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新人たち②

*****


「あと何人か欲しいよね」

社長がタニと話していた。


「畠山の被害者があと2人いますよね。

あと、イサとセリも紹介してくれるって言ってっから、聞いてみますよ。


でも、1人1人じっくり検討していった方がいいですね」

タニが言い、早速イサとセリに連絡すると、


「社風に合うかどうか、俺じゃ判断できないんで、見てみてくださいね」と言って、

イサが1人のプロフィールをデータで送ってきたので、まずはここから始めることにする。


現在フリーで殺し屋をやっている25歳の男だ。

フリーと言えば聞こえはいいが、つまるところ下請け、ということである。


しかしながら、下請けでやっていけるということは、やはり腕はいいのだろう。

経歴を見てみると、中学を卒業してから20歳になるまでの約5年間が空白である。

少年院に入っていたにしては長すぎる。


「ここが肝ですね。何をやっていたのか…掘り下げていいのか…」

タニが珍しくぼかした発言をする。

リクやナツのことがどうしても頭をよぎるのだ。


「会ってみようか」

社長が言う。


「社長自らですか?」

タニが少し驚く。

社長自らが動くと言うのは、よほど興味を惹かれるところがあるのだろう。


「セッティングしますね」

タニが言い、社長が頷いた。



*****



ホテルのレストランの一室…個室をタニが予約していた。

そこに社長とイサが座って待っていると、1人の男が店のスタッフに案内されて入って来た。


男がイサを見ると、イサが「よっ」と手を上げる。

男は少しホッとした様子で、社長に頭を下げる。

木宮(このみや)と申します」


「いや、急に申し訳ないね。

イサに君のことを聞いて、会って見たくなってね」

社長が椅子を勧めながら、木宮に言う。


店のスタッフがお茶を持って入って来た。

とりあえずお茶だけ運んでもらうよう頼んでいる。


スタッフが出て行くと、話を続けた。


「フリーでやっていけてるのはすごいね。

以前はコウもフリーでやってたけど、やっぱり腕がないとできないことだよね」

社長が言うと、木宮が首を振る。


「そんなことはないです。

腕に自信がない、と言えば嘘になりますが、自分はただそれしかできないというか、1人でやっていくしかないというか…」


「どこにも所属する気がない?」

社長はここだと思い、聞いてみた。


しかし木宮は、あいまいに苦笑するだけで、それ以上説明する気はないようだった。


こう見えて社長は経験豊富である。

コウがフリーでやっていた時、シキミがヨーロッパで傭兵をやっていた時、タマキとイオリがアメリカでサバゲーを極めていた時、それぞれのタイミングでスカウトしたのは偶然ではなかった。

そして、ホテルの廊下でリクとすれ違った時に、リクの境遇を見透かし、声をかけた時もそうだ。


その社長が、今、この木宮を会社に引き入れたいと感じているのは、これも偶然ではなく必然なのだろう。


「木宮くん、私はね、今日君に会って、君に是非うちの会社に来てもらいたいと思ったんだ」

社長が言うと、それまで黙って聞いていたイサが社長を見た。


「しかし、そのためには、君の秘密を聞かなけらばならない。

どうかな、君の空白の5年間を私に話す気はないかい?」

社長が言う。


木宮は黙っている。


社長が続ける。

「殺し屋になるには、みんなそれ相応の理由があるよね。

自分が殺し屋に向いていると感じた瞬間、殺し屋にならざるを得なかった瞬間、自分で決めた人間もいれば、環境に決められた人間もいる。

1人でやってると、その理由に追い詰められないかい?」


木宮が黙って社長の顔を見る。


社長は待っている。


部屋の中が緊張に包まれる。


しばらくして、木宮が話し出した。

「5年間というのは、私が眠っていた時間です」


想定外の答えに、社長とイサは息を呑んだ。


「『木宮』というのは本名ではありません。

本当の名前は柚木と言います。

聞き覚えがありませんか? 10年前の一家殺害事件…1人だけ意識不明だが生き残った者がいた…それが自分です」


社長は覚えていた。

そんな事件があった。

犯人は指名手配されたが捕まらず…そうだ、犯人は確か数年前に殺されたのだ…そうすると…。


「君が…犯人を殺ったのか」

社長が静かに聞いた。


「はい」

木宮が答えた。

「5年間意識不明だったのが、奇跡的に意識が戻ったんです。

それからリハビリと犯人捜しをやりました。必死で。


リハビリの延長でボクシングも格闘技も、あらゆる方法で自分を鍛えました。

そして、ようやく自分の体に自信が持てるようになった時に、そいつが現れたんです。

運命ですかね、そいつにとっては運が悪かったんでしょうけど」

そう言って、木宮が初めて笑みを見せた。


社長が言う。

「よくやったね」


木宮が社長を見た。

目が潤んでいる。


「初めてです。初めて人に話しました。

こんな話できませんし、1人で…1人で戦ってきました」


イサが口を開いた。

「来いよ」

一言で十分だった。


木宮は黙って頷いた。


*****


こうして、殺し屋が2人増えた。


木宮は「ミヤ」とシキミが名付けた。


今後シキミが名付けるのが恒例となりそうだ、とタニは思い、いや今後がまだあるのか…と考え、人員が増えると自分の仕事も増える…。


殺し屋だけでなく、管理部も増員が必要では、と悶々としているタニなのだった。


*****


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