殺人鬼の最後
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コウは煙草に火をつけた。
外に目をやると、雨がホテルの窓ガラスに激しく打ち付けている。
「どしゃぶりね」
女が着替えを済ませて、コウの横に立ち同じく煙草に火をつける。
「ああ、真っ暗だな。何も見えやしない」
コウがため息をつく。
「何か見たいものが?」
女が言う。
「夜景」
コウがふざけたように言うと、女も笑った。
「似合いすぎて面白くないわね」
女が煙草を灰皿で消し、「じゃあね」と言って部屋を出て行った。
今日の女はあっさりしていた。
いつもこんなだと楽なのにな。
コウがそう思いながら、椅子に座ってゆっくり煙草を味わった。
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コウはホテルを出てタクシーに乗る。
今日は会社から連絡がないので、直接自分のマンションへ戻ることにする。
コウは先日の依頼について考えた。
通り魔殺人の犯人…調査部が弁護士と鑑定医を揺さぶると、やはり不正をしていた。
どこかからの圧力らしいが、本人たちは知らないらしい。
何故みんなこうも圧力に弱いのか。
コウには理解できなかった。
調査部は弁護士と監察医の家族も調べたが、特に脅されている様子はないという。
何の弱みを握られていたのか、いや、そんなことはどうでもいい。
殺人鬼を3年で世に放つなどあってはならない。
明日、タニからゴーが出るだろう。
3人まとめて殺る方向だといいが。
コウは容赦ない思いを巡らせていた。
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翌日、タニから招集がかかった。
結局、沖田源治1人だけ殺ることになった。
「こいつの凶器はサバイバルナイフだった。
今も常に身につけてると考えた方がいいだろうな」
タニが言う。
「反撃を与えないうちに殺ればいいさ」
コウが言う。
「どこでやるかだな。住所不定だ。
尾行してると、昼間は遊技場に出入りしてるが、夜は昔の知り合いだの路地裏だの、その時々で適当に寝てる。
遊技場は一般人を巻き込む可能性があるからな。
路地裏で寝てる時を狙うのが確実だろう」
タニが言う。
「じゃあ、尾行しながら機会を伺うか」
コウがリクとナツに言い、2人1組で交代で尾行し、機会があれば実行するということに決まった。
1日目。
コウとナツが組んで尾行を始めた。
夕方か張りついていると、立ち飲みの店を3件はしごし、まだ20時なのにふらふらになっている。
繁華街を歩いていると、知り合いに会ったらしく、立ち話をしている。
知り合いというのもガラの悪い奴で、2人でまた違う店に入っていった。
もう店も閉まるだろうという時間、案の定店主から2人は追い出され、よたよたを歩いている。
20分ほど歩くと、その知り合いのアパートらしきところに着いた。
今日はそこに泊るようだ。
2階の部屋へ入って行って10分ほどしてから、ドア越しに気配を窺っていると、大きないびきが聞こえてきた。
今夜はもうこれで動きそうにない。
コウはナツに「おつかれ」と言って、タクシーに乗せた。
コウは歩きながら、これじゃ埒が明かないか、と考える。
非効率極まりないな。
金で釣って呼び出すか…。
そう考えながら、コウは1人でバーに向かった。
翌日、タニに作戦変更を告げた。
タニも同意し、任せると言った。
その夜24時。
人通りのない路地裏に沖田は立っていた。
キョロキョロと周りを見回している。
そこへコウがゆっくりと近づこうとした時、自転車に乗った警察官が2人取り掛かった。
警察官は路地裏に立っている沖田を見ると、自転車を止め、近づいていく。
コウは「やっかいだな…」と思いながらも陰に隠れて煙草を吸っていた。
警察官は沖田に職質をかけている。
沖田は、人と待ち合わせをしているだけですよ、と言って笑っている。
ざっと持ち物検査をしていたが、特に何も出てこないようで、警察官は去って行った。
少し待ってから、コウは沖田に近づいた。
沖田は「やっと来たか、遅いぞ」と言いながら、
ところどころ抜けた歯を見せ、ニヤニヤと笑って近づいて来る。
コウは「すまんな」と言い、
封筒を差し出す。
沖田はひったくるように封筒をコウからとると、すぐに中身を確かめる。
「な、なんだ、これ…どういうつもりだ」
ただの紙切れを封筒から出し、そこらへんにばらまく。
「まだわかんない?」
コウがつまらなそうに言う。
今日の昼間、パチンコをしている沖田の元へリクをやった。
「金の準備ができた」というメモを渡した。
リクはいかにも秘書っぽい恰好をしていたので、沖田はまんまと騙されたのだった。
沖田は「な、何者だよ」と言って、懐からナイフを取り出した。
何故警察官は、このナイフを見逃したのだろうか。
しかし、コウにとっては幸運だった。それを待っていたのだから。
沖田が持っている、沖田自身のナイフで殺りたかったのだ。
沖田はコウの胸めがけてナイフを突き出してきた。
そんなへっぴり腰の奴のナイフがコウに触れるはずがない。
コウはナイフを奪い取り、あっという間に沖田の胸にナイフを突き刺した。
沖田は「うぐっ」と呻き、コウの顔を見る。
コウは突き刺したナイフを90度回転させる。
沖田の目が見開かれ、口から血がこぼれ出す。
コウはナイフを刺したまま、沖田の体を押した。
沖田はそのまま背中から倒れ込み、ピクピクと痙攣していたが、すぐに動かなくなった。
コウは周囲を見回し、誰もいないことを確認すると、その場を後にした。
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