新人たち①
*****
シキミの案を聞き、タニは畠山が声をかけて独立したであろう殺し屋たちをピックアップした。
3名の殺し屋が独立していた。
タニはその3名の経歴、能力、性格を調べ上げた。
3名はもともと、他の組織に所属しており、特に問題を起こしたというようなことはなかった。
畠山が目をつけたからには、そこそこ優秀であることは間違いないのだろう。
タニは、オキにそれぞれを尾行させた。
オキは1週間ほどで報告をしてきた。
「3人とも仕事してる形跡はないね」
オキが言う。
「結構、日中とか夜中とかランダムに追けてみたけど、全くそんな気配なし。
開店休業じゃないの」
「ひでぇな、そんなんじゃ畠山に騙されたようなもんじゃねぇか。
怒ってないのか」
タニが疑問を口にする。
オキは、
「見てるだけじゃ、わかんねぇな。接触してみれば」
と言って報告を終えた。
タニは社長に相談する。
「試しに1人に接触してみますか」
「そうだね、そうしてみようか。
誰がいいかな」
「相手にもよるでしょうが、シキミが圧があっていいんじゃないですかね。
言い出しっぺだし」
タニが言う。
ということで、シキミに候補者の1人に接触させることになった。
話す内容はただ1つ。
独立を止めて、新たな会社に所属する意向があるかどうか、だけだ。
候補者は、オキが尾行している際、人柄が良さそうだと感じた者を選んだ。
どうして人柄が良さそうだと感じたか聞いてみると、オキは、
「なんかさ、イオリに似てんだよな、雰囲気が。
明るくて、全然殺し屋に見えなくてさ、ただ…
1回大学生くらいの男がガキにぶつかって、舌打ちしたことがあったんだけどさ、
それを見た時のあいつの顔が『怖ぇ~』ってくらい変化したの…似てんだろ?」
皆が納得した。
そういう奴なら、まあこちらとしても扱い慣れているし。
彼の名前は神崎という。
早速、シキミが神崎の後をつける。
神崎は何もすることがなさそうに、ぶらぶらしている。
公園に入りベンチに座ると、尻のポケットから文庫本を取り出し読み始めた。
シキミが、近くのベンチに座ってしばらく見ていると、神崎が徐に立ち上がり、シキミのところへやって来た。
「何ですか?」
神崎がぶっきらぼうにシキミに尋ねる。
シキミが「すまん、感じ悪かったよな」
と謝る。
神崎は、シキミの風貌で、そう返されるとは思っていなかったようで、少し戸惑いつつ聞いた。
「同業者ですよね」
「ああ」
シキミが頷く。
「ちょっと話したくてな。座らねぇか」
と、自分の横を指す。
神崎は素直にシキミの隣に腰を下ろした。
「スカウトだよ」
シキミが単刀直入に言う。
「だと思いました。最近流行りですかね」
神崎が苦笑する。
シキミも同じく苦笑し、
「コウって知ってるか」と尋ねる。
「誰でも知ってますよ」神崎が答える。
「俺はシキミ。コウの同僚だ」
シキミが言うと、神崎は初めてきちんとシキミの顔を見た。
「へぇ…」
神崎はどうリアクションをとっていいのかわからないように言葉を漏らした。
「俺らんとこ、来ないか」
シキミが言う。
「俺が?」
神崎が驚いて聞き返す。
「何で驚いてんだ? 畠山が独立を勧めるくらいだから優秀なんだろ?」
シキミが当然のことのように言う。
「あ、いや…そんな…コウさんがいる会社でやっていけるほどには優秀じゃないかも、です…」
神崎が言うと、シキミが声を出して笑った。
「なんだ、お前! 謙虚だなー!
気に入った! 来い、今すぐ」
シキミはそう言うと、驚く神崎の腕を掴んで引っ張った。
*****
早速会社に連れてこられた神崎は、気づけば社長とタニ、シキミの3人を前にして立っていた。
シキミが言う。
「神崎くんだ。俺が気に入ったから連れてきた。
いいよな」
社長がニコニコして言う。
「こっちはいいけど、本人は? 神崎くんはどうなの?」
シキミが神崎に説明する。
「あ、これ社長ね。そしてこっちが管理部のタニ」
「あ、タニ、今日コウいるかな」
タニが答える。
「たぶん。呼びますか」
「頼む」シキミが答え、神崎は何も発言する隙がない。
すぐに、コウとリク、そしてナツまでが野次馬根性でついてきた。
「あ、コウ、こいつ、今スカウトしてきた神崎。
神崎、これがコウ」
シキミがなぜか張り切っている。
コウが神崎を見て微笑む。
「シキミに拉致されたんだろ、大丈夫か」
神崎は、もともと線が細く顔が小さい、今時の若者に見えるので、コウにとってはシキミの被害者にしか見えない。
神崎は、伝説化しているコウと、子供のようなリクとナツが一緒に来たことにより、わけがわからず頭が真っ白になっていた。
「あ、えと、神崎と申します。
シキミさんにスカウトされて…自信がないと言ったんですけど…なぜか、今、ここにいます…」
神崎はしどろもどろになりつつも何とか今の状況を説明した。
「自信はなくていいよ。みんな最初はそうだ。
シキミがもろもろ教えてくれる。あ、君がよければ、だけど。
シキミはたぶん君の意向をまだ聞いてないんだろ、どうせ」
コウが言うと、神崎が間髪入れずに答えた。
「よろしくお願いします!」
というわけで、社長とタニを中心に、神崎が以前所属していた組織とのあれこれや、今使用している銃のことやら、会社のルールやら、神崎が一番気になっていたリクとナツの正体やらを一通り話し、
シキミが、
「お前、今日から『カン』な」
と言って、神崎の怒涛の一日が終わったのだった。
*****




