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韓国にて②

*****


「連中が30人なら、そう大変でもないな」

シキミが言う。


タニは、

「じゃこの前言った奴らでいいか、えーと全部で9人になるな」

と言う。


「ああ、多いようだが、何せ広いからな。

人質、というか働かされている連中もある程度助ける必要があるしな」

コウが答える。


タニ、コウ、シキミの3人はモニター越しに話をしているところだ。


「明日と明後日で、別々の便にバラけて行かせる。

ホテルも別々にするから、集合場所を決めておいてくれ」

タニが言う。


「わかった。

こっちの警察とのコンタクトはソフィがうまくやってくれる。

全てが片付いたころに来てもらう必要があるからな」


他に打ち合わせすることはないか、と確認したあと3人は通信を切った。


今夜、コウとシキミは、暗くなってから再度下見に行くことにしている。


「建物の近くまで行きたいな」

コウが言うと、


「ああ、見ておいた方がいいだろうな」

シキミが同意した。



そろそろ日が落ちようという頃、コウとシキミは出発した。

夜遅くなってからだと、車のヘッドライトが目立つかもしれないと考えたのだ。


「あそこらへんは他に用事のある人間はいなさそうだからな」

シキミが言う。


コウが運転し、先日ソフィが停車した場所に車を停めた。


辺りは薄暗いが、まだ空の青さがわかる程度には明るい。

しばらくそこで待つことにして、代わる代わる双眼鏡で廃校を覗き込む。



日が落ち、山の中が真っ暗になった頃、2人は動き出した。

既に、目は暗闇に慣れている。


車が入ってきた道を少し戻り、車道の端を身を屈めながら進む。

建物には灯りが灯っているため、方向を誤ることはない。


建物の外には、やはり見張りは1人しかいない。

停めてある車の陰に隠れて、周囲を確認する。


あらかじめ決めていた通り、コウは建物に沿って左方向へ、シキミは右方向へ、それぞれ移動する。

1人の見張りの隙をついて、2人は二手に分かれた。

外を警戒している者は、他にいないようだ。


コウは素早く建物の角を曲がり、横側に入る。

表と違って、横には窓があまりない。


灯りのついている部屋を覗いてみる。

男たちがくつろいでいるのが見える。

ここが連中のたまり場か。


コウは次の窓に行く。

そこは暗く、中はあまり見えないが、誰もいないようだ。


さらに角を曲がり、建物の裏へ入る。

裏はほぼ窓、と言っていいほど、窓が連なっている。

図面で見た通り、廊下側に当たるのだ。


薄暗い窓の中を覗くと、廊下の奥に部屋があり、男が1人歩きながら何かを話している。

よく聞いてみたが、韓国語なのでわからない。

しかし、高圧的なのはわかった。

おそらく電話をかけさせている人たちを叱咤しているのだろう。


次の部屋も、さらにその次の部屋も同じように、男が1人でうろうろしながら監視をしている様子だった。


そうしているうちに、シキミが近づいてきた。


「どうだ」

コウが聞く。


シキミが、コウが見たものと同じことを話す。

「1階は全てこんな感じか…1つの部屋に監視が1人。

2階はどうかな」


「侵入してみるか」

コウが言った。


2階へ続く階段は、左右2か所。

シキミによると、一番端の部屋も他と同じようなものだったということなので、

コウが見た連中のたまり場の側を避け、裏から見て左の方の階段を利用することにする。


階段近くの窓を触ってみる。

やはり鍵はかかっている。


そっと鍵の近くのガラスに穴を開け、鍵を開ける。

部屋の中でそれぞれに電話をかける声がしているので、廊下で少々音を立てても気づかれないようだ。


窓を乗り越え、コウが侵入する。

シキミは外で見張りをする。


コウはそっと廊下に降りると、身を屈めてすばやく階段へ移動する。

階段の上を見上げる。

真っ暗だ。


足音を消して2階へ上がる。

何の気配もない。


廊下を歩きながら部屋を覗いていく。

端まで行き、誰もいなことを確認して1階へ戻った。


(ついでだ…)

コウは1階の部屋を1つ覗いて行こうと思い、部屋の窓から見えない位置に身を屈めた。

歩き回っている監視役だけは見えるので、そいつが後ろを向いた時に少し身を起こして中を覗いた。


向かい合った机の島が6つ、1つの島に机が4つずつ、それぞれの机に電話が置いてあり、全ての電話が使用されている。


(1部屋に24人か…使われている部屋が8部屋だから192人…だいたい合うな)

コウは確認すると、入って来た窓から外に出た。


コウが行こう、と合図し、シキミと一緒に動く。

表の見張りに気付かれないよう、また車の陰に隠れながら、自分たちの車まで戻る。


「楽勝だな、警戒しなさすぎだろ」

シキミが言う。


「まったくだ。素人の集まりなんだろ。

しかし、2階は何の気配もなかったぞ。物もなかったし…あいつらどこで寝てるんだろ」

コウが首を傾げる。


「まさか全然寝かせないわけはねぇよな」

シキミも不思議そうに言う。


「とりあえず障害になるものはなさそうだな。

あとはトップの奴か、なんてったっけ」

コウがシキミに聞く。


「俺が覚えてるとでも?」

当然のようにシキミが答える。


「だな、あとでタニに聞くわ」

コウがわかってた、とばかりに答える。


「で、あとは武器の補充と集合場所、

ソフィに頼むか」


「ああ、頼りになるもんな」

シキミはすっかりソフィが気に入った様子だ。


「じゃ、そっちは頼むな」

コウは気を利かせてシキミに頼むことにしたのだった。



*****



一方、日本では。


リクがナツを見ている。

「ナツ、やっぱ怖い?」


ナツは黙ってリクを見て頷いた。少し震えている。

「俺、チキンかな」


リクが答える。

「違うよ、当然なんだよ、ナツがそう感じるのは。

俺、タニさんに話してみるよ」


しかし、ナツは

「いや…いいよ…。

乗り越えなきゃいけないよな…」


「でも…」リクが言い淀む。

そして言葉を続ける。


「でもさ、焦らなくていいんだよ、ナツ。

大丈夫になる日がきっと来る。

それまでは無理しなくてもいいし、そんな日が来なくても、俺がいる。

甘えてよ、ナツ」


リクの言葉に胸が詰まる。

「あま……え、る」

ナツはリクの胸に頭を預けて、それだけ言葉を振り絞った。


*****


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