韓国にて②
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「連中が30人なら、そう大変でもないな」
シキミが言う。
タニは、
「じゃこの前言った奴らでいいか、えーと全部で9人になるな」
と言う。
「ああ、多いようだが、何せ広いからな。
人質、というか働かされている連中もある程度助ける必要があるしな」
コウが答える。
タニ、コウ、シキミの3人はモニター越しに話をしているところだ。
「明日と明後日で、別々の便にバラけて行かせる。
ホテルも別々にするから、集合場所を決めておいてくれ」
タニが言う。
「わかった。
こっちの警察とのコンタクトはソフィがうまくやってくれる。
全てが片付いたころに来てもらう必要があるからな」
他に打ち合わせすることはないか、と確認したあと3人は通信を切った。
今夜、コウとシキミは、暗くなってから再度下見に行くことにしている。
「建物の近くまで行きたいな」
コウが言うと、
「ああ、見ておいた方がいいだろうな」
シキミが同意した。
そろそろ日が落ちようという頃、コウとシキミは出発した。
夜遅くなってからだと、車のヘッドライトが目立つかもしれないと考えたのだ。
「あそこらへんは他に用事のある人間はいなさそうだからな」
シキミが言う。
コウが運転し、先日ソフィが停車した場所に車を停めた。
辺りは薄暗いが、まだ空の青さがわかる程度には明るい。
しばらくそこで待つことにして、代わる代わる双眼鏡で廃校を覗き込む。
日が落ち、山の中が真っ暗になった頃、2人は動き出した。
既に、目は暗闇に慣れている。
車が入ってきた道を少し戻り、車道の端を身を屈めながら進む。
建物には灯りが灯っているため、方向を誤ることはない。
建物の外には、やはり見張りは1人しかいない。
停めてある車の陰に隠れて、周囲を確認する。
あらかじめ決めていた通り、コウは建物に沿って左方向へ、シキミは右方向へ、それぞれ移動する。
1人の見張りの隙をついて、2人は二手に分かれた。
外を警戒している者は、他にいないようだ。
コウは素早く建物の角を曲がり、横側に入る。
表と違って、横には窓があまりない。
灯りのついている部屋を覗いてみる。
男たちがくつろいでいるのが見える。
ここが連中のたまり場か。
コウは次の窓に行く。
そこは暗く、中はあまり見えないが、誰もいないようだ。
さらに角を曲がり、建物の裏へ入る。
裏はほぼ窓、と言っていいほど、窓が連なっている。
図面で見た通り、廊下側に当たるのだ。
薄暗い窓の中を覗くと、廊下の奥に部屋があり、男が1人歩きながら何かを話している。
よく聞いてみたが、韓国語なのでわからない。
しかし、高圧的なのはわかった。
おそらく電話をかけさせている人たちを叱咤しているのだろう。
次の部屋も、さらにその次の部屋も同じように、男が1人でうろうろしながら監視をしている様子だった。
そうしているうちに、シキミが近づいてきた。
「どうだ」
コウが聞く。
シキミが、コウが見たものと同じことを話す。
「1階は全てこんな感じか…1つの部屋に監視が1人。
2階はどうかな」
「侵入してみるか」
コウが言った。
2階へ続く階段は、左右2か所。
シキミによると、一番端の部屋も他と同じようなものだったということなので、
コウが見た連中のたまり場の側を避け、裏から見て左の方の階段を利用することにする。
階段近くの窓を触ってみる。
やはり鍵はかかっている。
そっと鍵の近くのガラスに穴を開け、鍵を開ける。
部屋の中でそれぞれに電話をかける声がしているので、廊下で少々音を立てても気づかれないようだ。
窓を乗り越え、コウが侵入する。
シキミは外で見張りをする。
コウはそっと廊下に降りると、身を屈めてすばやく階段へ移動する。
階段の上を見上げる。
真っ暗だ。
足音を消して2階へ上がる。
何の気配もない。
廊下を歩きながら部屋を覗いていく。
端まで行き、誰もいなことを確認して1階へ戻った。
(ついでだ…)
コウは1階の部屋を1つ覗いて行こうと思い、部屋の窓から見えない位置に身を屈めた。
歩き回っている監視役だけは見えるので、そいつが後ろを向いた時に少し身を起こして中を覗いた。
向かい合った机の島が6つ、1つの島に机が4つずつ、それぞれの机に電話が置いてあり、全ての電話が使用されている。
(1部屋に24人か…使われている部屋が8部屋だから192人…だいたい合うな)
コウは確認すると、入って来た窓から外に出た。
コウが行こう、と合図し、シキミと一緒に動く。
表の見張りに気付かれないよう、また車の陰に隠れながら、自分たちの車まで戻る。
「楽勝だな、警戒しなさすぎだろ」
シキミが言う。
「まったくだ。素人の集まりなんだろ。
しかし、2階は何の気配もなかったぞ。物もなかったし…あいつらどこで寝てるんだろ」
コウが首を傾げる。
「まさか全然寝かせないわけはねぇよな」
シキミも不思議そうに言う。
「とりあえず障害になるものはなさそうだな。
あとはトップの奴か、なんてったっけ」
コウがシキミに聞く。
「俺が覚えてるとでも?」
当然のようにシキミが答える。
「だな、あとでタニに聞くわ」
コウがわかってた、とばかりに答える。
「で、あとは武器の補充と集合場所、
ソフィに頼むか」
「ああ、頼りになるもんな」
シキミはすっかりソフィが気に入った様子だ。
「じゃ、そっちは頼むな」
コウは気を利かせてシキミに頼むことにしたのだった。
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一方、日本では。
リクがナツを見ている。
「ナツ、やっぱ怖い?」
ナツは黙ってリクを見て頷いた。少し震えている。
「俺、チキンかな」
リクが答える。
「違うよ、当然なんだよ、ナツがそう感じるのは。
俺、タニさんに話してみるよ」
しかし、ナツは
「いや…いいよ…。
乗り越えなきゃいけないよな…」
「でも…」リクが言い淀む。
そして言葉を続ける。
「でもさ、焦らなくていいんだよ、ナツ。
大丈夫になる日がきっと来る。
それまでは無理しなくてもいいし、そんな日が来なくても、俺がいる。
甘えてよ、ナツ」
リクの言葉に胸が詰まる。
「あま……え、る」
ナツはリクの胸に頭を預けて、それだけ言葉を振り絞った。
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