実行犯の迷い
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コウが捕らえた男は、車に爆弾を仕掛けた奴に間違いなかった。
持っていたバッグから、爆弾の部品と思われるものやリモコンが出てきた。
これらは、工場の社長を狙ったものと同じ爆弾だと思われる。
身分を表すものはなく、どこの誰で、なぜ顧客を狙っていたのかもわからない。
何も話すつもりがないようで、どうすべきか集まって話し合っていた。
持っているスマホには何も入っていないが、解析を調査部に急がせ、仲間がいないか調べさせている。
どうせ誰かの依頼だろうが、依頼主がわからなければ終わらないのだ。
監禁している部屋へ社長が入って行く。
「なあ、お前さん、死を覚悟してるのかい?
たかが依頼で、死ぬつもりか?」
社長が続けて話しかける。
「うちの商売のこと、知ってるんだろ。
うちも依頼があればやることはやるけどさ、でもいい人間はやらない。
そこは最低限のモラルだ。
そして、会社の者たちは大事だ。決して見殺しにはしないし、命を懸けて助ける」
相手は黙っている。
社長はなおも続ける。
「みんなさ、それぞれの過去があるでしょ。
大抵の人が『自分が一番辛い目に遭ってきた』って思ってる。
でもそれ以上に辛い目に遭ってる人が必ずいる。
君もさ、いろいろ背負いこんで、今があるのかもしれないけどさ、自分のこと大事にしてもいいんじゃないのかな。
依頼主を守るのは当然だ。
しかし、実行する者を切り捨てるのは違うだろ」
「よく考えな」
社長はそう言うと、部屋を出て行った。
スマホの解析が終わった。
仲間が1人いるようだ。
消去してはいたが、コウが捕らえてから1度電話がかかってきた形跡があった。
番号もわかった。
番号から調べてみると、ある法人名義の番号だということがわかった。
その法人というのが、なんと先日工場の社長が襲われた会社のものだった。
「どういうことだ?」
皆が顔を見合わせる。
社長がため息をつき、「まさか…な…」と呟いた。
社長はユゲを連れて、また監禁部屋へ行き、男に尋ねた。
「ボスは弓岡さんかい?」
男の顔色は変わらなかった、ように見えた。
しかし警察官であるユゲの目はごまかせなかった。
「当たりだな」
ユゲが言う。
2人は部屋を出て、みんなに伝えた。
「主犯は工場の社長の弓岡さんのようだ。
動機はまだわからん。今から調べさせる」
「じゃ、こっちが気付いたことは伏せて、顧客を皆解放して見張っとくか」
コウが言う。
「そうだな、そうしてくれ。
タニ、配置を決めてくれるか」
社長が言い、タニがうなづく。
こうして最後の炙り出しが始まった。
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社長が顧客たちに、実行犯を捕まえたので、とりあえずの危険は去った。しかし念のため警護を続けさせる、と伝え、日常に戻ってもらった。
以前と同じような配置で警護を続ける。
ただし、弓岡の警護にはコウとリクがつき、3人をオキが尾行する。
実行犯の1人が捕まったことは知っているはずなので、他の仲間と接触するか、別の者に依頼するか、何かしらのアクションを起こすだろうと想定していた。
弓岡が外に出ている間に、ザビが事務所と自宅に盗聴器を仕掛けた。
弓岡がいつもの仕事を終えて、自宅へ戻って来た。
「ありがとう、ご苦労さんだったね」
弓岡はそう言うと、自宅へ入っていった。
弓岡の家族は夫人と成人した子が2人いるが、今は夫人との2人暮らしだ。
近くに車を停め、自宅での会話を盗聴する。
夫人と何気ない会話をし、弓岡は別の部屋へ入っていったらしい。
おそらく書斎だろう。
そこにも当然盗聴器は仕掛けてある。
電話をしている様子が伺えた。
「奴は警察に捕まったのか? 違う? じゃ誰に… 場所はわからないのか」
「しゃべらんだろうな お前がやれるのか」
「とにかくあと1人くらいはやってもらわんと疑われる」
「失敗したら…わかってるだろうな」
物騒な内容だ。
誰かにあと1人殺させようとしていることは間違いない。
『疑われる』とはどういうことだ。
コウたちは内容を社長に伝えた。
社長が監禁部屋へ行き、男に話をする。
「君の仲間は、あと1人殺そうとしている。
昨日、君は私を狙っているようで、結局私の会社の者を狙った。
私が推測するとだね、君は誰も殺すつもりがなかったんじゃないか。
あの車に爆弾を仕掛ければ、誰も死なせずに済むとわかっていたんだ。
しかしね、君の仲間はあと1人殺さなければ、本人が殺されるようだね。
いいのかい、君はそれで」
男が少し身じろいだ。
かすかに顔が歪んだ。
確かに、仲間を案じているのだろう。
「次に誰を狙うのか、君の仲間はどんな奴なのか、教えてくれないか。
だれも殺させたくないんだよ」
「殺し屋が言っても説得力がないがね」
社長が自虐的に微笑む。
男が初めて声を出した。
「女です。仲間は…」
「助けてくれますか? 逃がしてくれますか? そいつを」
「約束する」
社長が言う。
「黒髪でロング、でもキャップに隠していると思う。痩せていて身長は165センチくらい。
次に狙うのは…たぶん…見上専務。狙撃するはず」
社長がみんなに指示を出す。
「全力で見上専務を守れ。
そして、狙撃犯の女は殺すな。ここへ連れてこい」
翌日、あっという間に狙撃は止められ、女は会社へ連れてこられたのだった。
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