コウの優しさ
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会社のドアの前で社長が待っていた。
「いやーごめんねー、まさか2人ともやられるなんてねー」
悪びれもせず社長がのたまう。
「懲罰もんですよ」コウが無表情で言い放つ。
リクは初めてコウが怒っているように見えた。
「うん、そうだね。ちゃんとケジメはつけさせるよ」
社長はそう言うと、
「報告書は管理部に任せるからね。2人とも今日はお疲れ様だったね」
そう言うと、社長はドアの中に消えた。
リクはコウが怒っているのだとわかった。
自分にではない。社長や管理部やザビやアガタに…。
リクはなんとなく、コウが自分のために来てくれたのではないか、と思った。
コウのことを、まだよく知らないが、この人は、冷たさと厳しさ、そして同時に甘さも持っていると思った。
それは相手によって変わるのか、その時の気分次第なのか、誰かの行動によるものなのかわからないが、確かにコウにはコウなりの基準があるのだろう。
そしてリクは、今会社の廊下にコウと2人で立っていて、どうしようもなくコウの温かさに触れたくてたまらなかった。
いつものように髪や頬に触れてほしかった。
リクがコウをじっと見上げているのを、コウは感じていた。
コウは今社長に対して怒りをぶつけたので、すぐにリクに向き合うことができずにいた。
「コーヒーを入れてくれる?」
リクを見ずにコウが言うと、
「はい」とすぐにリクが答え、2人でコウの部屋へ向かった。
リクがコーヒーを入れる間、コウは煙草をふかしながら先ほどの怒りを鎮めようとしていた。
なぜ怒ったのか…わかりきっている。
リクを危ない目に合わせたからだ。
この仕事に危険はつきものだし、リクも覚悟をしていることはコウも承知している。
しかし、それはまだ自分の目の届く範囲での危険であるべきであり、社長も同じ考えでコウにリクを任せたのではなかったのか。
今回のことを見ても、リクは実力がある。
数年もすれば自分と肩を並べる殺し屋になれるだろう。
だからこそ、それまで犬死させるわけにはいかないのだ。
リクがコーヒーを入れたカップを運んできた。
コウは受け取り、一口飲む。
「うまい、サンキュー」と言い、リクを見る。
リクはじっとこちらを見つめている。
コウは黙って手を差し出した。
リクはその手の高さに頭を持ってくる。
コウは苦笑し、リクの髪を優しく梳く。
「リク」
コウはリクに話しかける。
「次からは断りなよ。俺に叱られるからって」
リクはコウを見上げ、黙ってうなづく。
「なんだろう…」コウは考える。
「ゴールデンリトリバーか、いやそんな大型犬ではない。しかしプードルやチワワなどの小型犬でもない。中型犬…コーギー?…違う」
そこで、ハッと思いつく。
「シバだ」
コウはそう結論づけると満足し、リクの頬に優しく触れてほほ笑む。
リクは、コウが自分のことを本当にワンコとして見ているとは夢にも思わず、頬に触れられるコウの手の温かさを今日も堪能したのだった。
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