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殺し屋たち

*****


リクとナツは引っ越しをした。

ソリマチを解体したとはいえ、既に知られてしまった自宅に住み続けるわけにはいかない。


少し会社から離れるが、コウのマンションの近くに決まった。

引っ越しは全て会社が委託する専門の業者がやるので、2人は何もすることはない。

引っ越しが終わるまでは会社で待機ということになる。


依頼がないと、やることは訓練しかないので、2人はナイフの訓練を始めた。



*****



染谷が中国に渡って、数か月が経った。

今、染谷は上海のある町にいた。

コーディネーターとして人身売買の仲介をする、という名目で組織に潜り込み、市場を視察した。

酷いものだった。

日本人だけではなく、あらゆる国から連れてこられた多人種が集められていた。


コウが言ったように、キリがないということはわかっていた。

しかし、実際目の当たりにすると、とてつもなく膨大な力が必要だということを認めざるを得なかった。


染谷は結局、仲介の仕事を放棄し、身を隠した。

ただ、このまま何もしないで日本に帰ることはしたくなかった。

何か1つくらいは成し遂げたい。

1つの組織くらいは潰しておきたい。

そう考えていた。


染谷はこれまでの人脈を駆使して、武器や人を集めるべく動いていた。

売買の現場を襲うつもりだった。


しかし、どんなに秘密裏に動いていても、必ず情報は洩れる。

染谷は拠点を転々としながら、粛々と準備を進めていた。


*****


日本にいる呉が情報を掴んだのは、染谷が身を隠したという頃だった。


埠頭での人身売買の取引を潰したあと、染谷の行方はわからなくなっていた。

最近になって、染谷が中国に引き上げる船に同乗していったということがわかった。

やはり、染谷の目的が向こうでの市場、もしくは組織の殲滅を1人でやるつもりだということだったのだ。


染谷は向こうに人脈があるだろうから、確かに可能かもしれないが、危険なことに変わりはない。

しかし、あの時、あの埠頭でリクと話した時、こちらには火の粉が降りかからないようにする覚悟があったのだろう。


呉が社長に報告したのは、そういう呉の考えも含めたものだった。


「危険だな」

タニが言う。


「覚悟の上だろう」

コウが言う。


「日本に帰り着くことができるだろうか…」

社長は何かを考えるように、呟いた。


*****


そして新しい依頼が来た。


コウとリク、ナツはタニの説明を聞いていた。

「5年前、通り魔殺人事件があった。

殺されたのは3人、重軽傷者7人。

駅前の混雑した中での犯行で、その場にいた人たちがなんとか犯人を取り押さえて警察に引き渡したんで、まだこれくらいで済んだ、と思える数だ。

弁護士は心神喪失を訴え、無罪にはならなかったものの、心神耗弱ということで懲役3年という判決だった」


「覚えてるよ」

コウが言う。

「軽すぎるって世論が騒いでたよな」


「ああ」

「そいつ、名前は沖田源治っていうが、心神耗弱を装っていたらしい。

当然、弁護士も鑑定医もグルだったと考えられる」


「なんでわかったんだ」


「遺族の執念だ。

奴が出所してからずっと見張ってたらしい。

心神耗弱だから病院に通うっていう条件もあるのに、全く行ってないらしい。

毎日パチンコだの競馬だので遊び惚けてる」


「金は?」


「それが、おそらく弁護士を脅して搾り取ってるらしい。

ここははっきりしないんだがな」


「ろくでもねぇな」

コウが呆れて言う。


「まずは弁護士と鑑定医から揺さぶる。

それはこっちでやるから、それ次第で沖田を殺ってもらう。

弁護士と鑑定医も標的になりうるがな」


「わかった」

コウが答え、通話を切る。


「あのさ」

ナツがコウに尋ねる。

「こういう依頼ってどういうルートでくるんだ?

誰もがこの会社を知ってるわけじゃないだろ」


「ああ、信用できる顧客がいる。

その顧客を通してこっちにくる。

顧客はこの会社のことを依頼人には言わないから、会社のことは一般には知られない」

コウが説明する。


「なるほどな。じゃなきゃ、警察が黙ってないよな」


「そういうことだ」

コウが笑う。


「もう一ついいか?」

ナツが聞く。

「殺し屋って、どうやって集めてるんだ?」


コウが苦笑する。

「そうだな、主に社長のスカウトかな

社長はああだけど、結構見る目があってな。

タマキとイオリはアメリカでサバゲーにはまってる時に声かけられたらしい。

シキミは海外の傭兵だった時だな」


「コウさんは?」


「おれは…」

言いかけると、リクが

「ナツ…」といって止める仕草をした。


コウはふっと微笑んで、

「大丈夫だ。隠す必要はないよ。

俺はもともとフリーでやってたんだよ。結構需要があってな。

で、社長に声かけられて、フリーもいいけど、仲間がいるってのもいいよ、だって。

笑うよな。殺し屋の仲間って何だよって」


コウは笑い、続けた。

「でもさ、やっと最近わかってきた。

仲間がいるのがいい、っていうよりも、連携して成功すると面白ぇんだよな」


「ふーん」

ナツがあまりピンと来てないように頷く。


「俺、わかります」

リクが言う。

「なんか、1人でやるよりもゾクゾクするっていうか…」


「それそれ」

コウも同意する。


「えーわっかんねぇよ」

ナツが不貞腐れる。


「すぐにわかるさ」

コウがそう言って煙草に火をつけた。


*****


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