偽札工場にて
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大きい工場だった。
こんなところで堂々と偽札を製造していて、よく見つからないもんだ。
コウはそう考えていた。
打ち合わせの翌日、コウは1人で下見に来ていた。
遠目に工場を見ながら1周する。
出入り口は表に大きいシャッターがあり、その横に通常の出入り口がある。
そして裏の方にも1つドアがあった。
窓は上の方にしかなく、中を覗くことはできない。
しばらくぶらぶらしていると、大きなトラックが敷地内へ入って行くのが見えた。
10トンはありそうな大きさだ。
そんなに運ぶのか。
コウはそのスケールの大きさにぞっとした。
おそらく暗くなってから運び入れるのだろう。
運転手はそこで時間まで待つのだろうか。降りてこない。
今日運び出す前にやってしまいたいな。
コウはそう考え、近くで見張っているレイに連絡をとった。
レイは、
「幹部らしき奴らは、今中に4人います」
「4人か、あと1人…どうせなら待ちたいが…
しかし、このトラック1台分の偽札が運び出されるとなると…」
コウは考え、タニに連絡した。
タニはそれを聞くと、
「やった方がいいな」と言った。
「俺がみんなに連絡する。コウも準備しろ」
それを聞いて、コウはレイにそのまま見張りを続けるよう言い、会社に戻った。
会社では皆が準備を終えて待っていた。
コウも銃と防弾チョッキを身につける。
「行こうか」
コウが言い、バン3台で出発した。
車を停め、工場を見る。
レイが来て、変化なし、と告げる。
コウが、シキミにトラックの運転手を眠らせるよう頼む。
任せろ、とばかりにトラックに近づき、運転手に何か話しかけている。
運転手が車を降りて、前輪のタイヤを見に行っている。
そこでシキミが後ろから腕を回し、運転手の首を締め上げる。
5秒で運転手が気を失った。
「じゃ、あとは計画通りに」と言い、
まずザビが表と裏の鍵を開けに行く。
ザビが合図をする。
表から1班、裏から2班と3班が入る。
みんなで時計を合わせ、20時ちょうどに突入する。
表から入った1班は、シキミを先頭に、全員が中に滑り込む。
全体を見回すと、倉庫のように広々として、中は全く区切られていない。
ただ、裏口に近いところに階段があり、2階の部屋へ入れるようになっている。
警備は入口にはいなかった。
機械の影に隠れながら、少しずつ進む。
外側の壁に沿って進んでいくと、中心に近い方に、警備らしい者の頭が見えた。
こちらを背にしている。
シキミは理解した。
警備は外からの侵入者を警戒しているのではない。
中で働いている者を監視しているのだ。
なるほど、やはり技術者を脅して連れて来ていたのか。
シキミは後ろの仲間に合図した。
皆が少しずつ広がる。
シキミが右手を上げ、振り下ろすと同時に、一斉に立ち上がり警備の者たちに向かって発砲した。
リクが、ナツが、そしてイサ、セリ、カンが一斉に両手に銃を構え、確実に警備の者だけを狙って撃っていく。
急襲をくらった警備の者たちも、すぐに銃を構え応戦してきた。
皆、機械を盾にして撃っていく。
裏口から入ったクロたちも、入口付近に警備の者たちがいないことに気づいた。
少しずつ頭を上げ、奥の方を見回すと、警備は中に向かって立っている。
続いて入って来たコウたちも、シキミと同じように、中で働く者たちを監視していることに気付いた。
クロは2階に続く階段を見つけ、その上に部屋があり、おそらく幹部たちはそこにいるだろうと当たりをつけた。
クロはコウに、2階に行くと合図を送る。
コウが頷く。
その時、シキミたちの発砲が始まった。
コウ、ザビ、ミヤは機械を操作している者たちが、驚き、頭を抱えて蹲っているのを確認した。
コウがその中の1人に近づき、
「あなた方は偽札を製造していましたね」と聞くと、
「無理矢理です! 無理矢理連れて来られて…」と、この状況についていけず、年配の男が泣きそうになっている。
「わかりました、逃がします。
あの人たちについて外に出てください。他に何人いますか?」
コウがザビとミヤを指さしながら聞く。
「他に8人です」
ザビがこっちこっち、と手招きする。
コウとミヤで、銃撃に巻き込まれないよう、身を低くして、他の機械の影に隠れている人達に声をかけていく。
シキミたちは関係ない人間に当たらないよう気を付けているが、警備の方は誰かれ関係なく撃ちまくっているように見える。
全員を外に出すのと、シキミたちが警備を制圧するのとほぼ同時だった。
あとは2階へ上がったクロたちがどうなっているのか…。
クロとアガタ、タマキ、イオリの4人は階下の銃撃戦を見下ろしながら、2階に上がっていった。
さすがに2階の部屋にいた者たちも銃声に気付き、ドアを開けて見に出てきた。
クロはすぐにその1人を撃った。
ドアの中を覗くと、スーツを着た男たちが3人、ソファから立ち上がり、銃をこちらに構えて待っていた。
男たちが一斉に撃ってきた。
クロはドアの影に隠れてやり過ごすと、手だけ出して銃を撃つ。
するとアガタが、ひょいとドアの中に入り、続けざまに2人を撃ち倒した。
残った1人が両手を上げ、降参の意思を示した。
アガタはニヤリと笑い、銃を持った腕を降ろす。
と、相手がすぐさま銃を撃とうとした。が、遅かった。
クロが後ろから男の眉間を撃ち抜いた。
「バーカ」とアガタが言う。
タマキとイオリは、というと、階段の途中で立ち止まり、上から下の警備の者たちに応戦していた。
機械を回していた技術者たちは、やはり皆脅されて連れて来られていた。
2週間ほど監禁状態だったという。
中を片付けてから警察を呼ぶので、あと少しだけ我慢してもらうよう頼み、その場にザビとミヤを残して、残りの者は中へ戻っていった。
警備の者たちが、「うー」やら「ぐー」やら「あー」やらと唸っている。
そう、警備の者たちは殺さなかったのだ。
コウとシキミは、やはり『皆殺し』というのが、
「あまりにも乱暴だよな」ということで意見が一致し、組織の幹部だけを殺ることに決めていた。
みんなで警備の者たちの両手、両足を結束バンドで拘束していった。
幹部があと1人殺れなかったことは残念だったが、工場の隅に積み上げられた偽札の山を見ると、
まあ、これでよしとしよう、ということになった。
アガタが、少しくらい盗ってもわかんねぇよな、というのを、誰も聞かなかったことにした。
まだ慣れていない、カンとミヤだけは、ギョッとした顔をしていた。
最後に警察に連絡し、技術者たちを残してコウたちは去った。
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