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襲撃犯

*****


皆がそれぞれの顧客の警護にあたってから、リクはコウと会えないことを寂しく感じていた。

ナツとはマンションに帰ってきた時に話せるので、孤独ではないが、リクはコウと会いたかった。


「早く終わらないかなー」

リクが呟くと、ナツが

「そうだなー、なんか1日警護って疲れるよな」

と同意する。


リクとナツの「早く終わってほしい」理由は違うのだけど。


そう言いながらマンションを出ようとしている時、2人に会社から連絡が入った。

会社に集合、とのこと。

この数日は顧客の会社や自宅へ直接出向いていたので、2人は顔を見合わせた。


会社に着くと、みんなが集まっていた。

コウもいる。

リクは久しぶりに会うコウの顔を見て、思わず頬が緩んだ。


コウもリクを見て、

「元気だったか、活躍したそうだな」

と言って、髪をくしゃくしゃっとしてくれた。


ナツがそれを見て、「犬か」と言い、

コウは「お前は猫だな」と言って顎を触ろうとしたが、手を跳ねられた。

コウはふっと笑って、「まだまだだな」と言い、もう一度リクの髪に触れていた。


その一連のやり取りを見て、ユゲが

「いいなー、私も子分がほしい」

と言った。


「誰が子分だ」

とナツが毒づいたが、


「やらんぞ」

コウが言うと、ナツの頬が緩んでいるのをユゲは見逃さなかった。


*****


会社に皆を集めたのは社長だった。

社長は自分が決めたことを発表する。


「おとり作戦を決行する」


コウがすぐに反応する。

「誰がおとりになるの?」


「俺だ」

社長が鼻息を荒くして言う。

「顧客をおとりにするわけにはいかん。おそらく顧客を見えないところに隠せば、俺を標的にするはずだ。

そこで、ユゲのドローンを使って俺を周囲を見張り、犯人をおびき出す。

このままでは八方塞がりだからな」


「だな」

コウも同意する。


他の者は「え…」という顔をしている。

「いいの?」

誰ともなく呟く。


「ま、絶対殺させねぇけどな」

コウが自信満々に言う。


コウがそう言うということは、きっと大丈夫なのだろう。


ということで、具体的な話し合いが始まった。


*****


顧客を隠すのを3日間と決めた。

その間に社長が精力的に動き回る。


社長の頭上に常にドローンがあるとバレるので、ドローンと人海作戦で行く。


午前9時、社長が自宅を出て車に乗り込む。

車には仕掛けがないか確認済みである。


自分で運転して、会社が保有する海に近い別荘へ向かう。

しばらくして、1台の車が後をつけ始めた。

その後ろをまたもう1台の車がつけていく。


間に何台か車を置いて、3台の車が同じ方向へ向かって行く。


別荘までは、およそ2時間。

社長は途中で道の駅に寄り、飲み物を購入し、タバコを吸う。

あとをつけている車が2台とも駐車場内に離れて停車する。


まだ何事も起こらない。

3台の車はまたそれぞれに出発する。


いよいよ別荘に着くころ、先につけていた車が別荘を通り過ぎていく。

後の車は、別荘の少し手前の路肩に駐車した。


別荘の中に車を乗り入れ、社長は鍵を開けて中へ入る。

続いて入る者はいない。


別荘の中。

先に別荘に潜んでいたコウが姿を現す。


「まだ大丈夫だったな」

コウが言う。


「ああ、1台つけて来てたんだがな…タニはわかったのかな」

社長がタニに連絡する。


「社長、社長のすぐ後をつけていた車のナンバーは偽造ですね。

中が見えないガラスになってるんで、つかめませんでした」

タニが申し訳なさそうに言う。


「今日、来るかな」

コウが呟く。


「どうだかな…」

社長も呟く。


もう1台の車にはシキミと、尾行の達人オキ、そしてユゲが乗っていた。

ユゲが、別荘の近くに停めた車からドローンを飛ばし、別荘の周囲を探る。


「今のところ不審な者は見えないね。

さっきの車が戻ってきたら要注意だね」

ユゲがそう言うと、2人も頷く。



その日、動きはなかった。

相手が警戒しているのか、または社長を狙うつもりがないのか、あと2日で動いてくれることを願うばかりだ。


翌日、社長は顧客の会社にわざと出向いて行った。

顧客は当然隠れているので、不在だということはわかっている。


応接室でしばらく時間をつぶし、正面玄関から出て来る。

当然、狙撃を警戒して、近くの建物からリク、ナツ、アガタの3人がそれぞれの場所で双眼鏡を覗き込んでいる。

狙撃手は今のところ、見当たらない。


社長が駐車場に停めた車を見張っていたシキミが、怪しい影を拾った。


シキミが何気なく近づく。

反対側からもオキが近づき、車を囲むように動く。


怪しい者はいなかった。

気のせいか、それともこちらに気づいて逃げたか。


シキミとオキが自分たちの車に戻ると、ユゲが固い顔をして指を唇に当て「静かに」というジェスチャーをする。

「この車の下に何か仕掛けられた」

ユゲが小声で言う。


シキミとオキは驚き、シキミはすぐに皆に一斉メールをする。

『俺たちの車に何か仕掛けられた。社長を守れ。こっちに来るな』


すぐにコウからメールが届いた。

『俺が見る。動くな』


3人は車に乗ったまま、微動だにせず待った。


コウが近づき、車の下を覗き込むのがわかる。

コウは『爆弾あり。おそらくリモコン式』


コウは双眼鏡を持っているリク、ナツ、アガタの3人に、リモコン操作をしそうな奴を探すようメールする。


すぐにアガタから電話がきた。

「いたぞ。社長が出てきたビルの3階の窓に怪しい奴がいる。

ずっとそっちを見て、手にスマホくらいのものを持ってる」


コウはすぐに車の3人に、そのビルから見えないように車から降りろとメールした。

3人はその通りにし、すぐに車から走って離れた。


コウがビルに向かって走りだすと同時に、後ろで爆発が起き、車が吹っ飛んだ。

コウはそのままビルに向かい、アガタに電話した。


「奴はどこだ」

「たった今ビル内に入った。

濃い色のスーツ、髪はぼさぼさ、黒縁のメガネをかけてる、身長は…たぶんそう高くない」


コウが正面から入っていく。

アガタたちは裏の方へ回る。


コウが非常階段のドアを開けると、すぐ目の前に奴がいた。

相手は驚いて、踵を変え階段を上がろうとしたが、遅かった。

コウが相手のスーツをひっ張り、下へ投げ飛ばした。


「お前が犯人か」

コウが聞く。


相手は何も言わない。

今は話さないだろうな…そう考えながら、コウはとりあえず相手を拘束し、ビルから出た。

社長の車が止まり、コウとアガタ、シキミが乗り込んだ。


「これからじっくり話を聞こうか」

コウが静かに言った。


*****


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