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あと「500m」  作者: 彼岸ライ
一章 雨、のち曇りかもしれない
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2/4

一話

彼岸ライです。

この話が、誰かの中に少しでも残れば嬉しいです。

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


こんなにチャイムで青ざめたのは初めてかもしれない。

私、高梨凜夏たかなしりんかは、一回も遅刻したことがないという記録を

まさに今変えてしまった。


「本当にすみません……遅れました」


扉を開けると、クラスの人の視線が刺さる。

その時やっと、自分の格好に気付いた。

制服も髪もビッショリ濡れている。


高梨(たかなし)、遅れるなんて初めてだな。

 次から気をつけろよ。まあ座れ」


「はい……すみません」



椅子に座ると、濡れたスカートがさっきよりも冷たかった。


「今日どうしたん?大丈夫?」


と、隣の黒澤(くろさわ)君が小声で話しかけてきた。


「え、あ、うん。一応大丈夫だよ。」


濡れてることよりも、

さっきのことしか考えられなかった。



あの人、何をしているんだろう。


【県立林明(りんめい)高校まであと500m】


その看板の横に傘もささずに立っている人がいた。

こんな変な人避けなければいけないのに。

何かに引っ張れれるように、惹かれるように、その人に近づいていった。


「あの、大丈夫ですか?」


声をかけても、反応はなかった。

視線の先には、私の学校があった。


「学校遅れるんじゃ、ないですか」



「え?」


学生、とも言っていないのに。


「その制服、林明(りんめい)高校だと思います」


その人は、こちらを見ないで言った。


「もうすぐ、始業時間です」


なぜ、始業時間を知っているのだろう。

確かに始業時間はそろそろだ。

でも余計に、この人のことが気になってしょうがなかった。


「あの――何を」


「眺めているだけです」


言いたかったことを、読まれた。

思わず、言葉を失ってしまった。


「何か、疑問なことありますか?」


「……あの、なんで言いたいこと分かるんですか?」


その人は、一瞬目を見張った。


「どうでしょうね」


その人は、軽く笑みを作った。

どこか、今にも消えそうだった。


「早くしないと、本当に間に合わなくなります」


行かないといけない、それでも、せめて名前だけは聞いておきたかった。


「……あの、名前、教えてもらえますか?」


その人は、左目を細くした。


「……名前、ですか」


「それは…言えません」


「え、でも――」


「また、いつか、会えると思います」


「え?」


また、会える?

会いたい、なんて言っていないのに…



「では」


「ちょ、待って――」


そう引き止めたが、彼はそのまま学校から離れるように

行ってしまった。



その時、さしていたはずの傘が地面に落ちているのに気がついた。

そのせいで、制服もびっしょり濡れている。


そしてなぜか、知っているような感覚だけが残った。



読んでくれて、ありがとうございました。

また、お会いできたら嬉しいです。

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