえてくる。


「どうかしましたか?」


気がつくと、その人は目の前にいた。


「…ここ近所ですか?」


そう言うと、その人は学校の方をチラッと見ると

左目を細めた。


「どうでしょうね」


また、朝と同じように軽い笑みを作った。

その表情は、朝よりも消えそうだった。


「――あ、あの」


そう言いながら、思わず裾を掴む。

消えそうになるのが怖かった。


彼は、一瞬目を見張った。


「……どうされましたか?」


安心してるようで、どこか怯えているような表情だった。

でも、声は少し優しかった。


「ま、また会えますか?」


そういうと、その人はさっきの笑みとは違う

花が咲くような笑みを浮かべた。


「……きっと、会えますよ」


少し間を置くと、その人は軽い笑みを浮かべた。

このまま帰られるわけにはいかない。

その思いだけが、頭の中にあった。


「では――」



「私、た、高梨凜夏(たかなしりんか)です。明日もここに来るので

 来てくれると嬉しいです」


自分で言うのは、すごく恥ずかしかったが

また会うためにはこうするしかなかった。


その人は、少し驚いたような表情をした。

そのあと、花の咲くような笑みを浮かべ

静かに、学校とは反対方向に歩き出した。


読んでくれて、ありがとうございました。

また、お会いできたら嬉しいです。


✻投稿について

週3:火曜日・土曜日・日曜日

時間:18時10分




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