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みんなお仕事

*****


殺し屋の仲間が1人増えた。


が、まだ忙しいのは相変わらずだ。


今日は、コウ、リク、ナツ、それぞれが別の仕事をこなしている。



ナツのターゲットは、悪徳弁護士の今泉大輔。

今泉は、最近頭角を現したヤクザたちに協力して、生活保護受給者を食いものにしている。


生活保護を受給している老人たちに、粗末な住居を提供し、消費期限の切れた弁当を配り、その対価として生活保護で受け取った金の全てを奪っている。

よくある手だ。


福祉の手が回らないことをいいことに、老人から搾り取っている。

弱者は自分たちが弱者であることを自覚しつつも、抜け出せず、ただ息をしている。

そこにつけ込む下衆どもは、残念ながらどこにでもいるのだ。


ヤクザたちは佐藤組がなんとかするらしい。

その後のフォローは行政の仕事だ。


ナツはただ、法律をムチに使っている奴を殺るのみ。


弁護士事務所は古い雑居ビルの2階にあった。

古く、暗く、陰気なビルの1室で、弱者の味方で金がない弁護士とやらを演出しているのだ。


ナツは、相談者のふりをしてドアをノックした。

弁護士が自ら出てきて、ナツを見ると金の匂いをかぎ取ったかのように愛想が良くなる。


(一番嫌いなタイプの人間だ)

ナツは考え、他に人がいないか見回した。


「お一人でされてるんですか?」

ナツは聞いた。


「ええ、貧乏弁護士なんでね、事務員も雇えないんですよ」

今泉は照れたように笑いながら言った。


「ふーん」

ナツは、じゃあいいか、と、スミス&ウエッソンをシャツの下につけたホルスターから外すと、銃口を今泉に向けた。


今泉は驚き、声も出せず後ずさる。

「き、君はいったい…」


すぐに殺らなかったのは、少しでも恐怖を味合わせる時間を与えたかったから。


「お前、気持ち悪い」

ナツはそういうと、引き金を引いた。


*****


リクのターゲットは、ある企業の三代目社長の御厨寛太だ。

この企業は同族会社で、三代目は二代目の息子がなるはずだった。


しかし、同族であることを嫌った常務取締役の御厨が、人を雇って二代目の息子の悪評を立てた。

更に息子がゲイであることを公表し、偏見のある株主たちを煽り立てた。

息子は家の中で首を吊って自殺した。


二代目も失意の中、息子のあとを追うように亡くなった。

一部の株主が御厨を社長に祭り上げ、そのまま御厨は野望を果たした、というわけだ。


しかし、二代目から厚い信頼を受けていた社内の者たちは納得できるはずがない。

三代目になるはずだった息子もまた、社内で働いており、その誠実さは皆が知るところだった。


そして1人の取締役が顧客を通して、会社に依頼してきたのだ。


御厨は自分を狙ってくるような者はいないと高を括っていた。

皆を見下し、そんな勇気のあるものはいないだろうと。


護衛もつけず、会社の警備も節約のため半分に減らした。


リクとしてはやりやすいこと、この上ないターゲットだった。


清掃員の恰好をして、社長室の近くのトイレを張っていた。

御厨が社長室を出て、トイレに入っていく。


トイレは社長室に近いため、社員は誰も使わない。

リクは少し待ってから、トイレに入る。


社長が用を足し、手を洗っているところでリクは入って行った。


「なんだ、私が使っているのが見えないのか」

御厨がリクに向かって高圧的な言葉を発する。


そんな御厨を正面からみて、リクはサバイバルナイルを御厨の胸に一突き刺した。

肋骨をすり抜け、心臓に突き刺さる感覚があった。


返り血を浴びないよう気をつけながら、リクはナイフを抜いた。

一瞬ののち、帯びたたしい血が御厨の胸から溢れだした。


その時には、リクはすでに廊下に出て階段に向かっていた。


*****


コウの仕事は狙撃だった。


高層ビルの屋上から、少し離れたそれも高層ビルの屋上にあるヘリポートに狙いを定めている。


コウの手にあるのは、風に強いボルトアクションタイプのスナイパーライフル、 M40A5。

バイポッドの足の角度を調整しながら、ターゲットのヘリが来るのを待つ。


ここで狙うのは理由がある。

ターゲットはいわゆる上級国民と呼ばれる高官であり、近頃の傲慢な言動で国民の怒りを買っており、ボディガードに囲まれ、誰も近づくことができないよう警戒している。


こんなに警戒するなら、少しは言動を慎むってことをすればいいだろ…。

コウは考えながら、ヘリを待つ。


しばらくすると、ヘリの音が聞こえてきた。

コウが狙う屋上へ降りていく。


コウはスコープを覗き込み、ヘリのドアに照準を合わせる。

できればボディガードは傷つけたくないが、ターゲットと重なっていれば致し方ない。

それも彼らの仕事のうちだ。


屋上で待っていた側近が、ヘリのドアを開けた。

ボディガードが1人、辺りを警戒しながら降りてきた。


コウは1つ息を吐くと、息を止め、引き金に掛けた指に力を入れた。


2人目が降りてきた。

ターゲットだ。

コウは力を込めて引き金を引いた。


重い弾丸は風の抵抗を受けることなく、ターゲットの頭に命中した。


コウはすぐに頭を伏せ、ライフルを分解する。

ライフルをケースにしまい、頭を低く保ったまま屋上の出口へと走る。


おそらくここからの狙撃だとすぐにわかるはずだ。

コウは滑るように非常階段を下りていく。

10階分程降りた時、下の方から声が聞こえてきた。


コウは非常口からビルの中に入った。

オフィスビルの階層だ。

コウは何げなくオフィスの人間に溶け込んだ。


ゆっくりとエレベーターのボタンを押し、エレベーターが着くのを待つ。

内階段の上から、下から、誰かを探す声が聞こえてくる。


エレベーターが到着する。

コウは他の社員と一緒に乗り込む。


既に地下駐車場の階のボタンは押されている。


地下駐車場に着くと、エレベーターの前に男たちが待ち構えていた。

ビルに入っている会社の社員たちと同様、関係ない人間の顔をしてコウも出て行く。


コウが駐車している場所ではなく、社員たちが向かう方向へコウも歩く。

だんだんと社員たちが散らばっていくのを確認して、コウも自分の車へ向かう。


もう誰もコウを見ている者はいない。

コウは車に乗り込むと、エンジンをかけ、静かに走り出した。


*****



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