殺し屋たちの夜
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殺し屋たちの夜が幕を開ける。
コウとレイは、柏田が束ねるグループの、アジトのあるビルの前にある、一軒家の屋上にいた。
ここは大きな一軒家で、普通の家族が暮らしている。
こんな危ない輩が目の前のビルにいたら嫌だろう。
ということで、屋上から奴らのアジトを見張らせてもらうことにした。無断で。
ちょうどよかったから。
レイは張り込みのプロだ。
任せておいて大丈夫だろう。
レイには、柏田がいるかどうか、そして仲間の人数をカウントさせている。
その間コウは、というと、煙草をふかして休んでいる。
「レイ、どんな調子だ」
コウが確認する。
「柏田はいないっすね。
いまメンバーは18人、結構集まってるんで、柏田も来そうなもんですけどね」
レイが推測する。
「そうか、柏田さえくればな、すぐ終わるのに」
コウだけでなく、みんな早く終わらせたいに違いない。
現在午前0時。
一応、午前2時までは張り込むつもりだが、それまでに柏田が姿を見せなかったら、また明日、ということになる。
そしてそのまま午前2時を迎えた。
「レイ、引き上げよう。
みんなに連絡する」
「オッケーです」
コウは皆に連絡し、今日は解散と告げた。
翌日。
同じように張り込みはレイ、そしてシキミが担当する。
コウは待機場所で他のみんなと一緒に待っている。
午前1時、今日も来ないのか。
せめてどこにいるのかがわかればな。
コウがそう考えていると、
シキミから連絡が来た。
「柏田だ。メンバは他に31人」
「オッケー、すぐ行く」
コウの返事を待たずに、みんなは既に動き出していた。
バン2台に乗り込み、アジトへ向かう。
現地ではシキミが待ったいた。
レイはすでに引き上げたようだ。
「一気にいくぞ。容赦するな」
コウが一言言い、皆が頷く。
コウを先頭に、階段を3階まで上がる。
部屋の前に見張りが3人いた。
コウとシキミが撃つ。
部屋の中に入ると、マリファナの匂いが充満していた。
10人の殺し屋が一気に部屋へ流れ込む。
コウはリーダーの柏田を探す。
いない。
他の部屋にいるのか。
コウが考えている間にもメンバーは次々に倒れていく。
コウは片方の眼で、リクが撃つのを見た。
ナツがセリを狙っている奴を撃つのを見た。
イサが相手を殴り倒し、胸にナイフを刺すのを見た。
心配いらなそうだな。
コウはメンバーを1人を捕まえた。
「柏田はどこだ」
そいつが震える指で指した場所はトイレだった。
コウがシキミに叫ぶ。
「トイレだ! 俺は外に行く」
コウが素早く階段を降り、外に出る。
案の定、トイレの窓と思われるところから、男が1人降りようとしている。
コウは叫んだ。
「おーい、そこは3階だぞー、大丈夫かー」
柏田ははっと下を見下ろし、コウを見つける。
コウは撃った。
柏田が落下した。
上からシキミが下を覗いた。
コウは親指を下に向けて合図した。
コウが3階に戻ると、もう終わっていた。
「あっけないもんだな」
シキミが言い、コウが頷く。
「これが見せしめになればいいんだがな」
クロが言う。
その後は、皆無言でワゴンに乗り込み、会社へ戻って行った。
*****
会社に着くと、それぞれ解散した。
コウはタニに報告に行った。
「終わりました、と」
コウが言うと、
「お疲れ様でした」
タニが答える。
「怪我人は?」
「いないよ」
「報告書は明日でいいぞ」
タニが珍しく優しいことを言う。
コウはタニを見る。
「どうした? お前、死ぬのか?」
「なんでだよ!」
タニが突っ込み、そして真面目な顔で続けた。
「この前、お前が言っただろ
『命がけだ』って。
わかってたのにさ、わかってるつもりだったのに、お前たちがあんまり強いから忘れてたんだよな。
そんな大事なことをさ。
で、反省したわけよ」
「・・・・・」
コウがしばらく黙り込む。
そして…
爆笑した。
「お、お前、何しおらしいこと言ってんの」
ヒィヒィ笑いながらコウがタニを揶揄う。
タニはブスッとした顔をして机に向き直った。
「じゃあ明日な」
コウが手を振り出て行った。
外でまだ大笑いしているコウの声が聞こえてきた。
タニはコウが出て行ったドアを見て、大きなため息をついた。
コウが自室へ戻ると、すぐにノックの音がした。
リクだ。
「もう帰ったかと思った。ナツは?」
コウが聞くと、
「ナツは、『仕事の後はアイスだ』って言って、さっさと帰りました」
リクが笑いながら答える。
「ナツの子供っぽさには救われるな」
コウが言うと、リクも満面の笑みで頷く。
「コーヒー飲んでいく?」
コウが尋ねる。
「はい、淹れますね」
リクが言ったが、それを制し、コウが自分で淹れに行く。
「今更だけどさ、怖くはなかった?」
コウが聞く。
リクは、少し考えてから
「怖くなかったです。
アドレナリンのせいかわからないけど、頭がすっきり冴えていて、何をすべきか見えていて」
「そうか、それきっと日頃の訓練の成果だぞ」
コウが言う。
「ちゃんと体が覚えてるから、勝手に動く、体が動けば自信がつく、その自信があるから冷静に周りが見える。
ナツもちゃんとやれてた。
すごいな、お前ら」
リクは、コウにこんなに褒められて嬉しかったが、なぜか寂しい気もしていた。
まだまだくっついていたいのに、親離れさせられている気分というか…複雑な気持ちがしていた。
コウが2人のコーヒーを淹れて、リクの隣に座った。
「これこれ、一番落ち着く時間だよな」
コウが言う。
リクが少し不思議そうにコウの顔を見る。
「ん? どうした?」
コウが尋ねる。
「あ、いや…さっき褒められたとき、なんだかコウさんが離れていっちゃうような気がしたんで」
リクが素直に不安を口にする。
コウが笑う。
「前にも言ったろ、俺はここにいる。
リクがどんなに一人前になっても、強くなっても、いつもそばにいる。
リクが嫌じゃなければな」
「嫌になんてなるわけがない」
リクが強く言い切る。
「そっか、よかった。
この癒しの時間がなくなったら厳しいもんな」
コウが微笑んで、リクの髪に触れた。
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