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殺人鬼の最後

*****


コウは煙草に火をつけた。

外に目をやると、雨がホテルの窓ガラスに激しく打ち付けている。


「どしゃぶりね」

女が着替えを済ませて、コウの横に立ち同じく煙草に火をつける。


「ああ、真っ暗だな。何も見えやしない」

コウがため息をつく。


「何か見たいものが?」

女が言う。


「夜景」

コウがふざけたように言うと、女も笑った。

「似合いすぎて面白くないわね」


女が煙草を灰皿で消し、「じゃあね」と言って部屋を出て行った。


今日の女はあっさりしていた。

いつもこんなだと楽なのにな。

コウがそう思いながら、椅子に座ってゆっくり煙草を味わった。


*****


コウはホテルを出てタクシーに乗る。

今日は会社から連絡がないので、直接自分のマンションへ戻ることにする。


コウは先日の依頼について考えた。

通り魔殺人の犯人…調査部が弁護士と鑑定医を揺さぶると、やはり不正をしていた。

どこかからの圧力らしいが、本人たちは知らないらしい。


何故みんなこうも圧力に弱いのか。

コウには理解できなかった。


調査部は弁護士と監察医の家族も調べたが、特に脅されている様子はないという。

何の弱みを握られていたのか、いや、そんなことはどうでもいい。

殺人鬼を3年で世に放つなどあってはならない。


明日、タニからゴーが出るだろう。

3人まとめて殺る方向だといいが。

コウは容赦ない思いを巡らせていた。


*****


翌日、タニから招集がかかった。

結局、沖田源治1人だけ殺ることになった。

「こいつの凶器はサバイバルナイフだった。

今も常に身につけてると考えた方がいいだろうな」

タニが言う。


「反撃を与えないうちに殺ればいいさ」

コウが言う。


「どこでやるかだな。住所不定だ。

尾行してると、昼間は遊技場に出入りしてるが、夜は昔の知り合いだの路地裏だの、その時々で適当に寝てる。

遊技場は一般人を巻き込む可能性があるからな。

路地裏で寝てる時を狙うのが確実だろう」

タニが言う。


「じゃあ、尾行しながら機会を伺うか」

コウがリクとナツに言い、2人1組で交代で尾行し、機会があれば実行するということに決まった。


1日目。

コウとナツが組んで尾行を始めた。


夕方か張りついていると、立ち飲みの店を3件はしごし、まだ20時なのにふらふらになっている。

繁華街を歩いていると、知り合いに会ったらしく、立ち話をしている。

知り合いというのもガラの悪い奴で、2人でまた違う店に入っていった。


もう店も閉まるだろうという時間、案の定店主から2人は追い出され、よたよたを歩いている。

20分ほど歩くと、その知り合いのアパートらしきところに着いた。

今日はそこに泊るようだ。


2階の部屋へ入って行って10分ほどしてから、ドア越しに気配を窺っていると、大きないびきが聞こえてきた。

今夜はもうこれで動きそうにない。


コウはナツに「おつかれ」と言って、タクシーに乗せた。


コウは歩きながら、これじゃ埒が明かないか、と考える。

非効率極まりないな。

金で釣って呼び出すか…。

そう考えながら、コウは1人でバーに向かった。


翌日、タニに作戦変更を告げた。

タニも同意し、任せると言った。


その夜24時。

人通りのない路地裏に沖田は立っていた。


キョロキョロと周りを見回している。

そこへコウがゆっくりと近づこうとした時、自転車に乗った警察官が2人取り掛かった。


警察官は路地裏に立っている沖田を見ると、自転車を止め、近づいていく。


コウは「やっかいだな…」と思いながらも陰に隠れて煙草を吸っていた。


警察官は沖田に職質をかけている。

沖田は、人と待ち合わせをしているだけですよ、と言って笑っている。


ざっと持ち物検査をしていたが、特に何も出てこないようで、警察官は去って行った。


少し待ってから、コウは沖田に近づいた。


沖田は「やっと来たか、遅いぞ」と言いながら、

ところどころ抜けた歯を見せ、ニヤニヤと笑って近づいて来る。


コウは「すまんな」と言い、

封筒を差し出す。


沖田はひったくるように封筒をコウからとると、すぐに中身を確かめる。

「な、なんだ、これ…どういうつもりだ」

ただの紙切れを封筒から出し、そこらへんにばらまく。


「まだわかんない?」

コウがつまらなそうに言う。



今日の昼間、パチンコをしている沖田の元へリクをやった。

「金の準備ができた」というメモを渡した。

リクはいかにも秘書っぽい恰好をしていたので、沖田はまんまと騙されたのだった。



沖田は「な、何者だよ」と言って、懐からナイフを取り出した。

何故警察官は、このナイフを見逃したのだろうか。


しかし、コウにとっては幸運だった。それを待っていたのだから。

沖田が持っている、沖田自身のナイフで殺りたかったのだ。


沖田はコウの胸めがけてナイフを突き出してきた。

そんなへっぴり腰の奴のナイフがコウに触れるはずがない。


コウはナイフを奪い取り、あっという間に沖田の胸にナイフを突き刺した。

沖田は「うぐっ」と呻き、コウの顔を見る。


コウは突き刺したナイフを90度回転させる。

沖田の目が見開かれ、口から血がこぼれ出す。


コウはナイフを刺したまま、沖田の体を押した。

沖田はそのまま背中から倒れ込み、ピクピクと痙攣していたが、すぐに動かなくなった。


コウは周囲を見回し、誰もいないことを確認すると、その場を後にした。


*****


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