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自分たちのやり方

*****


ユゲから会社に連絡があったのは、最初のメールから数時間後だった。


「すみません、ご心配をおかけして」

ユゲはまず謝罪の言葉を口にした。


タニが(社長では埒が明かないので)

「それは構わない。安全なところにいるのか?」

と尋ねる。


ユゲが、

「それは大丈夫。絶対見つからないところにいる」

と答えた。


「よかった。で、どういう状況?」とタニが尋ねる。


ユゲは今朝出勤してからのことを話した。


「阿部警視のことは知りません。会ったこともないはずです。

今、私が知り得た情報は、警察無線を受信したものだけですけど、

阿部警視が、昨晩深夜にナイフで胸を3か所刺されて殺害されたこと、

場所は警視の家から10kmほど離れた路上、

監査室に、何故か警視と私が仲良く映っている写真が送られてきたこと、

私に逮捕状が出ていて、私は逃亡していること、

このくらいですかね」


「動機については、まだわかってない…というかまだ決めてないってところでしょうか」

ユゲは淡々と情報を伝えた。


タニはそれを聞きながらメモをとっていた。


「ユゲからメールが来た後、おそらくその事件のことかと思って、俺も調べてみた。

阿部警視というのは、既婚者だが女にだらしないところがあったらしい。

写真が合成じゃないのであれば、ユゲに似た女を用意して撮らせたんだろうな。


まず明らかにすべきは、なぜユゲが嵌められたのか、

ただの女関係の殺しなら、わざわざユゲを嵌める必要はない。


きっと警察内部の人間が阿部警視を殺ったか、大物を庇うためにスケープゴートが必要だったか。

そんなとこだろう」


「ですね、まったく何で私がこんな目に」

ユゲは怒りをエネルギーに変えていた。


「とにかく、ユゲは動けないだろ、食料とかは大丈夫なのか?

