大仕事のあと
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工場から、皆一旦会社へ戻って来ていた。
今回も怪我人なく終えることができた。
コウはほっとした。
大勢で動くのは連携をとるのが難しいものだが、この会社の者たちはおおよその計画を立てれば、あとは一人一人が臨機応変に行動することができる。
新人たちも自信がついたのではないか、と思いカンを見ると、タマキとイオリと3人で何やら話し込んでいた。
コウは不思議なものを見るような気がしていた。
「三つ子みたいだよな」
コウの横でシキミが言った。
「ああ、そうか、そういうことか」
コウが納得する。
確かに、カンは双子たちと雰囲気が似ている。
3人は、リクとナツが仲良く話しているのを見ている。
カンはやはりあの2人が気になるようで、双子たちにいろいろと聞いているようだ。
視線に気づいたのか、リクとナツが3人と合流した。
ナツがまた何か毒づいている様子が伺え、リクがフォローしている。
いつもの光景だ。
コウは、イサと一緒にいるミヤに話かけた。
「どうだった? 今日は殺しはなかったけど、うちの会社に慣れるにはいい機会だったんじゃないの」
ミヤは少し考え、ゆっくりと口を開いた。
「なんだか現実味がない、というか、ずっと1人でやってたので、同じ空間に仲間がいて、同じ目的を果たしているっていうのが、異世界のようで…うまく言えないですけど…」
「こんなに大勢で動くのも珍しいんだけどね」
コウが笑い、ミヤの肩を叩く。
「でも、ちゃんと周りを見ていたよね」
そう言うと、コウはタニのところへ行き、一言二言話すと自室へ戻って行った。
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コウは自室へ行くと、防弾チョッキを投げ捨て、ホルスターを外し、ソファにどかっと腰を下ろした。
コウはさすがに疲れていた。
誰も何も言わないが、いつの間にかコウが現場を取り仕切る羽目になっていた。
どうせ誰かがやらなければならないのだから、それはいいし、みんな不満がなさそうなので、それもいい。
しかしそのプレッシャーたるや、半端ない。
コウは自分はそういう器ではないと思っている。
他人からの評価と自己評価のギャップが大きいのだ。
「あー、リク来ねぇかなー」
そう呟くと、ドアをノックする音が聞こえた。
「いや、それはないよな」
そう考えながらドアを開けると社長が立っていた。
コウは黙ってそっとドアを閉じた。
社長がいきなり部屋を訪ねてくるのは、よくない相談か、とってもよくない相談の時と決まっている。
「おい、こら!」
社長が叫ぶ。
渋々ドアを開けると、今度は閉められる前にすいっと中へ入ってくる。
デブのくせに身のこなしがスマートだ。
「何ですか? すっごく疲れてるんですけど」
コウは不機嫌を隠そうともせずに言い放つ。
社長が、
「うん、わかってるよ、今日は本当にお疲れ様。
コウが仕切ってくれて助かってる。誰も怪我せずに無事に帰ってきたのは、コウのお陰だ。
これだけ言いたかったんだ」
そう言うと、社長は出て行こうとする。
「え、それだけ? それだけ言いにわざわざ?」
コウが狐につままれたような顔をする。
「うん、たまにはちゃんと伝えようと思ってね」
社長はそう言って、静かに出て行った。
コウはソファに座り込むと、今の社長の言葉を頭の中で反芻した。
「…やられた…あの狸め」
コウはそう呟いて、ふっと笑った。
少しだけ疲れが和らいだ気がしていた。
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数日後、シキミがコウのところへやって来た。
「あのさ、カンが狙撃の腕を上げたいって言ってるんだけど、コウ見てやってくれないか。
俺はライフルは使わないからさ」
「いいけど、ライフルならクロの方が適任じゃないか」
コウが言う。
シキミがニヤリとして言う。
「カンはさ、あんたに憧れてんだよ。
ちょっと付き合ってやってくれよ。
リクたちも一緒でいいからさ」
「クロがライフルの種類に詳しいから、クロも連れて行くぞ」
ということで、とコウは引き受けた。
射撃場で、まずクロにライフルを選んでもらうことにした。
カンは痩せていて力があまりないので、遠距離用の大きなライフルよりも中距離用のセミオートライフルがいいのでは、と言い、M16やSR-25を勧めてきた。
カンは試しに撃ってみる。
今までにも狙撃用のライフルは訓練で撃ったことはあったが、レミントンM100のような遠距離用のボルトアクションライフルだったので、自分には合わないと思っていたという。
基本的な撃ち方をクロに教えてもらい、カンが1発目を撃った。
的に命中した。
「これ、合うかもです」
嬉しそうにカンが言う。
「他のも試してみて、一番合うのを使って練習してみな」
コウが言い、カンは何度も頷いて他のライフルを持ってみていた。
リクとナツも、以前クロに教えてもらったことがあり、
「これは合う」だの「これは撃ちにくい」だのと言いながら、試し撃ちをしている。
コウはそれを見て、
「やっぱりクロに仕込んでもらってよかったよな。
基本ができてるから、安心してみていられる」
そう言うと、クロが
「褒めても何も出らんぞ」
と言いながら、まんざらでもなさそうな顔をしている。
カンは1種類のライフルに決めて、練習を重ねていた。
コウが近づき、声をかける。
「仕事の幅が広がるな」
「はい、何でもできるようになりたいんですよね」
カンが何かを決意しているように言う。
「焦らなくてもいいさ。きっといつの間にかできるようになってる。
そんなもんだ」
コウは言い、リクとナツを見る。
「彼らもそうですか?」
カンが尋ねる。
「ああ、2人ともこの会社に入ってからのスタートだからな」
コウが愛おしそうに話すのを、カンが見る。
カンは少し羨ましかった。
コウが2人を可愛がっているのは、会社に入ってすぐにわかった。
「俺にも可愛い後輩ができるかな」
カンがボソッと呟いた。
「まだ新人募集してるからな、できるさ。それと、
お前も俺にとっては可愛い後輩だからな」
コウが微笑み、カンはこの会社に入ってよかった、と心から思った。
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