殺し屋だよな
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ユゲは警視庁の元の職場に戻った。
同僚は最初から疑っていなかったようで、何事もなかったように日常を取り戻したらしい。
隠れ家から出て会社へ来た時、ユゲは泣きそうな顔をして何度も頭を下げていた。
電話では気丈に振舞っていたが、やはり不安だったのだろう。
ユゲは警察官であるにも関わらず、リスクを背負って会社の手伝いをしてくれている。
日頃の借りを少しでも返せてよかった。
皆がそう思っていた。
「ところで、ユゲはどこに隠れてたんだ?」
コウがタニに聞く。
「言わないんだ。特別な場所なんだろうさ」
タニが言う。
「そうか、そういう場所があってよかったな。
俺も隠れ家を作っとこうかな。変な奴にバレないところ」
コウは畠山のことを考えて言った。
「あれからまた接触が?」
タニが聞く。
「いや、あの電話以降はない」
しかし、コウはこのままでは終わらない気はしていた。
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数日後、リクとナツが2人で依頼を受けた。
「今回のターゲットはこの女2人、見上かなえと森明日香。
2人とも30歳、独身。2人でルームシェアをしている。
少し前までもう1人同居していた女がいた、卯月優美。
この卯月が何か月も行方不明になっていたが、数日前遺体で発見された。
遺書があったからすぐに自殺と断定されて捜査はされなかったんだが、
卯月が行方不明になってから、見上と森の金遣いが荒くなっている。
卯月はコスメ関係の企画の仕事をしていて、結構給料はよかったんだが、
通帳にはほとんど金は残ってなかった。
行方不明になる少し前から結構な頻度で引き出されていた。
卯月の兄が気になって調べたら、どうも同居していた2人が怪しいってことに気づいた。
証拠はない。兄のただの勘だ。
もちろん身内の勘で殺しはできないからな。
こっちも調べたよ。
結果、真っ黒だったね。見事に。
2人が金目当てで卯月を殺したことに間違いない」
タニが一息ついて続ける。
「で、卯月の兄が結構目立つことやってくれちゃってさ、
2人の家の前やら職場やらで、怒鳴りまくったところを目撃されてる。
だから、ただ殺したら兄が疑われる。
兄の確固たるアリバイがある日に殺ってくれっていう話だ」
「へーい」
ナツが返事をする。
「じゃ、お兄さんがアリバイを作れる日時を指定してくるんですか」
リクが尋ねる。
「そうなるな。
一応、3日以内って条件を出したがな。
女たちは、最近は金もなくなったんだろう、職場と家の往復がほとんどだ」
「わかりました。
ナツ、打ち合わせしよう」
「オッケー」
2人は仲良く自室へ戻って行った。
タニは2人を見送りながら自身へ問いかける。
殺し屋…だよな…。
翌日、早速卯月の兄のアリバイが作れるという連絡があり、その日に決行となった。
2人は、前もって家に忍び込み、1人ずつ帰宅するのを待ち伏せすることにした。
見上は百貨店の販売員をしており、遅番でも19時には終わる。
まっすぐ帰宅すれば、20時には家に着く。
一方森は、Wワークをしており、昼は事務員、夜はカラオケボックスでバイトをしている。
調べでは、昼の仕事が終わると、一旦着替えに帰ってくるようなので、そこを狙っている。
リクとナツは18時に2人が住むアパートに侵入した。
アパートの鍵は古く、すぐに開けることができたため、まだ明るい時間だったが怪しまれることはなかった。
入ってすぐに台所、奥に6畳の部屋、そしてその部屋の隣にもう1つ6畳の部屋が続いている。
2DKだ。
6畳の部屋をそれぞれが使っているのだろう。
置いてある家具は統一感がなく、生活するためだけの部屋、という印象だった。
1番奥の部屋で2人は待つことにした。
1時間後、まず森明日香が会社から帰宅した。
着替えてすぐバイトに行くのだろう。
森の部屋は、2人が待つ方の部屋だということはわかっていた。
森が部屋に入ってきた。
そして男が2人いるのを見て声を出しそうになる。
すかさずナツが口を塞ぎ、そのまま後ろに回って腕で首を絞める。
しばらくすると、森はぐったりと動かなくなった。
リクが首の脈を調べ、「オッケー」と言った。
2人は森をベッドに寝かせ、布団をかけた。
さらに1時間後、今度は見上が帰宅した。
見上は、玄関に森の靴があるのを見て首をかしげる。
「明日香、いるの? バイトは?」
そう言いながら奥の部屋へ入ってきた。
今度はリクが見上の首を絞めつける。
見上は手でリクの腕をほどこうと暴れたが、すぐにあっけなく動かなくなった。
「ナツ、確認してくれる?」
ナツは見上の脈を探り、「よし」と言った。
2人は見上もベッドに寝かせ、布団をかけた。
森のバイト先の人間か、もしくは明日2人の勤務先の人間が怪しむまでは見つからないだろう。
こうして依頼が完了した。
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その頃、コウは再度畠山の電話を受けていた。
着信拒否をしようとも考えたが、一度会ってきちんと話した方がいいと判断し、電話をとった。
「しつこいな」
コウが言うと、
「諦められませんから」
畠山が言う。
「いいかげん、はっきりさせたい」
コウが言う。
「そうですね、そろそろ頃合いかと思っていました」
畠山も同意する。
「あなたが指定する場所へいきますよ」
コウは、考えた。
以前行っていた隠れ家のバーにしようか、どうせあそこは隠れ家ではなくなったしな。
コウは場所を教え、日時を決めた。
畠山がどんな手で自分を勧誘するのかわからない。
しかし、不気味な印象は拭えない。
断れない条件というのはないだろうが、この会合が気持ちよく終わるとは考えられなかった。
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