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大仕事のあと

*****


工場から、皆一旦会社へ戻って来ていた。


今回も怪我人なく終えることができた。

コウはほっとした。


大勢で動くのは連携をとるのが難しいものだが、この会社の者たちはおおよその計画を立てれば、あとは一人一人が臨機応変に行動することができる。


新人たちも自信がついたのではないか、と思いカンを見ると、タマキとイオリと3人で何やら話し込んでいた。

コウは不思議なものを見るような気がしていた。


「三つ子みたいだよな」

コウの横でシキミが言った。


「ああ、そうか、そういうことか」

コウが納得する。

確かに、カンは双子たちと雰囲気が似ている。


3人は、リクとナツが仲良く話しているのを見ている。

カンはやはりあの2人が気になるようで、双子たちにいろいろと聞いているようだ。


視線に気づいたのか、リクとナツが3人と合流した。

ナツがまた何か毒づいている様子が伺え、リクがフォローしている。

いつもの光景だ。


コウは、イサと一緒にいるミヤに話かけた。

「どうだった? 今日は殺しはなかったけど、うちの会社に慣れるにはいい機会だったんじゃないの」


ミヤは少し考え、ゆっくりと口を開いた。

「なんだか現実味がない、というか、ずっと1人でやってたので、同じ空間に仲間がいて、同じ目的を果たしているっていうのが、異世界のようで…うまく言えないですけど…」


「こんなに大勢で動くのも珍しいんだけどね」

コウが笑い、ミヤの肩を叩く。


「でも、ちゃんと周りを見ていたよね」

そう言うと、コウはタニのところへ行き、一言二言話すと自室へ戻って行った。



*****



コウは自室へ行くと、防弾チョッキを投げ捨て、ホルスターを外し、ソファにどかっと腰を下ろした。


コウはさすがに疲れていた。

誰も何も言わないが、いつの間にかコウが現場を取り仕切る羽目になっていた。


どうせ誰かがやらなければならないのだから、それはいいし、みんな不満がなさそうなので、それもいい。

しかしそのプレッシャーたるや、半端ない。


コウは自分はそういう器ではないと思っている。

他人からの評価と自己評価のギャップが大きいのだ。


「あー、リク来ねぇかなー」

そう呟くと、ドアをノックする音が聞こえた。


「いや、それはないよな」

そう考えながらドアを開けると社長が立っていた。


コウは黙ってそっとドアを閉じた。

社長がいきなり部屋を訪ねてくるのは、よくない相談か、とってもよくない相談の時と決まっている。


「おい、こら!」

社長が叫ぶ。


渋々ドアを開けると、今度は閉められる前にすいっと中へ入ってくる。

デブのくせに身のこなしがスマートだ。


「何ですか? すっごく疲れてるんですけど」

コウは不機嫌を隠そうともせずに言い放つ。


社長が、

「うん、わかってるよ、今日は本当にお疲れ様。

コウが仕切ってくれて助かってる。誰も怪我せずに無事に帰ってきたのは、コウのお陰だ。

これだけ言いたかったんだ」

そう言うと、社長は出て行こうとする。


「え、それだけ? それだけ言いにわざわざ?」

コウが狐につままれたような顔をする。


「うん、たまにはちゃんと伝えようと思ってね」

社長はそう言って、静かに出て行った。


コウはソファに座り込むと、今の社長の言葉を頭の中で反芻した。


「…やられた…あの狸め」

コウはそう呟いて、ふっと笑った。


少しだけ疲れが和らいだ気がしていた。



*****



数日後、シキミがコウのところへやって来た。

「あのさ、カンが狙撃の腕を上げたいって言ってるんだけど、コウ見てやってくれないか。

俺はライフルは使わないからさ」


「いいけど、ライフルならクロの方が適任じゃないか」

コウが言う。


シキミがニヤリとして言う。

「カンはさ、あんたに憧れてんだよ。

ちょっと付き合ってやってくれよ。

リクたちも一緒でいいからさ」


「クロがライフルの種類に詳しいから、クロも連れて行くぞ」

ということで、とコウは引き受けた。



射撃場で、まずクロにライフルを選んでもらうことにした。

カンは痩せていて力があまりないので、遠距離用の大きなライフルよりも中距離用のセミオートライフルがいいのでは、と言い、M16やSR-25を勧めてきた。


カンは試しに撃ってみる。

今までにも狙撃用のライフルは訓練で撃ったことはあったが、レミントンM100のような遠距離用のボルトアクションライフルだったので、自分には合わないと思っていたという。


基本的な撃ち方をクロに教えてもらい、カンが1発目を撃った。

的に命中した。


「これ、合うかもです」

嬉しそうにカンが言う。


「他のも試してみて、一番合うのを使って練習してみな」

コウが言い、カンは何度も頷いて他のライフルを持ってみていた。


リクとナツも、以前クロに教えてもらったことがあり、

「これは合う」だの「これは撃ちにくい」だのと言いながら、試し撃ちをしている。


コウはそれを見て、

「やっぱりクロに仕込んでもらってよかったよな。

基本ができてるから、安心してみていられる」


そう言うと、クロが

「褒めても何も出らんぞ」

と言いながら、まんざらでもなさそうな顔をしている。


カンは1種類のライフルに決めて、練習を重ねていた。


コウが近づき、声をかける。

「仕事の幅が広がるな」


「はい、何でもできるようになりたいんですよね」

カンが何かを決意しているように言う。


「焦らなくてもいいさ。きっといつの間にかできるようになってる。

そんなもんだ」

コウは言い、リクとナツを見る。


「彼らもそうですか?」

カンが尋ねる。


「ああ、2人ともこの会社に入ってからのスタートだからな」

コウが愛おしそうに話すのを、カンが見る。


カンは少し羨ましかった。

コウが2人を可愛がっているのは、会社に入ってすぐにわかった。


「俺にも可愛い後輩ができるかな」

カンがボソッと呟いた。


「まだ新人募集してるからな、できるさ。それと、

お前も俺にとっては可愛い後輩だからな」

コウが微笑み、カンはこの会社に入ってよかった、と心から思った。


*****


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