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韓国の土産

*****


皆が韓国から帰ってきて、会社がまた賑やかになった。


韓国へ行かなかった、タマキとイオリがお土産を楽しみにしていたが、リクが空港で間に合わせに買ったチョコレートだけだったので、がっかりしていた。


リクは、ナツにだけは別にお土産を買っていた。

コウとソウル観光をした時に、ナツに似合いそうなキャップや韓国コスメ、お菓子をたくさん買ってきていた。


ナツは大喜びし、全部を一旦試していた。

リクは、韓国での仕事の話や、シキミとソフィのこと、夜景が綺麗でナツを思い出したことなどを話して聞かせた。


「なんで夜景で俺を連想するんだよ」

ナツが解せない顔をする。


「だって綺麗だったから」

リクが当然のように言う。


「なんだよそれ」

ナツは『綺麗』と言われるのは好きではない。

しかし、リクに言われるのは嬉しいのだ。



そこへタニから通信が入って来た。

「ナツ、仕事できるか」


「ああ、いつでもオッケーだぜ」

ナツが答える。


「じゃあ、説明するぞ。

ターゲットはこいつ。名前は三島雷蔵、80歳だ。


放っといてもそう長くは生きないだろうが、もしかしたら100歳まで生きる奴かもしれんしな」

タニがわざわざそう言ったのは、依頼人が『80歳だろうと90歳だろうと、こいつはすぐに死ぬべきだ』と言っていたからだ。


「いわゆる高利貸しだ。

金が必要な者に付け込んで高い利息で金を貸す。

元金はもとより利息を払うために皆働くが、期日に間に合わなかったら即刻地獄行きだ。

男は内臓を売られる、女は麻薬付けにされて風俗、容赦なしだ」


タニがモニターに映し出している男は、いかにも、という顔をしている。

「今までよく無事だったな」

ナツが言う。


「ああ、何度も狙われてきたらしいが、その度にボディーガードに守られてきた。

運のいい奴だ。ボディーガードは何人か死んだがな」


「へー、悪運が強いんだな。

じゃ、俺が終わりにしてやるよ」

ナツがニヤリと笑って言った。


「ああ、頼むよ。

そいつのスケジュールやボディーガードの配置はデータで送る。

コウにも相談しろよ」

タニが言い、通信を切る。


「じゃ、計画を立ててからコウさんにチェックしてもらうか」

ナツは言い、リクとデータを見ながら話し合った。


*****


コウはナツの計画を聞くと、

「オッケー、いいんじゃないか」

とすぐに了承した。


「特に危険もないし、成功率は高いだろう」

コウが言うと、ナツはリクと顔を見合わせてニヤリとした。


「よし、じゃ明日が土曜日だから決行日だ」

ナツはそう言うとコウの部屋を出て、タニに報告した。


*****


翌日。

ナツはあるマンションの7階にいた。


そのマンションはオートロックなので、基本住民以外は入れないが、

まあ、そこはどうとでもなる。


エレベーターが見え、防犯カメラの死角になる位置に立ち、三島が現れるのを待つ。


エレベーターが到着する音が聞こえ、男が2人出てきた。

1人は三島で、もう1人はボディーガードだ。


三島は毎週土曜日に女の住むこのマンションを訪ねている。

その時、いつも数人いるボディーガードは、1人だけ、この階の部屋の前までついて来る。


三島がインターホンを押す。

中から女が答える声がする。


そうするとボディーガードはエレベーターの下るボタンを押す。


女がドアを開ける。


エレベーターが開く。


ボディーガードがエレベーターに乗り込む。


三島が女の部屋へ入る。


エレベーターのドアが閉まる。


女の部屋のドアが閉まる…直前、ナツは滑り込んでドアに手をかけた。


三島の背中が見えた。

ナツはすかさず、スミス&ウエッソンで三島の後頭部に向けて引き金を引いた。


血が飛び散り、女の顔にも血が降り注ぐ。


ナツはそのままドアを閉めると非常階段へ向かった。

非常階段を1階まで降り、ロビーを見回す。


ちょうどエレベーターからボディーガードが出て来るところだった。

ナツは2分ほど待ってからマンションを出た。



*****



シキミが社長とコウにある話を持ってきた。


「ソフィがさ、コウを調べてる奴がいるって言うんだ」

シキミが言う。


「ソフィ? じゃ韓国で?」

社長が尋ねる。


「ああ、コウ何か心当たりあるか?」

シキミが聞くと、


「なんとなく、だが、ないこともない」

コウがあやふやに答えた。


「あるってことだな」

シキミが言う。


「たぶん、俺の名前は知らんだろうな。

思い浮かぶのは、パク社長の側近だったキムだ。

部屋を出る時、目があった…というよりわざと目を合わせたんだ。

どことなく気になる奴だったからさ」


「お前は目だけで人を誑し込めるのかよ」

シキミが呆れた声で言う。


「なんだ、知らなかったのか。俺の目はよく喋るんだよ」

コウが笑い、社長とシキミが苦笑する。


「冗談に聞こえねぇ」


「で、俺の素性はバレてないんだろ」

コウが真面目に聞く。


「ああ、バレることはねぇだろ。

ただ日本人ってのはわかってるからな、どれくらいの伝手があるのか…それにもよるよな」


「大丈夫だ。

おそらく悪意はない。

相手の出方待ちだな」


コウが言い、何かあれば報告をする、ということで話は終わった。


*****


数日後、羽田空港にキムが降り立っていた。


キムはコウの、あの目がずっと気になっていた。

(もう一度会わなければ)

そう思い、日本へ来たのだった。


あれからコウのことを調べたが、結局何も出てこなかった。

日本人ということと、殺し屋ということ。

裏社会の人間に聞いても、日本人の殺し屋については皆口が堅く、キムのような立場の人間は教えてもらうことはできなかった。


しかし、日本に来れば会える気がしていた。

おそらく、向こうから来てくれるのではないか、そんな気がしてならなかった。


丸の内のホテルにチェックインし、ロビーに降りていくと、オープンテラスでコーヒーを飲んでいる男が片手を上げた。


キムが近づくと、

「俺に用事だろ」

男は言い、微笑んだ。



*****


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