新人たち②
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「あと何人か欲しいよね」
社長がタニと話していた。
「畠山の被害者があと2人いますよね。
あと、イサとセリも紹介してくれるって言ってっから、聞いてみますよ。
でも、1人1人じっくり検討していった方がいいですね」
タニが言い、早速イサとセリに連絡すると、
「社風に合うかどうか、俺じゃ判断できないんで、見てみてくださいね」と言って、
イサが1人のプロフィールをデータで送ってきたので、まずはここから始めることにする。
現在フリーで殺し屋をやっている25歳の男だ。
フリーと言えば聞こえはいいが、つまるところ下請け、ということである。
しかしながら、下請けでやっていけるということは、やはり腕はいいのだろう。
経歴を見てみると、中学を卒業してから20歳になるまでの約5年間が空白である。
少年院に入っていたにしては長すぎる。
「ここが肝ですね。何をやっていたのか…掘り下げていいのか…」
タニが珍しくぼかした発言をする。
リクやナツのことがどうしても頭をよぎるのだ。
「会ってみようか」
社長が言う。
「社長自らですか?」
タニが少し驚く。
社長自らが動くと言うのは、よほど興味を惹かれるところがあるのだろう。
「セッティングしますね」
タニが言い、社長が頷いた。
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ホテルのレストランの一室…個室をタニが予約していた。
そこに社長とイサが座って待っていると、1人の男が店のスタッフに案内されて入って来た。
男がイサを見ると、イサが「よっ」と手を上げる。
男は少しホッとした様子で、社長に頭を下げる。
「木宮と申します」
「いや、急に申し訳ないね。
イサに君のことを聞いて、会って見たくなってね」
社長が椅子を勧めながら、木宮に言う。
店のスタッフがお茶を持って入って来た。
とりあえずお茶だけ運んでもらうよう頼んでいる。
スタッフが出て行くと、話を続けた。
「フリーでやっていけてるのはすごいね。
以前はコウもフリーでやってたけど、やっぱり腕がないとできないことだよね」
社長が言うと、木宮が首を振る。
「そんなことはないです。
腕に自信がない、と言えば嘘になりますが、自分はただそれしかできないというか、1人でやっていくしかないというか…」
「どこにも所属する気がない?」
社長はここだと思い、聞いてみた。
しかし木宮は、あいまいに苦笑するだけで、それ以上説明する気はないようだった。
こう見えて社長は経験豊富である。
コウがフリーでやっていた時、シキミがヨーロッパで傭兵をやっていた時、タマキとイオリがアメリカでサバゲーを極めていた時、それぞれのタイミングでスカウトしたのは偶然ではなかった。
そして、ホテルの廊下でリクとすれ違った時に、リクの境遇を見透かし、声をかけた時もそうだ。
その社長が、今、この木宮を会社に引き入れたいと感じているのは、これも偶然ではなく必然なのだろう。
「木宮くん、私はね、今日君に会って、君に是非うちの会社に来てもらいたいと思ったんだ」
社長が言うと、それまで黙って聞いていたイサが社長を見た。
「しかし、そのためには、君の秘密を聞かなけらばならない。
どうかな、君の空白の5年間を私に話す気はないかい?」
社長が言う。
木宮は黙っている。
社長が続ける。
「殺し屋になるには、みんなそれ相応の理由があるよね。
自分が殺し屋に向いていると感じた瞬間、殺し屋にならざるを得なかった瞬間、自分で決めた人間もいれば、環境に決められた人間もいる。
1人でやってると、その理由に追い詰められないかい?」
木宮が黙って社長の顔を見る。
社長は待っている。
部屋の中が緊張に包まれる。
しばらくして、木宮が話し出した。
「5年間というのは、私が眠っていた時間です」
想定外の答えに、社長とイサは息を呑んだ。
「『木宮』というのは本名ではありません。
本当の名前は柚木と言います。
聞き覚えがありませんか? 10年前の一家殺害事件…1人だけ意識不明だが生き残った者がいた…それが自分です」
社長は覚えていた。
そんな事件があった。
犯人は指名手配されたが捕まらず…そうだ、犯人は確か数年前に殺されたのだ…そうすると…。
「君が…犯人を殺ったのか」
社長が静かに聞いた。
「はい」
木宮が答えた。
「5年間意識不明だったのが、奇跡的に意識が戻ったんです。
それからリハビリと犯人捜しをやりました。必死で。
リハビリの延長でボクシングも格闘技も、あらゆる方法で自分を鍛えました。
そして、ようやく自分の体に自信が持てるようになった時に、そいつが現れたんです。
運命ですかね、そいつにとっては運が悪かったんでしょうけど」
そう言って、木宮が初めて笑みを見せた。
社長が言う。
「よくやったね」
木宮が社長を見た。
目が潤んでいる。
「初めてです。初めて人に話しました。
こんな話できませんし、1人で…1人で戦ってきました」
イサが口を開いた。
「来いよ」
一言で十分だった。
木宮は黙って頷いた。
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こうして、殺し屋が2人増えた。
木宮は「ミヤ」とシキミが名付けた。
今後シキミが名付けるのが恒例となりそうだ、とタニは思い、いや今後がまだあるのか…と考え、人員が増えると自分の仕事も増える…。
殺し屋だけでなく、管理部も増員が必要では、と悶々としているタニなのだった。
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