襲撃犯
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皆がそれぞれの顧客の警護にあたってから、リクはコウと会えないことを寂しく感じていた。
ナツとはマンションに帰ってきた時に話せるので、孤独ではないが、リクはコウと会いたかった。
「早く終わらないかなー」
リクが呟くと、ナツが
「そうだなー、なんか1日警護って疲れるよな」
と同意する。
リクとナツの「早く終わってほしい」理由は違うのだけど。
そう言いながらマンションを出ようとしている時、2人に会社から連絡が入った。
会社に集合、とのこと。
この数日は顧客の会社や自宅へ直接出向いていたので、2人は顔を見合わせた。
会社に着くと、みんなが集まっていた。
コウもいる。
リクは久しぶりに会うコウの顔を見て、思わず頬が緩んだ。
コウもリクを見て、
「元気だったか、活躍したそうだな」
と言って、髪をくしゃくしゃっとしてくれた。
ナツがそれを見て、「犬か」と言い、
コウは「お前は猫だな」と言って顎を触ろうとしたが、手を跳ねられた。
コウはふっと笑って、「まだまだだな」と言い、もう一度リクの髪に触れていた。
その一連のやり取りを見て、ユゲが
「いいなー、私も子分がほしい」
と言った。
「誰が子分だ」
とナツが毒づいたが、
「やらんぞ」
コウが言うと、ナツの頬が緩んでいるのをユゲは見逃さなかった。
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会社に皆を集めたのは社長だった。
社長は自分が決めたことを発表する。
「おとり作戦を決行する」
コウがすぐに反応する。
「誰がおとりになるの?」
「俺だ」
社長が鼻息を荒くして言う。
「顧客をおとりにするわけにはいかん。おそらく顧客を見えないところに隠せば、俺を標的にするはずだ。
そこで、ユゲのドローンを使って俺を周囲を見張り、犯人をおびき出す。
このままでは八方塞がりだからな」
「だな」
コウも同意する。
他の者は「え…」という顔をしている。
「いいの?」
誰ともなく呟く。
「ま、絶対殺させねぇけどな」
コウが自信満々に言う。
コウがそう言うということは、きっと大丈夫なのだろう。
ということで、具体的な話し合いが始まった。
*****
顧客を隠すのを3日間と決めた。
その間に社長が精力的に動き回る。
社長の頭上に常にドローンがあるとバレるので、ドローンと人海作戦で行く。
午前9時、社長が自宅を出て車に乗り込む。
車には仕掛けがないか確認済みである。
自分で運転して、会社が保有する海に近い別荘へ向かう。
しばらくして、1台の車が後をつけ始めた。
その後ろをまたもう1台の車がつけていく。
間に何台か車を置いて、3台の車が同じ方向へ向かって行く。
別荘までは、およそ2時間。
社長は途中で道の駅に寄り、飲み物を購入し、タバコを吸う。
あとをつけている車が2台とも駐車場内に離れて停車する。
まだ何事も起こらない。
3台の車はまたそれぞれに出発する。
いよいよ別荘に着くころ、先につけていた車が別荘を通り過ぎていく。
後の車は、別荘の少し手前の路肩に駐車した。
別荘の中に車を乗り入れ、社長は鍵を開けて中へ入る。
続いて入る者はいない。
別荘の中。
先に別荘に潜んでいたコウが姿を現す。
「まだ大丈夫だったな」
コウが言う。
「ああ、1台つけて来てたんだがな…タニはわかったのかな」
社長がタニに連絡する。
「社長、社長のすぐ後をつけていた車のナンバーは偽造ですね。
中が見えないガラスになってるんで、つかめませんでした」
タニが申し訳なさそうに言う。
「今日、来るかな」
コウが呟く。
「どうだかな…」
社長も呟く。
もう1台の車にはシキミと、尾行の達人オキ、そしてユゲが乗っていた。
ユゲが、別荘の近くに停めた車からドローンを飛ばし、別荘の周囲を探る。
「今のところ不審な者は見えないね。
さっきの車が戻ってきたら要注意だね」
ユゲがそう言うと、2人も頷く。
その日、動きはなかった。
相手が警戒しているのか、または社長を狙うつもりがないのか、あと2日で動いてくれることを願うばかりだ。
翌日、社長は顧客の会社にわざと出向いて行った。
顧客は当然隠れているので、不在だということはわかっている。
応接室でしばらく時間をつぶし、正面玄関から出て来る。
当然、狙撃を警戒して、近くの建物からリク、ナツ、アガタの3人がそれぞれの場所で双眼鏡を覗き込んでいる。
狙撃手は今のところ、見当たらない。
社長が駐車場に停めた車を見張っていたシキミが、怪しい影を拾った。
シキミが何気なく近づく。
反対側からもオキが近づき、車を囲むように動く。
怪しい者はいなかった。
気のせいか、それともこちらに気づいて逃げたか。
シキミとオキが自分たちの車に戻ると、ユゲが固い顔をして指を唇に当て「静かに」というジェスチャーをする。
「この車の下に何か仕掛けられた」
ユゲが小声で言う。
シキミとオキは驚き、シキミはすぐに皆に一斉メールをする。
『俺たちの車に何か仕掛けられた。社長を守れ。こっちに来るな』
すぐにコウからメールが届いた。
『俺が見る。動くな』
3人は車に乗ったまま、微動だにせず待った。
コウが近づき、車の下を覗き込むのがわかる。
コウは『爆弾あり。おそらくリモコン式』
コウは双眼鏡を持っているリク、ナツ、アガタの3人に、リモコン操作をしそうな奴を探すようメールする。
すぐにアガタから電話がきた。
「いたぞ。社長が出てきたビルの3階の窓に怪しい奴がいる。
ずっとそっちを見て、手にスマホくらいのものを持ってる」
コウはすぐに車の3人に、そのビルから見えないように車から降りろとメールした。
3人はその通りにし、すぐに車から走って離れた。
コウがビルに向かって走りだすと同時に、後ろで爆発が起き、車が吹っ飛んだ。
コウはそのままビルに向かい、アガタに電話した。
「奴はどこだ」
「たった今ビル内に入った。
濃い色のスーツ、髪はぼさぼさ、黒縁のメガネをかけてる、身長は…たぶんそう高くない」
コウが正面から入っていく。
アガタたちは裏の方へ回る。
コウが非常階段のドアを開けると、すぐ目の前に奴がいた。
相手は驚いて、踵を変え階段を上がろうとしたが、遅かった。
コウが相手のスーツをひっ張り、下へ投げ飛ばした。
「お前が犯人か」
コウが聞く。
相手は何も言わない。
今は話さないだろうな…そう考えながら、コウはとりあえず相手を拘束し、ビルから出た。
社長の車が止まり、コウとアガタ、シキミが乗り込んだ。
「これからじっくり話を聞こうか」
コウが静かに言った。
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