ユゲのピンチ
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「ユゲがヤバい」
社長からコウの電話に届いた第一声だった。
「今、ちょうど会社に向かってる」
コウは会社へ行くために車を運転していた。
社長は慌ててるようなので、会社に着いてからの方が要領を得るだろう。
会社に着くと、コウはすぐに社長の元へ行った。
社長はタニと向かい合って、不安そうにジタバタしていた。
コウはタニに聞いた。
「何があった?」
「ユゲが嵌められたらしい。
警察に追われている」
タニが言う。
「こっちと関係があるのか」
コウが一番心配なことを聞いた。
「いや、たぶんそうじゃない。警察内部の問題だろう。
まだ詳しいことはわからないんだ。
ユゲから会社にメールが届いた。こっちの方がセキュリティが安全だからだろう」
そのメールには、『嵌められた。監察官に追われている。隠れたら連絡する』とあった。
「連絡があり次第、動けるようにしとく」
コウが言う。
「ああ、俺は何があったか調べてみる」
タニもすぐにパソコンへ向かう。
社長はその間ずっとジタバタしていた。
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ユゲは現役の警察官だ。
肩書は、警察庁、デジタル犯罪分析センター所属、警部補。
以前、人身売買の情報が欲しいときに、イケメンのミズキに本領を発揮させ落とさせた。
それ以来、いざという時に何かと協力してくれている。
その日、ユゲはいつものように警察庁内の自分の部署に出勤した。
すると、なんとなく空気に違和感を感じ、周りを見回した。
同僚の1人が近づいてきて、
「弓削、何やらかした? 監査室がお前を探してるぞ」
と教えてくれた。
「監査室…」
ユゲはとっさに会社のことを思い浮かべた。
(まさか、会社のことバレたんじゃ)
すぐに監察官が2人、ユゲのところへ来て、
「話が聞きたい」と言い、別室へ連れて行かれた。
ユゲはとにかく黙秘をしようと決め、監察官へついて行った。
取調室ではなく、会議室だったので少し安心し、ユゲは言われるまま椅子に腰を下ろした。
「早速だが、阿部警視とは面識があるか?」
監察官の1人(背が高くひょろ長い感じの方)が聞いてきた。
阿部警視…すぐには思い出せなかった。
「お名前はどこかで聞いた気がしますが…」
ユゲは曖昧に答えた。
「そうか、じゃこの写真はどういうことかな」
ひょろがテーブルの上に差し出した写真には、ユゲと親しそうに腕を組んでいる中年の男が映っていた。
「???」
ユゲには全く心当たりがなかった。
「これ、合成じゃないですか? 全く心当たりがありませんが」
ユゲが言うと、ひょろはニヤリとし、
「合成かどうかはとっくに判定済みだ。
正真正銘、君と阿部警視が映っている写真だよ」
ユゲはとりあえず、この写真のことは置いといて、先の話を聞きたかった。
「それで、その阿部警視がどうかされたんでしょうか」
ひょろはその問いには答えず、
「君は昨夜どこで何をしていた?」と聞いてきた。
ユゲはピンときた。
阿部警視が殺され、私に疑いがかかっている。
そして、昨夜の私のアリバイはない。
なぜなら、自分の部屋で1人でドローンで遊んでいたからだ。
ああ、こんなことなら、いつものようにオンラインゲームでもやっておけば、ログでアリバイが証明されたのに…。
もんもんと1人で反省していると、ひょろが強い口調でまた聞いてきた。
「昨夜の君のアリバイを聞いているんだがね!」
「あ、はい、アリバイを証明してくれる人はいません。
部屋に1人でいたので」
ユゲは素直に答えた。
そして、
「もしかして、阿部警視とやらが襲われたのでしょうか」
と聞いてみた。
ひょろはユゲをジロッと睨み、何も答えない。
ちなみにもう1人の何も話さない監察官は普通にイケメン【風】で、「寡黙な俺」を演出しているように見える。
(どうしようかな~)
ユゲは考えた。
あんな写真がある以上、阿部警視との関係が何かあるとしか思われない。
アリバイもない。
動機は?
阿部警視は既婚者なのだろうか。
だとしたら結婚を迫って断られた私には動機がある…迫っても断られてもいないが。
(うむ…)
あの写真は、私をピンポイントで嵌めているということだ。
なんで私?
合成じゃないとしたら…何?
正解が出ないまま考えていたら、会議室のドアが開き男が入ってきた。
男はひょろとカモクと3人でひそひそ話をし、ちらちらこちらを見ている。
このまま私を犯人にするか、ちゃんと捜査をするか話し合っているのだろう。
犯人にされそうになったら…
①泣く
②暴れる
③・・・
そんなことを考えていると、男が近づいてきた。
「弓削警部補、君を阿部警視殺害の容疑で逮捕する」
(いきなりか~い!)
ユゲは心の中で突っ込み、とっさに③の選択肢を選んでしまった。
速攻ドアに向かって走ったのだ。
逃げなければ、このまま犯人に仕立て上げられてしまう。
ユゲは警察官であるがゆえに、最後に入って来た男が検事であり、検事というものは自分の書いた筋書きに沿って事件を解決に導いていくものだということを知っていた。
頼れるのはあの人たちしかいない。
ユゲは庁内の誰も、まだ自分の逮捕を知らないことをいいことに、誰にも邪魔されることなく廊下を走り、非常階段を降り、建物の外に出るとタクシーに飛び乗った。
タクシーの中で、会社用のスマホで会社にメールを送り、すぐに電源を切った。
ある程度のところでタクシーを降り、歩いた。
まずどこへ行くかは考えていた。
しばらく歩くと、またタクシーに乗った。
何度か繰り返し、最終的に1件の大きな屋敷に着いた。
この家のことは誰も知らない。
ここなら見つかることなく過ごせるだろう。
中に入り、2階に上がる。
いくつかあるドアの1つを開けると、そこはパソコン、モニター、そして無線機…それらが整然と置かれたユゲの秘密基地だった。
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