必要なものは?」

タニが聞くと、


「ああ、タニは気が利くね、お嫁さんにしたいよ」

ユゲが言う。

「大丈夫。備蓄品があるから、しばらくはしのげる。

ヤバくなったら頼むよ」


「わかった。場所は聞かない方がいいのか」

タニが心配そうな声をしている。


「そうだね、お互いのために」

ユゲがあっさりと答える。


「無理すんな、頼れよ、社長もコウも、みんなもいる」

タニがそう言ったとき、コウが割り込んできた。


「ユゲ、タニが最近おかしいんだ。優しくてさ、こいつ死ぬかもしれない。

葬式までには解決してやるよ」


ユゲが大笑いする声が聞こえた。


「じゃ、また連絡する」

そういうとユゲは電話を切った。


タニが恨みのこもった目でコウを睨んでいた。



*****



ユゲの無実を晴らすためには、真犯人を見つけるしかない。

タニとコウの意見は一致していた。


しかし、捜査に関しては2人とも素人なので、ある程度推測をして怪しい人間を1人ずつ探っていくしかないだろう。


阿部警視がいなくなって得する者、弱みを握られていた者、恨みを持っていた者、

ナイフの傷が深かったのであれば男だろうし、浅かったのであれば女の可能性もある。

やはり警察内部に情報提供者がほしいところだ。


こういう時はミズキを使おう、ということで、ミズキに女性警察官御用達のカフェに潜入させることにした。


ミズキは美麗と品と言葉の魔術により、いろいろな情報を引き出してきた。


まず、ナイフの傷は深い。

殺害された場所は見つかった場所と思われる。

そこは阿部警視が行きそうにないと思われるため、車で連れて行かれたか、一緒にドライブしていたか。


一方で、ユゲを犯人に仕立て上げるべく動いている検事と監察官も探る。

これら3人は出世のために、大物を庇うくらいしそうに見える。


そういう話をユゲとしていると、ユゲが意外なことを言った。

「カモクはそうじゃないかもしれない。

検事とひょろは、すごくイヤな感じがしたけど、カモクはそうでもなかった、というか何も知らされてないように見えた」


「カモクに近づいてみるか」

コウが言い、ユゲも賛成した。


「で、カモクの名前は?」

「・・・・・」

「お前なー」

いま一つ緊張感がない3人だった。



翌日、コウが言った。

「あのさ、あれから考えたんだが、捜査なんてやっぱり俺たちには無理なんじゃないか」


「じゃあ、諦めるのかよ」

タニがむっとして言う。


「いや、俺たちのやり方でやるってことさ。

今、殺しの依頼、少しは来てんだろ」


「ああ、そりゃな」


「よし、1つ俺に回せ」

コウはニヤリと、悪い顔をして言った。


*****


コウの殺しのターゲットは相原茂という元記者だ。

会社を辞めてもネットに記事を書いて投稿していたが、フェイクニュースを流しては世間を騒がしていた。

騒がしているだけならまだよかったが、ある時、心無い記事のために自殺者が出た。

依頼は遺族からのものだ。


コウは相原に、面白いネタがあるといって呼び出した。

呼び出した先は、ある高級マンションだった。



ユゲの事件の担当検事の名前は阿比留と言う。

阿比留は独身で、なかなかいいマンションに住んでいる。


コウは阿比留の留守中に相原を呼び出し、中に入れ、ソファに座らせると一気にナイフを胸に突き刺した。


事件の最中にも関わらず、阿比留は毎日同じ時間にマンションに帰ってくる。


阿比留はマンションの鍵を開け、中に入ると、知らない男がソファに座っているのを見て驚いた。

しかもナイフが胸に刺さっている…。


「し、死んでいるのか…」

阿比留は恐る恐るソファに近づいていく。


その時、後ろから腕を回され、首を締めあげられた。

阿比留はそのまま意識を失った。



阿比留が目を覚ますと、部屋は真っ暗だった。

それでも自分の手にナイフがあることはわかった。慌てて投げ捨てる。


暗闇に少しずつ目が慣れてくると、ソファには相変わらず男が死んでいるのが見えた。

何が何だかわからずうろたえていると、男の声がした。


「阿比留さん、その男、殺したんですか」


「いや、俺じゃない、俺はやってない。帰って来た時にはもう死んでいた」


「本当に? でもナイフにはあなたの指紋、服にはその男の血がついてますよ」


「お、俺じゃない、俺じゃない、俺じゃ…」


阿比留はパニックになって叫んでいる。


「まあ、落ち着きましょうよ、阿比留さん。

私は知ってますよ。阿比留さんが殺したんじゃないってこと。

でも…私が黙ってたら、阿比留さんが犯人ってことになりますね」


「あああああ、頼む、何でもするから、証言してくれ、俺がやったんじゃないって…」


「ほう、何でも、してくれるんですね」


コウはニヤリとして続けた。

「じゃあ、阿部警視、殺したのって誰なのか、教えてください」


「え…? 阿部…警視…」


「そう、知ってますよね、真犯人」


「あ、いや、俺は知らない、そんなこと…」


「そうですか、じゃあ、その男のこと教えておきますね。

知らない男を殺したってことないですもんね。

その男は相原…」


「待て! 待ってくれ!

し、真犯人を聞いて、どうするつもりなんだ。

そ、それよりお前は誰だ」


今さらかよ、と思い無視した。

「もちろん逮捕してもらいますよ、ケイサツに」


「犯人は弓削という警察官だ、痴情のもつれで…」


バン!

コウがテーブルを拳で思い切り殴りつけた。

ガラスのテーブルが粉々になる。


「ひぃ…」

阿比留は声も出せず震えている。


「もう一度だけ、聞きますね。

阿部警視を殺した真犯人は、誰ですか?」

コウはゆっくりと噛んで含めるように聞いた。


阿比留は観念したように、小さな声で

「阿部警視の上司の部長、鴨川警視正…」


「動機は?」


「鴨川警視正が未成年者とホテルへ行ったことで脅していたらしい」


「明日、逮捕しますよね。

それまではこの死体とナイフ、このままにしておきますから」


そう言うとコウは、待機していたザビと交代し、部屋を出て行った。



*****


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